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 歯切れのいいムダのない文章で記述されている。本は長ければいいってもんじゃないと、いつも思っているけれど、この本はコンパクトで密度の濃い本である。
 わずかに15人ほどの事例ではあるけれど、仕事、学歴、文化、階級、人種、結婚などのテーマが絡み合って、日米の違いが明確に記述されている。


【甲高い声の影響】
 みどりさんの最初のトレーニングは、甲高い声の矯正だった。一般に東洋人の女性は声のトーンが高く、話しかたが子供っぽく感じられるので、たとえ重要な発言をしても会議で真剣に取り上げてもらえないなどの弊害がある、とセラピストは注意した。   (p.66)
 表情より声の印象のほうが重要と思える場面は、日本国内で働いていても、しばしば遭遇している。

 

 

【西洋人の男どもはエゴイスト】
 アメリカ人も含めて、西洋人の男どもは実にエゴイストだ。心優しい日本女性はその餌食になりやすいので気をつけていただきたい。  (p.84)
 ニューヨーク在住の著者のこの言葉を読んでも、幻想に生きたい日本人女性はいくらでもいそうな気がする。

 

 

【階級意識と宗教意識】
 アメリカでも結婚に関しては保守的なのだ。結婚を考える時、自分と相手の経済力と教養のレベルをよく比較検討する必要がある、『ニューヨーク・タイムズ』 日曜版の結婚欄を注意して見ていただきたい。毎週、結婚式をあげたカップルのプロフィールが出ている。二人がどこの大学を卒業して、どんな仕事をして、どこに住んでいるか、ご両親はどんな人たちかまで細かく書いてある。たいていの場合、家柄・大学の格がつり合っている。
 ・・・(中略)・・・。日本人には階級意識と宗教意識が希薄なので、純粋にも 「愛があれば・・・」 と結婚に踏み切ってから、「こんなはずでは・・・」 となってしまうことも多いのである。  (p.91)
     《参照》   『フェノロサと魔女の町』 久我なつみ (河出書房新社)
 
 
【黒人との結婚】
 米国では残念ながら、いまだに人種差別問題は解決されていない。米軍基地にいる黒人は、本国にいるよりも日本にいるほうが差別がなくラクだと感じているくらいだ。日本人は、黒人が教育・経済面でどんなに苦戦を強いられているか、あまり理解していない。黒人と結婚してアメリカに住むということは、彼の社会層に自分も属し、その社会層の抱える問題を自分の生活領域に持ち込むことになる。つまり、差別や社会的抑圧との戦いに巻き込まれるということだ。  (p.104-105)
            【自由な国の束縛】
 

【離婚率70%】
 今、アメリカでの離婚率は70%に達したといわれている。これでは結婚の意味があまりない。だからこそ、結婚する前に離婚の準備をするのが社会の常識となっている。  (p.118)
 

【自分に投資させ、成功をものにするゲーム】
 ニューヨークでは、・・・(中略)・・・若くて美しい女が山のようにいる。
 こうした女の子たちは、あまりお金がなくてお腹がすいているので、カネのある旦那やボーイ・フレンドを一生懸命探す。しかし自分の野望もがっちりあるので、ただセックスしてカネをもらおうなんて幼稚なやり方はしない。男に取り入り、いかに自分に投資させ、成功をものにするか、このゲームに全存在を賭けて臨むのだ。
 ・・・(中略)・・・。
 エンジョコウサイ 
(←プログ禁止用語なので漢字で書けない) している女の子たちも見習ってほしい。ルーズ・ソックスをはいて、ただ若さを売っているだけで、後はしわだらけのなんの魅力もないオバタリアンになってしまうのでは、人生もったいないと思いませんか。 (p.141)
 
 
【アメリカの実状を刺激として自分を鍛える】
 グローバル化の進んでしまっている現在、日本もある程度アメリカ化してしまっている。そんな中で、
 夫がリストラにあって失業すれば、夫の給料を当然の権利として妻が受け取ることもできなくなるだろう。個人が自力で生きていかなければならないのが「大競争時代」だ。
 日本女性は、伝統的な家庭に入ることでこれまで様々な社会の荒波から守られてきた。その防波堤も取り払われて、グローバルな規模での生き残り競争にさらされるだろう。  (p.157)
 この本を読めば、最初からアメリカに行く気などない人でも、ただ何となく目的もなく生きていられる日本人であることに違和感ないし危機感を持てるのではないだろうか。その意味で、この本は、男女を問わず読者にカンフル剤を投与するような性格を持っている。ポヨヨ~ンと生きていたい私のような人間でも “ちょっとヤバイかも” 程度の自覚が生ずるのである。
 もしも、この本を読んで、“日本人で良かった” と思うだけなら、著者の意図するところではなさそうだけど、それもアリである。
 
<了>