【三橋貴明】「財務省が日本を滅ぼす」というトーンダウン【歳入庁構想】 | 独立直観 BJ24649のブログ

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 先月30日から今月1日にかけて、三橋貴明が新刊「財務省が日本を滅ぼす」(小学館)を出すに際して同名の3つのブログ記事を公開した。

 

 

 

前編:https://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12324008939.html

中編;https://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12324305786.html

後編:https://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12324588639.html


 

 

 

 

 財務省を厳しく糾弾するような題名である。

 舌鋒鋭く財務省を攻撃する三橋先生こそが財務省と闘う急先鋒とも思えそうである。

 しかし、果たしてどうだろうか。

 あらかじめ断っておくと、私は上の3つの記事を読んでいないし、ましてやこの新刊も読んでいない。

 私のチェックポイントは1つ。

 「歳入庁設置」だ。

 歳入庁設置は、「あまりにも権力が集中しすぎ」ている財務省を「分割」するというものであり、かつて三橋自身が主張していたことだ(下記)。

 確か、TOKYO MXだったか、地上波テレビ番組でも三橋は歳入庁設置の必要性を説いていた(下の動画はチャンネル桜のもの)。

 この主張はどうなっているのだろうか。

 

 

 

「【歳入庁構想】財務省vs日銀、高橋是清七変化[桜H24/4/11]」 YouTube2012年4月11日

https://www.youtube.com/watch?v=k8hl3YcxIjw

 

 

 

 

 三橋ブログを検索してみて驚いた。

 上の3つの記事で、三橋は歳入庁に触れていないのだ。

 おそらくこの新刊でも触れていないだろう。

 強気で過激なタイトルを付けるという上辺とは裏腹に、主張内容はトーンダウンしているのではなかろうか。

 「日本を滅ぼす」強大な財務省の組織をそのままにしておいてよいのだろうか。

 3年前にも指摘したが、第二次安倍内閣が発足し、麻生太郎氏が財務大臣に就任すると、三橋は歳入庁設置の主張を取り下げてしまい、今なお相変わらず取り下げたままということだ(https://ameblo.jp/bj24649/entry-11896548759.html)。

 だから「御用評論家」という話が出てくると思うんだけど、名誉毀損で訴えられるかもしれないので詳述は避ける(https://ameblo.jp/bj24649/entry-11831561064.html)。

 

 

 

※ 6日時点

 

 

 

 こういう変節に本音が透けて見える。

「財務省が財政出動(公共事業)に消極的な点は批判したい。しかし安倍政権に対する牽制力となっている財務省の権力は温存したい。」

「歳入庁なんかを作られてアベノミクスが成功してデフレを脱却してもらっては困る。そんなことをされては「公共事業でデフレ脱却」という持論が通用しなくなる。」

 歳入庁に言及しなくなったのはこういう肚なのではないかと邪推してみる。

 なお、財務省が財政出動に消極的だとはなかなか単純には言えないのではないかと私は考えている(長谷川幸洋「官僚との死闘七〇〇日」(講談社、2008年)76,77ページ。自然増収で財政健全化が実現されることを財務省は嫌う。財政赤字を維持し、増税の余地を残すために、財務省は財政出動に積極的になることがある。)。

 

 

 

 あらためて三橋ブログを読み返してみたら、おもしろい記述が見つかった。

 

 

 

「日銀法改正と歳入庁」 三橋貴明ブログ2011年12月1日

https://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-11094385051.html

 

「 最近分かってきたのですが、現在の日本のデフレ問題を解消するには、以下の二つを実施するのが最も手っ取り早いですね。

 

日銀法改正:物価変動率の目標を「政府」が決め、日銀は「手段の独立」を保証され、かつ総裁の罷免権を国会が持つ(今は、罷免権が「誰にもない」という異常な状況)
財務省分割:財務省から「国税庁」を切り離し、社会保障と合わせて「歳入庁」を設立し、内閣府の外局とする

 

 実は上記の「歳入庁」構想は、民主党が以前に主張していたのです。船田先生など政治家の方々にお聞きすると、
「民主党の政策で賛同できる部分はほとんどないのだが、あれ(歳入庁構想)だけは良かった
 と、評価されています。とはいえ、民主党が野党から与党になり、財務省に取り込まれた途端、歳入庁構想は消滅してしまったのは言うまでもありません。


 とにかく、主計局(予算編成の権限を持つ)を中心とする財務省が、国税庁(警察力を持つ)というのは、あまりにも権力が集中しすぎです。何しろ警察力を持っているため、脛に傷がある政治家は逆らえなくなってしまいます。
 というわけで、「デフレ脱却」「公共事業復権」といった抽象的な政策の具体化として、「日銀法改正」「歳入庁実現」を訴えていきたいと思います(そろそろ、わたくしの会社にも国税庁が来るかな?)。」

 

 

 

 あれれ~~~???

 「財務省に取り込まれた途端、歳入庁構想は消滅してしまったのは言うまでもありません」???

 歳入庁構想が消滅してしまった三橋が財務省に取り込まれたということは言うまでもない???

