子宮外妊娠の新たなマーカー:カルポニン2 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

本論文は、卵管妊娠の新たなマーカーとしてカルポニン2増加を始めて報告したものです。

 

Fertil Steril 2021; 116: 1020(中国)doi: 10.1016/j.fertnstert.2021.05.101

Fertil Steril 2021; 116: 1028(米国)コメント doi: 10.1016/j.fertnstert.2021.08.006

要約:2018年1〜8月に卵管妊娠で卵管摘出手術を実施した84名、子宮内妊娠継続中の39名、流産に至った42名、妊娠していない方32名を対象に、血清中のカルポニン2濃度を測定し、後方視的に検討しました。また、絨毛サンプルは、それぞれ10、6、10、0検体採取し、mRNAを後方視的に検討しました。カルポニン2は、卵管妊娠の絨毛間質細胞に強く発現しており、卵管妊娠の絨毛のカルポニン2mRNAは、子宮内妊娠や流産の絨毛より有意に高い発現量を示しました。血清中のカルポニン濃度も同様に、子宮内妊娠や流産と比べ卵管妊娠で有意に高くなってました。ROC曲線から血清中のカルポニン2濃度測定により卵管妊娠を識別するAUCは0.931であり、hCGによるAUC 0.809よりも良好でした。

 

解説:本論文のグループは、子宮外妊娠の際にカルシウムイオン結合機能が変化することを見い出しました。カルポニン2はカルモジュリン結合蛋白の一つであルため、子宮外妊娠の際に変化するのではないかと推測し、本論文の研究が行われました。本論文は、卵管妊娠の新たなマーカーとしてカルポニン2濃度の増加を示しています。本論文は後方視的検討であるため両者の関連を示しているに過ぎません。現在、本論文のグループは多施設共同で前方視的検討を実施しているとのことです。

 

コメントでは、AUC>0.900は極めて有効な指標であることを示していることによる期待感を表しつつも、実際に臨床で使用する際に、カットオフをどこに設けるかによって診断精度が大きく変わることを指摘しています(偽陽性、偽陰性)。

 

子宮外妊娠については、下記の記事を参照してください。

2021.5.7「☆子宮外妊娠の胚は正常?異常?

2020.12.17「新鮮胚移植での卵巣刺激は子宮外妊娠のリスク増加

2020.3.9「子宮外妊娠の新たなリスク因子:子宮内膜厚

2019.8.17「初回子宮外妊娠の方の次回の妊娠予後

2019.1.7「☆子宮外妊娠のリスク因子

2017.8.4「子宮外妊娠のリスク

2016.7.28「子宮外妊娠のリスク因子
2015.12.9「子宮外妊娠の新たなリスク因子とは?」
2015.9.5「子宮外妊娠のリスクを低下させるには」
2015.4.17「凍結融解胚移植で子宮外妊娠率低下」
2014.12.3「凍結融解胚移植で子宮外妊娠が減少」
2013.1.17「凍結融解胚移植では子宮外妊娠のリスクが低下」