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 かつてのアイドルだったアグネス・チャン。2人の赤ちゃんを育てながら、スタンフォードの教育学博士の学位を取得するという離れ業をやってのけた。その壮絶な学業風景は、終盤付近に書かれている。
 序盤から中盤にかけては、明るい西海岸のキャンパス風景と、世界中から集まっている学生たちの交流の中に見られる異文化風景が描かれているので、楽しく読める。そして、家族のことも・・・

 

 

【見るしかない夢があった】
 夢というものは、目を閉じなければ見れないものだと思っていた。が、最高の夢は、目が醒めている時に見るものだということがわかった。
 ・・・(中略)・・・。
 たくさんの夢はいらないけれど、見るべき夢、見るしかない夢は逃がしたくない。 (まえがき)
 映画『ポネット』 の左腕状態のチャンちゃん。この夏は、蟄居せざるを得ない定めなので、せめて海外で輝いていた人々の体験談を読んで、その世界を旅しようと思う。そこで、アグネスの “見るしかない夢” の世界に便乗する。

 

 

【なぜ、こんなにいつも元気なの?】
 アメリカ人は、なぜこんなにいつも元気なんだろう・・・・・・。いつ会ってもみんな On the top of their shape (一番良い状態)。まったく疲れを見せない。
 「疲れているときはどうするの?」 と友達に聞くと、「そういう時は、人前に出ない」 という。しかし、学校がある日には、調子が悪くても行かなければならないはず。「そういう時は、元気なふりをするの!」 (p.115)
 Stay alive. これが、アメリカ的生き方。
 この書籍には、この Stay alive. の雰囲気が満ちている。
 「死んでなんかいられない! 活き活きと生きてなきゃ!」 って感じ。

 

 

【この読書量】
 この学期に私が読まなければならないと指定された本は全部で19冊。そのほかに専門書、さらにレポートを1本書くために平均5冊の本を読むとして、全部で5つのレポートがあるから合計25冊。つまり、約2ヵ月半の間に最低でも44冊の本を読まなければならないのだ。小説ならまだしも、教科書だと思うと気が遠くなる。(p.121)
 アメリカの専門書って、おそらく平均350ページくらいある。英語の読解力が前提としてあってこその世界だから、日本の大学生感覚でいては到底おっつかない。しかも、アメリカは学期と学期の間の休みが長い分、短い学期間に勉強が目いっぱい集中する。人並みに休みを浮かれて楽しんでいた日本からの留学生は、学期スタート2週間目の時点で、早くも結果を自覚する連中が少なくないらしい。

 

 

【頑張り屋のアグネス・ママ】
 ついに命がけで書いた250ページの論文が完成した。読み直す気にもならないほど長い。頑張りすぎて、この半年間で3回も声を失ってしまった。アーサーに 「ママ、博士にならなくてもいいよ。眠りなさい」 といわれた日もある。アレックスが夜中に泣いてきて、コンピュータの下に敷いてある布団で寝かせたこともある。
 「この論文はみんなの汗と涙の結晶だ!」
 私はプリントアウトして、まだ熱いままの論文を握りしめ、家族や自分を支えてくれた人たちに感謝した。
 ・・・(中略)・・・。
 「合格です」という委員長の声を聞いたとたん、全身の力がすべて抜けたようになって涙がドッと溢れ出してしまった。・・・(中略)・・・。それ以上何を言われたのかよく覚えていない。とにかく、その日も次の日も、ひとりになると私は泣いてばかりいた。 (p.193-196)
 凄い頑張り屋さん! 立派! 

 

 

 ほぼ同時代のアイドル・スターつながりで、下記をリンクしておきます。
   《参照》  『カリフォルニアの空から』 西田ひかる (産経新聞社)


<了>