帝王切開瘢痕部と妊孕性に関する仮説 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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本論文は、帝王切開瘢痕部(欠損部)と妊孕性に関する仮説を示したオピニオンです。

 

Hum Reprod 2020; 35: 1484(オランダ)doi: 10.1093/humrep/deaa094

要約:帝王切開瘢痕部(欠損部)は、出血増加、月経困難症(生理痛増強)、慢性的下腹部痛、性交痛を引き起こすばかりでなく、不妊症の原因としても考慮されます。しかし、帝王切開瘢痕部(欠損部)を持つ全ての方にこれらの症状がある訳ではありません。今後の検討が必要な分野ですが、現在までに明らかにされているデータから、帝王切開瘢痕部(欠損部)と妊孕性に関する3つの仮説をご紹介します。

1 精子と着床に対する環境悪化(子宮内液体貯留による着床障害、欠損部からの炎症性物質流入と免疫学的変化、筋層断裂や筋層繊維化による子宮収縮の変化、欠損部に貯留した血液や粘液による精子侵入の妨害

2 物理的な問題(大きな欠損部と子宮後屈による移植の難易度増加

3 心理的な問題(欠損部の様々な症状による性交回数減少、欠損部の治療期間中の性交減少)

 

解説:世界的に帝王切開は増加傾向にあります(世界の統計によると、1990年に6.7%、2014年に19.1%)。帝王切開が多い上位3カ国は、ドミニカ共和国56.4%)、ブラジル55.6%)、中国47.0%)です。なお、WHO(世界保健機関)は、適正な帝王切開率は15%程度であるとしています。帝王切開欠損部(筋層2mm以上の欠損)は50〜60%の方に認められます。本論文は、帝王切開瘢痕部(欠損部)と妊孕性に関する仮説を示したオピニオンであり、3つの仮説を紹介しています。あくまでも仮説の段階ですので今後の検討が必要ですが、仮説1から、帝王切開瘢痕部(欠損部)のある方で第2子不妊の場合には、慢性子宮内膜炎(CD138細胞検査)と子宮収縮検査(エコー動画検査)の実施が推奨されます。

 

下記の記事を参照してください。

2018.8.14「子宮鏡手術による帝王切開瘢痕部修復

2017.2.24「腹腔鏡による帝王切開瘢痕欠損部修復

2016.8.24「帝王切開は次の胚移植の成績に影響を与えるか?

2016.4.28「帝王切開瘢痕部妊娠(CSP)の治療
2014.10.4「反復する帝王切開瘢痕部妊娠のリスク因子」
2013.6.23「☆帝王切開の傷の影響」