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 表紙に「自分探しの旅」とあるけれど、なかなか元気で勇敢な少女のアメリカ生活が、魂の世界へ向かって行くまでの興味深い体験記である。これって、シャーリー・マクレーンではなくリズ山崎版の 『オウト・オン・ア・リム』 である。この読書記録は毎度のことながら面白かったところを書き出しているだけだけれど、モヤモヤした人生から抜け出したい女の子たちは、買って読んでみるといいだろう。楽しく読める。2008年9月初版。

 

【ぱな子さん】
 やる気が失せてしまう自分を責め、「意志が弱くて」などと落ち込む人も多いようですが、私はそうは思いません。
「続かないってことは、ほんとうにしたいこと、ほんとうにすべきことじゃないってことなのよ、きっと」
 ほんとに欲していれば必ず達成できるはずだから、と考えるのです。
 なぜかというと、私は正真正銘の飽き症だからです。
 子どもの頃、母からは「ぱな子さん」と命名されたくらいで、なんでもかんでも、飛びつくくせに、「やりっぱなし」の「出しっぱなし」。やっちゃあ放り投げ、やっちゃあ放り投げの繰り返しでした。
 おまけに私は、計画性もありません。今でもほとんどないのです。(p.19-20)
 チャンちゃんにそっくり。
 著者は、36歳で大学に入学し、卒業後、日本でセラピストなどをして大活躍している方らしい。「そんな人でも・・・?」って思うけれど、夢を翼に乗せた下記のブレイブ・ガール(勇敢な少女)も同様のことを書いている。
   《参照》   『夢を翼にのせて』 岡村嘉子  双葉社
             【 “子供のころから何をやっても長続きしないタイプだった” という著者 】

 

 

【フライドチキン】
 英語学校に通っていた頃の話。
 私が歌い終わるやいなや、先生以下クラス一同、お腹を抱えて大笑いするではありませんか。先生は、笑いすぎた涙を拭きながら私にいいました。
「リズ~! 鳥もやがて飛ぶ、よ」
 私は、LとRを間違えて、fly(飛ぶ)をfry(揚げる)と歌っちゃったのでありました。
「リズ、それじゃあ、鳥もやがてから揚げに、だよ~!」
 気づいた私も大笑い。教室中が爆笑の渦でした。
 ・・・(中略)・・・ どうりで、みんなじーっと神妙な様子だったはずです。私の歌はそんなにいいのかなぁ、なんて気持ちよく歌っていたけれど、あははは、フライドチキンか! そりゃ笑うわ、と。 (p.70-71)
 こんなんことで落ち込まないのが、著者の冴えた人間性なんだろう。
 幼稚園の子供のように、すぐに「傷ついた」って落ち込むだけじゃあ、何もできない。
 リズはきっと、イングランド製の昔の戦闘機のことを歌ってたのかもしれない。
   《参照》   『佐貫亦男のひとりごと』 佐貫亦男 グリーンアロウ出版社
            【 戦闘機のネーミング 】

 

 

【クビになったトラ】
 トラとはピアノの弾き語りのピンチヒッターの仕事のこと。
 「あんたなんか、ホステスやってコーラでも飲んでりゃいいのよ!」
 ・・・(中略)・・・ 
 ラッキーに舞い込んできた三週間のトラは、この場でジ・エンド。
 クビになった私はお客でにぎわう店を出て、とぼとぼとオンボロ愛車へと歩き出したのでありました。でもどうしよう。私はその時、次のように思ったのです。
「ロサンゼルス中にクラブを片っぱしからクビになってやれ。そうすれば一巡するころにはどうにかなってるっしょ!」 
 プラス思考も “過ぎると無反省” と言いますが・・・我ながらあきれたものです。(p.83)
 「反省」とは、「少な目に反える」という意味。反省し過ぎてド壺に嵌っちゃうより無反省のほうがややマシ。
 著者は、失恋に落ち込む女の子に対して、こんなふうにカウンセリングするんじゃないだろうか。
 「振られた?」「・・・」「たった一回で?」「・・・」「そんな奴は、アナタに相応しくなかったってことですよ。成就するまで何回でもトライしなさい」
 このアドバスは、正しいと思う。
 失敗とは、成功するまで続けなかった場合を意味するのだから。
     《参照》   『上司の極意』 ジェフリー・J・フォックス  光文社
               【幸運とは・・・】

