※自分の記憶に基づいて書いているため、
私と兄が通っていた小学校は、
1学年1クラスの、
とても小さな学校でした。
しかも1学年の子供の数は、
30人前後だったため、
全校生徒で数えても、
子供の数は200人もいませんでした。
そんな小さな小学校だったため、
だいたい生徒はお互いに、
顔も名前も知っている人ばかりで、
誰と誰が兄弟姉妹だというのも、
当然、皆んな知っている事項でした。
けれど、そんな中で。
恥ずかしいと感じていた兄は、
「絶対に学校で自分に話しかけるな」
と、
私に厳命していました。
なので私は、
全校生徒が私と兄が兄妹だと知っている中、
学校で会っても、
まるで赤の他人のように、
絶対にお互いに目を合わすことも、
口をきくこともありませんでした。
本当に幼い頃は、
いつも兄と2人で遊んでいて、
怖がりの兄を、
背にかばったりしていたのですが、
少しずつ成長していくとともに、
学校生活の比重が重くなっていくと、
集団生活に上手く適応出来ない私は、
兄にとって妹だとバレたくない、
邪魔な存在になってしまったようでした。
そんな兄と私は小学生になると、
よくケンカをするようになりました。
一番覚えている、
ケンカで兄に言われた言葉は、
タオルで私を叩き続ける兄に対し、
母が止めに入った時に、
兄が母に対して言った、
「こいつには体で覚えさせないと、
口で言っても分からないんだ」
という言葉でした。
それは、その当時、
我が家で飼っていた犬をしつけと言って、
父が逃げられないように、
犬の耳を握って拳で殴りつける時に、
よく言っていた台詞でした。
兄にタオルで叩かれた皮膚は、
ミミズ腫れを起こしていました。
体も痛かったのですが、
その時の私は、心の方が更に痛みました。
それは兄から、
自分が人間扱いされていないと感じたからでした。
自分を動物と同じように扱う兄に、
私は憎悪さえ抱きました。
もちろん私もそんな兄に対して、
心を開こう、
などと思うことはありませんでした。
でも、家族からも見放され、
誰にも理解されない学校生活を送るのは、
とても苦しいものでした。
私は、孤独でした。
ASD(自閉症スペクトラム障害)に該当する私は、
普通と言われる人々と、
モノの考え方や感じ方が違うからか、
それとも機能不全家族の中で育って、
自分の感情や考えを言葉にするのが苦手だからか、
人に自分の意見を理解してもらうまでには、
泣き続けたり暴れたりして、
何とか自分の言葉に、
じっくりと耳を傾けてもらわなければ、
なりませんでした。
私はASDゆえ、
元々はとても拘りの強い人間だったのですが、
ある日、そうやって自分の言葉を発し続け、
自分として生き続けることに、
疲れ果ててしまいました。
そんなことをしていても、
誤解ばかりされて、
孤独で辛くて苦しいだけだ、
と思いました。
そして私は、
誰にも理解されない自分の人生を、
生きることを諦めることにしたのでした。
私はその当時、
自分と同じ子供会に所属していて、
よく一緒に遊んでいた、
同じ歳のすーちゃんに、
こんなお願いをしました。
「私に普通を教えてください」
すると、すーちゃんからは、
こんな言葉が返ってきました。
「だったら私の真似をしなさい」
私はすーちゃんに言われた通り、
すーちゃんの真似をするようになりました。
すーちゃんを見ながら、
手や足を動かして、
すーちゃんと同じ言葉を、
発するようになりました。
すーちゃんの真似をする毎日は、
とても虚しくて、
私の心は少しずつ、
空っぽになっていったけれど、
周囲の大人たちは、そんな私をみて、
社会性が出てきたと喜びました。
そんな、
誰も私の本当の気持ちなど理解せず、
全く的外れな言葉を口にする大人を、
冷めた目で見つめながら、
私の心はどんどんと、
硬質化して動かなくなっていきました。
私は周囲の人間に溶け込むために、
おどけてバカな真似をして、
媚を売って暮らしていました。
顔は笑っていましたが、
心は虚ろでした。
私は自分以外の誰かになることでしか、
学校で生き延びる術を、
得ることが出来なかったのでした。
この時のことを私は、
「魂の自殺」
と自分の人生の中で位置付けています。
【追記】
私はこの本に中学生で出会って、
号泣してしまいました。
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この本に出てくる、
心が崩壊してしまった女の子の感性が、
あまりに自分に似ていると、
感じたからでした。
その女の子も、
学校の先生や周囲の同級生達に、
自分の感性が理解されず、
心が崩壊し、
道化を演じることになったのでした。
最後にこの女の子は、
自分を取り戻すのですが、
中学生の私はもう、
周囲の人間に合わせ過ぎていて、
自分がどんな人間だったのかさえ、
思い出すことが、
出来なくなってしまっていました。
魂の自殺を実行してから、
再び自分を取り戻すまで、
私は20年以上の歳月を、
費やすることになってしまったのでした。
マルトリートメントと私32.変わってきた父の態度に続きます。