脳血管障害による痙性麻痺(主に片麻痺)の運動療法についてのお話です運動療法は〈Therapeutic exercise〉を日本的に表現したもので、直訳すれば〈治療的運動〉となります。ちゃんとした治療法なんですね
この治療的運動は、原則的には以下の7つの段階を経て進めます。
①痛み・異常筋緊張・可動域障害の治療
まずは筋肉や関節の2次障害を取り除き、麻痺した手足が運動しやすい状態にします。これだけでも今まで十分に動かなかった手足が軽く動くようになります。
②筋収縮の認知・誘発
皮膚や関節の感覚と反射を刺激して、筋肉の収縮しやすい肢位で促通します。人や筋肉によって異なる「力を出しやすい姿勢」を探し出すことがポイントです。
③筋(張)力増強運動
いわゆる筋肥大を目的としたものではないので、1~3回程度の最大筋収縮力(筋張力)を発揮させればよいです。すると動作上でもその筋力が使えます。
④協調性改善運動
個別の筋の緊張と筋力のバランスが取れたら、より複雑な複合運動を反復して再教育します。例えば、歩行時の正しい脚の振り出しの分割運動を反復します。
⑤筋持久性増大運動
実際の動作は何十~何百という反復運動を必要とするため、同じ運動を低負荷で繰り返し行って、筋肉に持久性をつけます。ただしOverworkには注意です。
⑥運動のスピード化
いよいよ歩行などの動作につなげます。動作はコンマ何秒の素早い運動(収縮と弛緩)を必要としますので、ここで最高レベルの協調性が求められます。
上記の治療で得られた運動機能を、実際の歩行動作や日常生活動作で使用してゆきます。その結果、動作上の運動パターンがより正常に近いものとなります。
この②~⑥のことを神経筋再教育運動と言い、いわゆる運動麻痺の治療になります。脳血管障害が起きて、理学療法が始まった時点から、この治療段階を順番に進めてゆきます。原則的には、前の番号を飛び
越して次の要素は回復しません。
この治療的運動は、1回の理学療法の時間(40分~1時間)の中でも①から⑥まで一通り行います。また検査と治療は同時並行して行われます。そして毎回その治療効果を動作分析で評価します。
→『片麻痺患者さんの歩行を直す』
今は様々な神経障害の理学療法がありますが、私個人の考えでは、上記の治療原則はそれほど大きくは変わらないと思っていますので、基礎医学の原則を守った根拠と効果のある方法であれば、私はどの方法(~法や~療法)を選択してもよいと考えています。
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