帝王切開瘢痕部の単孔腹腔鏡による修復手術 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

本論文は、帝王切開瘢痕部の単孔腹腔鏡による修復手術を紹介したビデオ論文です。

 

Fertil Steril 2019; 111: 607(中国)doi: 10.1016/j.fertnstert.2018.11.039

Fertil Steril 2019; 111: 475(米国)コメント doi: 10.1016/j.fertnstert.2019.01.010

要約:帝王切開による出産を1回経験した36歳の女性は、生理後の不正出血と腹痛があり、10.8x7.1mmの帝王切開瘢痕部を認めました。子宮筋層は1.5mmまで薄くなっており手術が必要でしたが、美容的な問題を心配されていたため、臍からの単孔腹腔鏡による修復手術を提案しました。手術のポイントは電気メスではなく通常のハサミによる帝王切開瘢痕部の切除です。縫合は2-0の吸収糸による2層縫合を行いました。1層目は垂直に全層で連続縫合を行い、2層目は横にマットレス連続縫合を行いました。手術時間は50分、出血量は50mLで特記すべきことなく終了しました。生理後の不正出血と腹痛も消失し、術後の経過も良好です(https://youtu.be/ck1ROwQmULg)。

 

解説:つい最近、帝王切開瘢痕部の計測方法に関するガイドラインが発表されました(Ultrasound Obstetric Gynecol 2019; 53: 107, doi: 10.1002/uog.19049)。

1 垂直断面により残された筋層の厚さを計測し、横断面により欠損部の広さを計測する。

2 欠損部分は2.0mm以上の深さとする。

3 欠損部が複数に分かれている場合には、全ての広さを計測する。

4 膀胱から欠損部までの距離を計測する。

5 欠損部における子宮筋層の厚さを計測する。

 

そもそも欠損部が不妊の原因になるかは不明であり、修復方法には多数の方法が報告されていますが、どの方法が最も優れているかは明らかにされていません。子宮鏡では欠損部の子宮筋層を厚くすることはできませんが、腹腔鏡手術では高度なテクニックを要します。今後の見当が必要な領域です。

 

帝王切開瘢痕部については、下記の記事を参照してください。

2018.8.14「子宮鏡手術による帝王切開瘢痕部修復

2018.6.5「Q&A1850 帝王切開瘢痕部の取り扱い

2017.2.24「腹腔鏡による帝王切開瘢痕欠損部修復

2016.4.28「帝王切開瘢痕部妊娠(CSP)の治療
2014.10.4「反復する帝王切開瘢痕部妊娠のリスク因子」
2013.6.23「☆帝王切開の傷の影響」