帝王切開瘢痕部妊娠の局所塞栓療法:ビデオ論文 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

本論文は、帝王切開瘢痕部妊娠の局所塞栓療法についてのビデオ論文です。

 

Fertil Steril 2023; 119: 146(中国)doi: 10.1016/j.fertnstert.2022.10.009

要約:帝王切開瘢痕部妊娠に対しての局所塞栓療法についてご紹介します。

ステップ1:帝王切開瘢痕部妊娠へ入る血管をカラードップラと超音波造影剤により同定

ステップ2:経腟超音波ガイド下に穿刺(採卵針と同じ、21G、20cm)し、3カ所に分けて胎盤周囲に硬化剤を計8mL注入

ステップ3:超音波造影剤により、帝王切開瘢痕部妊娠へ入る血管が造影されなくなったことを確認

ステップ4:24時間後に子宮体部の内容物を吸引(吸引圧=0.04MPa)し、子宮頸管(胎嚢部分)を吸引(吸引圧=0.02MPa

7名の方(HCG 11,000〜31,000)に本処置を行い、吸引術中の出血量は10〜30mLで全例が完治しました。1名はその後妊娠し、帝王切開により無事出産しました。

 

 

解説:帝王切開瘢痕部妊娠は帝王切開瘢痕のある女性の1/531でみられ、異所性妊娠(子宮外妊娠)の4.2%を占めます。大出血により子宮摘出を余儀なくされ、妊孕性を無くす可能性のある疾患です。これまで様々な方法が提案され実施されてきましたが、ベストな方法は定まっていません。帝王切開瘢痕部妊娠の部位へ向かって血管網が構築され、胎盤に血液を供給します。本論文で示した局所塞栓療法は、胎盤周囲に硬化剤を注入し、この血管網の部分を無血化する方法です。非常に洗練された良い方法だと思います。ただし、本法の有効性を示すには前方視的検討が必要です。

 

帝王切開瘢痕部については、下記の記事を参照してください。

2022.12.29「子宮鏡併用による腹腔鏡下帝王切開瘢痕修復手術:ビデオ論文

2022.9.19「妊娠初期の帝王切開瘢痕部離開修復術:ビデオ論文

2022.9.5「帝王切開瘢痕部を修復すべきか:メタアナリシス

2022.8.23「タイプ2帝王切開瘢痕部妊娠の治療方法による違い

2022.6.28「帝王切開瘢痕部子宮内膜症:ビデオ論文

2022.6.3「帝王切開瘢痕部妊娠の腹腔鏡手術:ビデオ論文

2022.3.30「帝王切開瘢痕部妊娠の治療:ビデオ論文

2021.12.28「帝王切開瘢痕部妊娠の治療法

2020.8.10「帝王切開瘢痕部と妊孕性に関する仮説

2019.5.4「帝王切開瘢痕部の膣式手術による修復

2019.4.5「帝王切開瘢痕部の単孔腹腔鏡による修復手術

2018.8.14「子宮鏡手術による帝王切開瘢痕部修復

2017.2.24「腹腔鏡による帝王切開瘢痕欠損部修復

2016.4.28「帝王切開瘢痕部妊娠(CSP)の治療
2014.10.4「反復する帝王切開瘢痕部妊娠のリスク因子」
2013.6.23「☆帝王切開の傷の影響」