 「財務省が日本を滅ぼす」という題名は過激な批判を装うフェイクで、実のところ財務省を抑える上での急所は外した峰打ち???

 私とて歳入庁構想を所構わず年がら年中訴えろとは言わないが、こういう単行本を出す際には言及して然るべきではないか。言及しないのは不自然に思える。歳入庁構想を取り下げることは構わないとしても、なぜ主張を変えるのかという理由を示すべきだ。

 ひょっとしたら単行本の方には歳入庁構想が書かれているのかもしれないが、これを宣伝するブログ記事に言及がない以上、トーンダウンしているとは言える。本気で「「歳入庁実現」を訴えていきたい」ならば、ブログにも書くはずだ。なお、目次も載っている出版社の本書HPを「歳入庁」で検索してみたが1件もヒットしなかった(https://www.shogakukan.co.jp/books/09388579)。

 ちなみに、「日銀法(改正)」についても、平成26(2014)年以降は一度しか言及がなく、しかも「訴えていきたい」から「反対しません」にトーンダウンしている(https://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12215507742.html)。

 デフレ問題を解消する「最も手っ取り早い」方法についてトーンダウンするなんて、デフレ脱却は三橋には都合が悪いんだろうなぁと疑ってしまう(https://ameblo.jp/qjs-qjs/entry-12306899235.html)。

 

 

 

※ 6日時点

 

 

 

 三橋はリフレ派を財務省の味方のように位置づけて批判しているが、歳入庁設置の主張を取り下げた自身は何なのか(上記「後編」、https://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12223607647.html)。

 己の変節から読者の目をそらすためにリフレ派を槍玉に挙げていないかと勘繰ってしまう。

 私から見れば、三橋のリフレ派批判は不当だ。

 田中秀臣氏など、リフレ派も財政出動の効用を否定するものではない。

 三橋こそ、いかなる経済学に立脚しているのやら(https://ameblo.jp/bj24649/entry-11892907483.html)。

 

 

 

https://twitter.com/hidetomitanaka/status/926755206339076098

 

https://twitter.com/hidetomitanaka/status/926753242498789376

 

https://twitter.com/hidetomitanaka/status/926753672532451328

 

https://twitter.com/hidetomitanaka/status/924739936628043776

 

https://twitter.com/hidetomitanaka/status/895811099928297472

 

https://twitter.com/hidetomitanaka/status/802714691432640514

 

 

 

 三橋の転機としては、第二次安倍内閣が発足した平成24(2012)年12月の他に、実質上の安倍政権打倒宣言をした平成26(2014)年7月1日も挙げられよう。

 三橋は、「安倍政権は、…長続きさせてはまずい」というのだから、安倍政権を早期に打倒したいということだ。

 日銀法改正への言及がなくなってきた時期と重なる。憶測に過ぎないが、このあたりから歳入庁設置を主張しなくなった理由も、麻生擁護から安倍打倒へと変質してきたのではないだろうか。三橋の主張の推移を見てそう思う。

 今回の総選挙で安倍政権支持と小池百合子支持が両立しなかったように、安倍政権支持と三橋支持も両立しない。

 安倍政権を支持するのであれば、この点は認識しておいてほしい。頭の片隅にでも入れておいてほしい。

 「安倍支持でも建設的批判は必要だ」という人はいるだろうし、それももっともではあるが、しかし、では「実質賃金ガー!」は建設的批判だったのか(https://ameblo.jp/bj24649/entry-12209402782.html)。「モンサント法ガー!」も共産党絡みのデマだったのではないか(https://ameblo.jp/bj24649/entry-12313013371.html)。前回の総選挙に際しては「自民党より民主党の経済政策の方がまし」ということまで言っていたが本当にそうだったのか(https://ameblo.jp/bj24649/entry-11957167061.html)。そうそう、長崎県のデータをあたかも全国のデータかの如く示したこともあった(https://ameblo.jp/akiran1969/entry-11877853353.htmlhttps://ameblo.jp/akiran1969/entry-11878473404.html)。

 果たして三橋の安倍政権批判は建設的なものだったのか。三橋は信用するに足る論客なのか。不当な批判で安倍政権に対する不信感をいたずらに煽っていたのではないか。

 

 

 

「「私の第3の矢は悪魔を倒す」考」 三橋貴明ブログ2014年7月1日
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-11887014825.html
 
安倍政権は、長続きしないでしょう。といいますか、長続きさせてはまずいことになります。しかも、「取り返しがつかないまずいこと」です。」

 

 

 

 「財務省が日本を滅ぼす」はアマゾンで在庫切れになるほど売れているのだそうだ(https://twitter.com/TK_Mitsuhashi/status/925546372983529474)。アマゾンの「公務員・官僚」カテゴリで「ベストセラー1位」になっている(https://t.co/lASyco8gbl)。

 これに何が書かれているのかは知らないが、これを買った人たちは、三橋がかつて歳入庁設置を主張していたことを知っているのだろうか。変節に気づいているのだろうか。

 三橋が安倍政権打倒の意志を示したことを知っているのだろうか。

 安倍総理大臣は、平成26年の衆院選そして昨年の参院選と、2度も消費税再増税の延期に打って出た。昨年の参院選は熊本地震がなければ衆参同日選挙だった可能性が高い(https://www.nikkei.com/article/DGXLASFK01H45_R00C16A6000000/)。

