タイプ2帝王切開瘢痕部妊娠の治療方法による違い | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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本論文は、タイプ2帝王切開瘢痕部妊娠の治療方法による違いを3種類で検討した後方視的研究です。

 

Fertil Steril 2022; 118: 407(中国)doi: 10.1016/j.fertnstert.2022.04.029

要約:2009〜2018年タイプ2帝王切開瘢痕部妊娠の治療を行った160例を対象に、3種類の方法での治療成績を後方視的に解析しました。治療法は、①ラウロマクロゴール局所注入後吸引手術、②子宮動脈塞栓術(UAE)後吸引手術、③腹腔鏡+子宮鏡手術(TCR)の3種類です。成功率はそれぞれ、92.5%、87.1%、95.5%で、有意差を認めませんでした。費用と入院期間からに軍配が上がりました。また、妊娠期間が49日未満では①49日以上では③が良いことが明らかとなりました。

 

解説:帝王切開瘢痕部妊娠の治療に(現在のところ)一定の見解はなく、試行錯誤している段階です。ラウロマクロゴールは、血管腫や静脈瘤などの治療に用いられる硬化剤であり、帝王切開瘢痕部妊娠の治療に試験的に用いられています。本論文は、タイプ2帝王切開瘢痕部妊娠にラウロマクロゴールを含む3種類の治療を行った結果を解析した後方視的研究であり、ラウロマクロゴール局所注入後の吸引手術の有用性を示しています。今後の前方視的検討が必要ですが、大変興味深い研究です。

 

帝王切開瘢痕部妊娠については、下記の記事を参照してください。

2022.6.28「帝王切開瘢痕部子宮内膜症:ビデオ論文

2022.6.3「帝王切開瘢痕部妊娠の腹腔鏡手術:ビデオ論文

2022.3.30「帝王切開瘢痕部妊娠の治療:ビデオ論文

2021.12.28「帝王切開瘢痕部妊娠の治療法

2020.8.10「帝王切開瘢痕部と妊孕性に関する仮説

2019.5.4「帝王切開瘢痕部の膣式手術による修復

2019.4.5「帝王切開瘢痕部の単孔腹腔鏡による修復手術

2018.8.14「子宮鏡手術による帝王切開瘢痕部修復

2017.2.24「腹腔鏡による帝王切開瘢痕欠損部修復

2016.4.28「帝王切開瘢痕部妊娠(CSP)の治療
2014.10.4「反復する帝王切開瘢痕部妊娠のリスク因子」
2013.6.23「☆帝王切開の傷の影響」