子宮外妊娠のリスク | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

本論文は、凍結融解胚移植による子宮外妊娠(異所性妊娠)のリスクについて検討したものです。

 

Fertil Steril 2017; 108: 108(シンガポール)

要約:2013〜2015年に実施した23,730件凍結融解胚移植、計10,736妊娠後方視的に検討し、子宮外妊娠のリスク因子を分析しました。子宮外妊娠は2.8%(304件)に認められ、day 3移植3.1%、day 5移植2.0%、day 6移植0.6%でした。種々の交絡因子で補正したところ、下記の因子が子宮外妊娠のリスク因子として有意なものとされました。

 

子宮外妊娠既往      1.62倍

卵管手術既往       1.34倍

卵管性不妊        2.58倍

day 6移植と比べday 5移植 2.88倍

day 6移植と比べday 3移植 5.31倍

 

解説:かつては、体外受精での子宮外妊娠率が一般妊娠(タイミングや人工授精)より高いとされていました。しかし、年齢その他の交絡因子で補正し、移植のステージや凍結の有無を考慮すると異なる結果になります。日本産科婦人科学会のデータによると、新鮮初期胚2.3%、凍結初期胚1.8%、新鮮胚盤胞1.6%、凍結胚盤胞0.8%と報告されています。つまり、子宮外妊娠率は、新鮮胚>凍結胚、初期胚>胚盤胞となります。本論文は、子宮外妊娠率は、day 3移植>day 5移植>day 6移植であることを示しており、着床の直前まで移植しないことが子宮外妊娠率低下に結びつくのではないかと考察しています。

 

なお、一般妊娠治療(タイミング、人工授精)での子宮外妊娠率は1.5%です。ちなみに、リプロダクションクリニックの子宮外妊娠率は0.3%、すなわち300人に1人と極めて低くなっています。