日本語教師の経験のあるオバちゃんといっても本職はシナリオライターさんだから、流れるような文章を読みながらアメリカ南部の様子を楽しく学びつつ随所で笑ってしまう。やはり体験談は面白い。
著者が日本語を教えていたカレッジのあるコロンバスは、アトランタの南南西200km程の所にある。コロンバスは、アメリカン・ファミリー・インシュアランス(=アフラック)の本社がある所でもある。
1つ1つの拍に合わせて、手を打ちながら発音する。
「ジョ・オ・ジ・ア。何とシラブルは4つです」
生徒達はシーンとして、不思議なものでも見るように私の顔を見ている。日本語の神秘に触れた顔だ。計算通りの反応である。(p.42)
私は、そういうグループに組み込まれないよう極力警戒した。今まで何人もの日本語教師が、現地人ではなく、日本人同士のいざこざに巻き込まれ、神経を擦り減らして帰国したのを知っていたからである。(p.72-73)
「ヤンキーには2種類ある。いいヤンキーと悪いヤンキーだ。いいヤンキーは、南部へ来ない。悪いヤンキーは南部へやってくる。だが一番悪いのは、南部へ来て、そこに住み着くヤンキーだ」 (p.194)
学生の平均的レベルが高いのならば、生徒による教師の評価もある程度は信頼性を認められるであろう。しかし、レベルの低い学生に評価をさせて高得点がでたとするなら、それこそ中身のない授業をやっているという証拠である。しかも、知力に乏しい生徒ほどモラルも乏しいという一般的傾向があるから、授業態度まで真剣に指導しようとする教師は、報復的評価を得て最悪の結果を受け取ることになるだろう。
この本の中にも、エヴァリュエイションの前後で教師の態度が明らかに変わったと書かれている。
「カレッジは今学期でやめるの」
他の生徒達も、コーラの缶を片手に耳を澄ませている。
「俺達、先生をがっかりさせちゃったんじゃないかなぁ」
サワーズさんの言葉に私はドキッとした。気をつけていたつもりなのにバレていたのだ、私の焦りも失望も。(p.200)
滞在場所と学期間中の食事の提供があるだけで無給の持ち出しボランティアのような待遇であってすら現地に赴くという意気込み持っていた著者であったのに、 “向上する意志のない学生” を前にして、愛着は生じたにしても、意気込みは覿面に萎むのである。よくわかる。
そんな著者が、帰国を前にして5歳の幼児たちに45分間だけ教える機会があった・・・。
45分は瞬く間に過ぎ、自分で折ったカブトを頭に載せた子供達とワイワイいいながら別れた後、つい思ってしまった。どうせなら、あの子達を1年間教えてみたかった。(p.208)
それにしても、55歳で渡米して無給で日本語指導に当たったという事実は、掛値なく称賛に値する。素直にスゴイと思う。しかも、こんなに面白い書籍を残してくれた著者に “ご苦労様でした。そして、ありがとうございました。” と言いたい。
《参照》 『女性たちよ、アメリカへ行ってどうするの?』 樹田翠 PHP研究所
《参照》 『54日間のアメリカ人』 八神純子 YAMAHA
《参照》 『なんでだろうアメリカ』 みなみななみ 休息的時間
《参照》 『異文化に心を溶かせて』 穴口恵子 (悠飛社)
《参照》 『ほんのちょっとした違いなんですが』 池田和子 (タイムス) 《後編》
《参照》 『ニューイングランド物語』 加藤恭子 (NHK)
《参照》 『ザッツ・ア・グッド・クエッション!』 譚璐美 日本経済新聞社
《参照》 『ニューヨークの台湾人』 田中道代 芙蓉書房出版
《参照》 『ハーバード大学 春夏秋冬』 黒田かをり TOKYO FM 出版
《参照》 『お母さんの留学』 黒沢宏子 新風舎
《参照》 『マイ・チャレンジ』 朝倉千筆 中央公論社
《参照》 『スタンフォードの朝』 アグネス・チャン 日本文芸社
《参照》 『夢を翼にのせて』 岡村嘉子 双葉社
《参照》 『地球の回る音を聞きながら】 原水音 光文社
《参照》 『ウーマンアローン』 廣川まさき
《参照》 『私の名前はナルヴァルック』 廣川まさき (集英社)
《参照》 『ブレイヴ・ガール』 リズ山崎 (メディアファクトリー)
《参照》 『楽しいハワイ留学』 ココナッツ娘 (アップフロントブックス)
《参照》 『カリフォルニアの空から』 西田ひかる (産経新聞社)
《参照》 『アロハ・スピリット』 カミムラマリコ (ナチュラルスピリット)