 この本の中には、著者による、六条御息所ぶりの魅入られた恋愛体験が正直に書かれているけれど、これもなかなか読みごたえのある内容である。

 

 

【ジェイ姉さんのアドバイス】
 ジェイ姉さんとあるけれど、ジェイはゲイだからちゃんとした男性。そのことは直接関係ないけど・・・。
 心理学や東洋的な精神思想についてもとても詳しく、私に惜しみなく色々なことを教えてくれました。 ・・・(中略)・・・ 。
「けどね、それはリズの criticize(批判)の部分が一番の問題なわけよ」
「リズは、そう捉えるかもしれないけれど、別の人が同じようにとらえるとは限らないよね。人の捉え方をコントロールしようとしているところが問題ってことになるわけ」
「リズは、人のことを変えようとしているぶんだけ苦しんでいる、ってことなんだよ」
「リズは、自分の嫌なところを相手に投影させているにすぎない」
「リズのなかにその要素があるから、リズはネガティブな反応をしているだけで、人から見るとリズが嫌っているその人とリズは似ていたりするものなんだよ」  (p.149-150)
 誰が読んでも、思い当たる部分が多い内容だからこそ、あえて著者は並べて書いておいたんだろう。
 著者が住んでいたアメリカ西海岸は、団塊の世代のオジサンたちが若かったころ、カウンター・カルチャーの拠点となった所だから、精神世界に関する知見を備えた人々は、今でも少なからずいることだろう。
 そんなジェイ姉さんのアドバイスによって、著者の生き方の方向が、魂にとって芳しい方向へと変わっていった。その後、自らいろんなセラピーに参加した経験が記述されている。これらの体験談を読むことで、読者はいくつかの気づきないし予感に出会うことだろう。

 

 

【エサレン:感じることを恐れない・・・魂の再生】
 現在のエサレン・マッサージはそうではないようですが、当時は、施術者受術者ともに裸で、言葉は禁止でした、感じるままをすべて感じとるようにと告げられマッサージがはじまると、「気」が流れるのを感じた私は泣き出してしまいました。スッと答えが出ました。いつか、みどりちゃんから言われた「心の奥で閉ざしている何か」。それは「感じることへの恐れだったのだ!」と。
 感じることを恐れていては、自分も他者も、受け入れようがありません。
 すごいところへ来たもんだ、と客観視する自分がいる一方、目覚めたばかりの乳飲み子が無心にミルクを飲むような勢いで、私の心は洗われていきました。
「魂が喜んでいるのがわかる」そんな新鮮で、初めての体験でした。

 エサレン。それは、私の魂の楽園。
 私が生まれ変わった土地。地上での私の魂のふるさととなりました。(p.200-201)

 

 

【一筋の涙】
 私は尋ねました。
「また来てくださいますか」
 光は答えました。
「私は、いつもあなたとともにあります」
 私の身体は自然と動かされるかのように、手を合わせていました。
 そして、その光の存在に対して、全身全霊の思いを込めて、そして、なぜかはわかりませんが、頭の中でこう伝えました。
「私がこうしてあなたと出会うことができるようになるまで、ずいぶん長い時間を要してしまいました。そのことを、どうかお許しください」
 私の両目から、涙が一筋ずつ頬を伝いました。 (p.233)

 

 

 

 蛇足ながら、最後に、女性著者による外国体験記のリストをリンクしておこう。
     《参照》   『アメリカ風だより』 千野境子 (国土社) 《後編》
                【外国体験の勧め】

 

 

 

<了>