帝王切開瘢痕部妊娠の腹腔鏡手術:ビデオ論文 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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帝王切開瘢痕部妊娠の腹腔鏡手術:ビデオ論文

 

Fertil Steril 2022; 117: 1099(ベルギー)doi: 10.1016/j.fertnstert.2022.02.007

要約:34歳、妊娠歴6回、出産歴4回(全て帝王切開)、流産歴1回の女性が腹痛を主訴に救急外来を受診しました。バイタルサインに問題なく、超音波により帝王切開瘢痕部に胎児心拍を伴う妊娠が成立を確認しました。残存筋層は1mm未満であり、緊急手術による妊娠部位の摘出と帝王切開瘢痕部の修復を同時に実施する方針としました。腹腔鏡手術では、パワーソースとして、CO2レーザー(30W、1.5mm円形ビーム)を用いました。まず、膀胱子宮窩を展開し、レーザーにより妊娠部位を一塊にして切除しました。筋層を8mm以上に形成すべく、モノフィラメント2層縫合(モノクリル0号)を実施しました。出血量200mL、輸血なし、術後24時間で退院しました。半年後の筋層は7.0〜9.3mmでした。避妊期間3ヶ月、術後4ヶ月目に子宮内妊娠が成立しましたが、妊娠8週で流産となりました(子宮内容除去術を実施)。

 

 

解説:帝王切開瘢痕部妊娠の処置には、手術あるいは薬物治療など様々な方法があります。本論文は、帝王切開瘢痕部妊娠の腹腔鏡手術をレーザーを用いて実施したものであり、妊娠の処置と同時に帝王切開瘢痕部の修復が可能で、大変有効な手段であるとしています。

 

帝王切開瘢痕部については、下記の記事を参照してください。

2022.3.30「帝王切開瘢痕部妊娠の治療:ビデオ論文

2021.12.28「帝王切開瘢痕部妊娠の治療法

2020.8.10「帝王切開瘢痕部と妊孕性に関する仮説

2019.5.4「帝王切開瘢痕部の膣式手術による修復

2019.4.5「帝王切開瘢痕部の単孔腹腔鏡による修復手術

2018.8.14「子宮鏡手術による帝王切開瘢痕部修復

2017.2.24「腹腔鏡による帝王切開瘢痕欠損部修復

2016.4.28「帝王切開瘢痕部妊娠(CSP)の治療
2014.10.4「反復する帝王切開瘢痕部妊娠のリスク因子」
2013.6.23「☆帝王切開の傷の影響」