 安倍総理大臣は、昨日の日米首脳会談などの外交・安全保障もさることながら、財務省に抵抗し、消費税再増税を食い止め、経済再生を繋ぎ止め、日本が滅びるのを防いでいる(http://biz-journal.jp/2014/12/post_7528.html)。一度は消費税増税をしてしまったものの、前政権までにできてしまった既成事実がある故に仕方なかったであろう(https://ameblo.jp/bj24649/entry-12310988043.html)。

 私から見れば、「安倍政権打倒が日本を滅ぼす」である。

 そして、時には赤旗に同調して愛国系の人々に不合理に安倍政権に対する不信感を生じさせる三橋の方こそ「日本を滅ぼす」側に加担していると思えてならない(https://ameblo.jp/bj24649/entry-12263180198.htmlhttps://ameblo.jp/bj24649/entry-12264331800.html)。

 本書を読むなとは言わないし、財務省に対する問題意識を持つこと自体は結構なことだと思うが、安倍政権批判(およびリフレ派批判)の記述があるのならば、その部分は盲信せず、疑ってみた方がよいと思う。

 

 

 

◆ 余談 ◆

 

 

 

https://twitter.com/TK_Mitsuhashi/status/925512085156409344

 

https://twitter.com/TK_Mitsuhashi/status/925512861023010816

 

 

 

 前者のツイート、嫌らしさを感じるなぁ。

 「実は」も何も、三橋は大学院も出ていないし、大学で教鞭も執っていないし、学術論文も書いていないだろう。主張内容は反経済学で、論考には出典を記さない(https://ameblo.jp/bj24649/entry-11803435509.html)。いつの間にか自説が変わっていることもある(法人税減税につきhttps://ameblo.jp/bj24649/entry-11996166339.html、実質賃金につきhttps://ameblo.jp/bj24649/entry-11909293500.htmlhttps://ameblo.jp/bj24649/entry-12172456468.html)。

 これで経済学者なわけがないだろう。三橋を経済学者と認識する人はかなり珍しいのではないか(ウィキペディアでも経済学者として紹介されていない。http://ur2.link/GRMi)。

 経済学者・経済評論家が不要だというのは、要するに「経済学者・経済評論家の話は聞くな。俺の話を聞いていればいい。」という趣旨なんだろうな(三橋メルマガで連載している経済学者の青木泰樹の立場がないような気がするが…。)。

 読者が外部で知識を身に付けることを疎んじているのだろう。「実質賃金=名目賃金÷物価」とか、余計な知識を身に付けられると都合が悪い(https://ameblo.jp/bj24649/entry-12222494542.html)。

 知識人を迫害する原始共産主義に通じるものがあるな…、とまで言うと、このツイートからそこまで連想するお前の方が嫌らしいよと私の方が批判されそうか。

 三橋の経済学者嫌いは、私が三橋を応援していた頃から一貫していて、三橋の経済学批判の主たるものの1つに「経済人」批判がある(https://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-11315552265.html)。人々が均等に情報を持ち合理的に行動するという前提の経済学などあり得ないということだ(https://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-11628387276.html)。

 当時から私は三橋のこの経済学批判には納得できなかった。物理で言えば、「現実には重力加速度の通りに物体は落下しない。空気抵抗などがある。だから重力加速度など勉強しても無駄だ。」というのとさほど変わらないだろう。「教室事例」「黒板事例」と呼ぶことがあると思うが、学問では複雑な条件を捨象して単純化した理論を作り、現実に適用する場合には現実を加味して理論を修正する。経済学で言えば、人間を単純化した「経済人」で抽象的な理論を作り、現実に具体的に適用する際には修正すればよい、というだけの話ではないか。経済学を根こそぎ否定する必要などない。単純化・抽象化を否定してしまうと、法則性を見出す学問を否定することと大差なくなってきてしまう。三橋の経済学批判は暴論に思えた。

 最近、リチャード・セイラーのノーベル経済学賞受賞もあり、「行動経済学」が注目されている。行動経済学は、人々が不合理に行動することを前提にしている。経済人を想定しない経済学と言えるだろう。そして、1980年代から既にその研究は存在しているとのことだ(https://youtu.be/5wsM7LTNkO0?t=5m23s)。

 つまり、三橋の経済学批判は、ノーベル賞の対象にすらなる行動経済学という学問分野を知らず、経済学をよく知らなかっただけということなのではないかと思う(これは文化経済学にも言える。https://ameblo.jp/bj24649/entry-12089959253.html)。

 

 

 

「『現代経済学の呪い(前篇)①』田中秀臣 AJER2017.11.2(7)」 YouTube

https://www.youtube.com/watch?v=5wsM7LTNkO0

 

 

※ 6日時点

 

 

 

 三橋にとって目障りな経済学者・経済評論家って、例えばこういう人たちなのかな。

 

 

 

https://twitter.com/smith796000/status/926291792835723266