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 学生のころ読んだ綺麗な装丁のハードカバーが実家にあるのに、古書店で見つけてこの古ぼけたソフトカバー本を買ってしまった。この古書は1970年11月の初版からわずか3ヵ月後の第6版である。40年近く前の本だから、団塊の世代といわれるオジさんオバさんたち世代が大学生の頃に、大ヒットした小説である。
 ちょっと滑稽で、それでいて美しく、哀しい、オリバーとジェニファーのラブ・ストーリー。

 

 

【かきだし】
 この小説は、このような書き出しで始まっている。
 どう言ったらいいのだろう。25歳の若さで女が死んだのだ。
 彼女は美しく、そのうえ賢かった。彼女が好きだったもの、それはモーツァルトとバッハ、そしてビートルズ。それにぼく。(p.3)
 若者向け日本映画のスタートのナレーションで、この書き出しを真似ているらしいのを聞いたことがある。
 この小説は若者特有なやや乱暴で不謹慎な会話で語られているから、かえって身近に感じられるけれど、それに合わせていえば、映画が小説の文言をパクったのである。

 

 

【滑稽な会話】
 とにかく、ありとあらゆる祝福の言葉を述べたあと、彼はバスに乗り込み、ぼくらはバスが見えなくなるまで手を振っていた。このときだ、恐るべき事実がぼくを襲ったのは。
 「ジェニー、ぼくらは正式に結婚したんだぜ!」
 「そうよ、これであたし、地が出せるわ」 (p.110)
 吉本の芸人さんたちに、「この会話の後を続けてください」、とか質問したら何と言うのだろう。
 「ワテもこれで、屁がこけるで~」 とか・・・。でも、これじゃぁラブ・ストーリーにならなくなっちゃう。

 

 

【ゲルピン】
 ぼくらの結婚3年間の生活をひとことで表すとしたら、それは “ゲルピン” だった。 (p.111)
 今の言葉で言えば、“金欠” である。広辞苑に出ていたから分かるけれど、こんな言葉は聞いたことがない。「旧制の高校生が用いた語」 と解説されている。
 オリバー・バレットは、ハーバード大学に多くの建物を寄付するような大資産家の御曹司だったのだけれど、父親に対する反骨とプライドで、金欠結婚生活を送っていた。

 

 

【このラブ・ストーリーを象徴するフレーズ】
 喧嘩して寒い寒い冬の戸外に飛び出してしまったジェニファー。彼女を探し回っていたオリバーが、あきらめてアパートに戻ってきたとき、
 「あたし、鍵もって出るの、忘れちゃったの」 ジェニーが言った。
 どのくらいそこに座っていたのかと聞くのもおそろしく、階段のいちばん下に立っていた。ただ彼女にすまないことをしたと言う気持ちでいっぱいだった。
 「ジェニー、ぼくが悪かった・・・」
 「ストップ!」 彼女はぼくのわびの言葉をさえぎり、それからとても静かな声で言った。
 「愛とは、決して後悔しないこと」  (p.135)
 このフレーズの原文は、記憶違いでなければ、“Love means never having to say you are sorry.” だったと思う。すでに定着してしまっている日本語訳は、格言めいていて、いまいち気持ちが表現できていないと昔から思っている。もっとこの場面とジェニファーの気持ちに則して言えば、
 「愛って、絶対にごめんなさいって言わないこと」 の方が具体的でいいと思っている。
 それにしてもこのフレーズ、悲しいラストシーンで語られていたものと、勝手に記憶違いしていた。

 

 

【オリバー・ストーリー】
  この 『ラブ・ストーリー』 には、あまりにもヒットしたからだろうけれど、『オリバー・ストーリー』 という続編があって、これも大学時代に買って読んだことがあるのだけれど、そっちのストーリーはとんと覚えていない。
 『ラブ・ストーリー』 が映画化された時、オリバー役をやっていたライアン・オニールが、その後、父と娘の珍道中を描いた 『ペーパー・ムーン』 という映画で父親役をやっていた。(確か娘役はライアンの実の娘だったと記憶している) ジェニファーが生まれ変わって 『ペーパー・ムーン』 の娘になっていたとしたら・・・・・などと・・・、思いついてしまうけれど、『ラブ・ストーリー』 を “永遠の名作” と思っている人々に、「馬鹿なこと言うな!」 と罵倒されかねない。

 

 

 この作品は、映画であれ小説であれ、若いうちに鑑賞しておいた方が良い。
 
<了>