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 1990年から1年間、ハーバード大学教育大学院におられた著者の手による書籍。

 

 

【ハーバード大学】
 ハーバード大学は、1636年に創立されたアメリカ最古の大学である。自分の土地や蔵書など多大な寄付をした牧師のジョン・ハーバードの名前からつけられた。 (p.31)
 大学ホールの前にはジョン・ハーバードの像が建っており、ハーバードの刊行物や絵葉書にも使われている。なかなかハンサムなのであるが、実は、この像の製作者はハーバードの顔を知らなかったので、1882年の卒業生の中で一番ハンサムだった学生をモデルにして作成した (p.19) のだという。

 

 

【アイビーリーグ】
 フットボールの対抗試合を行うようになったアメリカ北東部の8つの大学を総称して言う。
 ハーバード、エール、ペンシルベニア、プリンストン、コロンビア、ブラウン、ダートマス、コーネルであり、比較的新しいコーネル以外は独立戦争以前からの歴史を持っている。どの大学も名門校である。 (p.26)
 小学生の頃、アイビールックという言葉を聞いた覚えがあるけれど、当時は、それがアイビー(ツタ)で校舎が覆われるほど伝統と歴史のあるアメリカの大学に通う学生たちのファッションであるなどということを聞いても、「だからどうだってんだ」程度の印象だった。
 ツタの絡まる校舎は、英国のケンブリッジにもオックスフォードにも当然のことながらいくつもある。こういった校舎の風景は、その場に思わず立ち尽くしてしまいそうなほどに伝統の重みを感じさせるに十分なものである。さらに教室の中に入って階段状のデッキに並んでいるツヤツヤピカピカの木製の机などを目にしたら、どんな勉強嫌いの人だって、きっと「ここで学んでみたい」 と思ってしまうのではないだろうか。この本を手に取って読もうとした私の動機は、そんなものだった。
 しかし、この本が描いているのは、イングランドのケンブリッジではなく、その卒業生たちが指導者となってやってきたニューイングランドのケンブリッジである。ましてや著者は日本人なのだから、ケンブリッジやラドクリフといった名称まで引き継いでいるとはいえ、それほど伝統や雰囲気を誇らしげに記述する文章はない。
 (ケンブリッジは地名であり、ハーバードはそこにある大学である。ついでにボストンとケンブリッジはチャールズ川を挟んで両岸に位置している)

 

 

【学生が住まうハウス】
 ハーバードには12のハウス(寮のひとつ)があり、それぞれにハーバード大学の学長の名前がつけられているのだという。
 雅子様がハーバード在学中にお住まいになったローウェルハウスは、何故かエリート学生の集まるハウスとして知られている。 (p.20)
 雅子様はエリートだったのだから、当然そのはず。
 ところで雅子様がご自身の手で、学生時代の体験と印象からハーバード・ストーリーのような著書を出してくれたら、絶対に読む。東宮妃も妃殿下のように、何でも良いから書いて出版してくれたらいいのに・・・・。

 

 

【ハーバード大学の資金力】
 (学生の)7割近くはハーバードから何らかの学費援助を受けている。こうした民主化が可能になった理由の一つとして、ハーバード大学の資金力が挙げられる。寄付金を含んだ資金が47億ドル(約6400億円)という世界で最も裕福な大学なのである。 (p.33)
 この資金力(寄付金)の可能にしているのは、この州の税制にあることは、『ボストンで暮らして』 久野揚子(大和書房) の中に書いておいた。
 ハーバードの真近にあるMIT(マサチューセッツ工科大学)は、世界屈指の知性である大前研一さんが学んだところで、大前さんは母校のMITに莫大な寄付金を提供してきた人でもある。

 

 

【冬は寒~~~いケンブリッジ】
 とにかくここケンブリッジでは、冬のうちはファッションなど二の次どころか百の次なのである。 (p.62)
 神奈川県湘南出身の女性らしい記述である。かてて加えてもともと冷え性なのかな? まあ、こんな色っぽくない文章を読んでいながら、エリック・シーガルの 『ある愛の詩』 の悲しい場面を思い出していた。寂しさと悲しさが凍てつくように冷え切った石畳の上で響いていたハーバードが舞台の名作である。

 

 

【平均睡眠時間は3時間】
 ある若い助教授と話をしていて、ファイナルの頃の精勤睡眠時間が3時間ぐらいだったとつい言ってしまったら、「あなたの場合、年間のうち4週間ぐらいだろうからまだいいけど、私なんて1年の3分の2くらいがそんな生活だ」 と言われた。 (p.74)
 私は、専門以外のことで光り輝き冴え渡っていた奇跡の1週間を経験したことがある。日本の大学ならば0週間で難なく卒業できる。卒論なんて高校生の自主研究に毛が生えた程度で十分なのだから。
 ところで、睡眠3時間で何日も過ごせるのは、集中できる事に向かい続けていると、ある点を境に、頭にターボがかかって、まさに酸素過給状態になるからである。酸素過給状態だからこそ普段の自分とは思えないような冴えを自覚できたのだと思う。 「私は○○時間寝なければいけない」 というのは単なる思い込みである。
 脳は使わなければ年齢に関係なく錆びつくし、使おうと思えば上限はないものだと思っている。限界を定めるのは 「ここまでしかできない」 という自分自身の思い込み、自分自身で定めた制限、ないし、意欲のなさなのであろう。
 勉学を志す若者たちが集う一流大学には、夢と希望を背景に意欲に満ちたスピリッチュアルな空間があることは間違いない。希望が薄れていたり意欲を失いつつあると感じている時は、大学のキャンパスを散策するのも良いものである。

 

 

【日本からの留学生】
 雅子様以外に、
古くは小村寿太郎、山本五十六、鶴見俊輔、広中平祐さんなどがおり、日本のハーバード・クラブの会員数は500人に達している。 (p.119)
 そうである。
 
<了>