【夕顔162-3】古文単語「おこなふ」 | 【受験古文速読法】源氏物語イラスト訳

【夕顔162-3】古文単語「おこなふ」

さあ! いよいよセンター試験です!

今日の古文単語は「行ふ」☆

知ってて当然!の確認問題で~す♪

源氏物語イラスト訳 重要古語ラブラブ 

 

【古文単語の主なパターン】

チェックボックス1.古典特有語

   …現代にない古語。

チェックボックス2.古今異義語

   …現代と意味の異なる古語。

チェックボックス3.死語的現代ワード

   …高校生がほぼ使わない死語?

 

【今回の源氏物語】

起ち居けはひ堪へがたげに行ふいとあはれに、「朝の露異なら貪る祈り聞きたまふ。「南無当来導師拝むなる

   サゲサゲ↓

今回のイラスト訳はこちら

 

 

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今回出てきた古文単語
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■【起ち居(たちゐ)】…立ったり座ったりすること

■【の】…連体修飾格の格助詞

■【けはひ】…ようす

■【堪へがたげに】…ナリ活用形容動詞「堪へがたげなり」連用形

※【堪へがたげなり)】…我慢できない様子だ。難儀だ

■【行(おこな)ふ】…仏道修行する

■【いと】…とても

■【あはれに】…ナリ活用形容動詞「あはれなり」連用形

※【あはれなり】…しみじみ情趣深い

■【朝の露(あさのつゆ)】…朝露

■【に】…変化の対象の格助詞

■【異なら】…ナリ活用形容動詞「異なり」未然形

■【ぬ】…打消の助動詞「ず」連体形

■【世(よ)】…世の中。この世

■【を】…対象の格助詞

■【貪(むさぼ)る】…執着する。欲深く物をほしがる

■【身(み)】…わが身

■【の】…連体修飾格の格助詞

■【祈り】…祈ること。祈祷

■【にか】…~であろうか

※【に】…断定の助動詞「なり」連用形

※【か】…疑問の係助詞

■【と】…引用の格助詞

■【聞き】…カ行四段動詞「聞く」連用形

■【たまふ】…尊敬の補助動詞(作者⇒光源氏)

■【南無(なむ)―】…信仰する仏等の前につけて帰依の気持ちを表す

■【当来導師(たうらいだうし)】…未来の世に出現し、人々を救うことになっている者。弥勒菩薩(みろくぼさつ)のこと

■【と】…引用の格助詞

■【ぞ】…強意の係助詞

■【拝(おが)む】…おがむ。礼拝する

■【なる】…推定の助動詞「なり」連体形

   アップ

今回は、「にか」にも注意しましょ♪

「重要古語一覧」もご参照ください。
 

 

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☆ 本日の古文単語「おこなふ」 ☆

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起ち居のけはひ、堪へがたげに行ふ。いとあはれに、「朝の露に異ならぬ世を、何を貧る身の祈りにか」と、聞きたまふ。「南無当来導師」とぞ拝むなる。

 

問)傍線部の説明として最も適当なものを次の中から選べ。

1.隣の家で立ったり座ったりしているのが垣間見したところ分かり、そうした行為を何度もくり返し、我慢できないほど面倒くさそうに行っている。

 

2.隣人たちの立ち居振る舞いは、その気配を垣間見たところ、非常にゆるやかな動作で大変そうであり、いかにも病を患っていることが分かる。

 

3.床に額を押しつけたり、立ち上がったりして礼拝する、読経の合間の辛そうな息づかいが聞こえ、難儀そうに仏道修行しているのが分かる。

 

4.いかにもしんどそうに立ったり座ったりして祈っている姿が、その年寄りじみたたどたどしくか細い声で想像され、こちらで聞いて耐え難い感じがする。

 

5.高貴な人ならとても堪えられそうにないような、生計をたてるための仕事を、立ったり座ったりととても忙しそうに、つらいながらも行っている。

 

合格  合格  合格

 

今回のオリジナル問題は、

「行ふ」という重要古語の意味だけで判別がつきますね。

ウインク

 

【おこなふ(行ふ)

【自動詞:ハ行四段活用】

…仏道の修行をする。勤行をする

 

【他動詞:ハ行四段活用】

①執り行う。実行する

②処理する。治める。支配する

 

 *Weblio古語辞典より

   矢印

自動詞の方の意味は、必ず押さえておきましょう♪

ヽ(*・ω・)人(・ω・*)ノ

 

 

今回は、傍線部の前後で、

仏道修行に関することだというヒント

いくつも散りばめられています。

(o´・ω・`o)

 

 

直後の

「朝の露に異ならぬ世を、何を貪る身の祈りにか」

という光源氏の言葉は、

 

白楽天の漢詩の一節だそうです。

 

 

不致仕

 

七十而致仕  七十にして致仕するは

 

禮法有明文  禮法に明文有り

 

何乃貪榮者  何ぞ乃ち榮を貪る者

 

斯言如不聞  斯の言 聞かざるが如くする

 

可憐八九十  憐む可し 八九十

 

齒墮雙眸昏  齒は墮ち 雙眸昏し

 

朝露貪名利  朝露に名利を貪り

 

夕陽憂子孫  夕陽に子孫を憂ふ

 

掛冠顧翠駑  冠を掛けんとして翠駑を顧み

 

懸車惜朱輪  車を懸けんとして朱輪を惜しむ

 

金章腰不勝  金章 腰に勝へず

 

傴僂入君門  傴僂して君門に入る

 

                  (『白氏文集』より)

   矢印

この、「朝露に名利を貪り」

朝露のようなはかないこの世で、

名声や利益ばかりをむさぼるような身を嘆く、

 

こういうのを、仏教的無常観といいます。

 

仏教的無常観は、

『方丈記』や『平家物語』など、

中世の文学に顕著に見られるとよく説明されますが、

 

この『源氏物語』の「夕顔」の巻でも、

全体を通したテーマとなっています。

ねー

 

 

 

 

【南無(なむ)

【名詞】

…信仰する仏・菩薩(ぼさつ)・教えなどの上に付けて、それらに心から帰依する気持ちを表す語

 

【当来導師(たうらいだうし)

【名詞】

…未来の世に出現し、人々を救うことになっている者。弥勒菩薩(みろくぼさつ)をいう。当来の導師

 

 *Weblio古語辞典より

   矢印

仏教のお経を聴いたことのある人なら、

「南無阿弥陀仏」や、

「南無妙法蓮華経」、「南無観世音菩薩」など

耳にしたことあると思います。

 

 

現世の名利を祈ってるのかと思いきや、

「南無当来導師」、

すなわち来世に出現する弥勒菩薩に帰依する読経。

 

決して、あの人たちの祈りは、

はかない現世の、利己のためだけのものでは

なかったのですね~!

(灬ºωº灬)

 

 

 

ところで、受験生のみなさん。

宮沢賢治の「雨ニモマケズ」という詩を

最後までご存じでしょうか?

 

雨ニモマケズ
風ニモマケズ
雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ
丈夫ナカラダヲモチ
慾ハナク
決シテ瞋ラズ
イツモシヅカニワラッテヰル
一日ニ玄米四合ト
味噌ト少シノ野菜ヲタベ
アラユルコトヲ
ジブンヲカンジョウニ入レズニ
ヨクミキキシワカリ
ソシテワスレズ
野原ノ松ノ林ノ※(「「蔭」の「陰のつくり」に代えて「人がしら/髟のへん」、第4水準2-86-78)
小サナ萓ブキノ小屋ニヰテ
東ニ病気ノコドモアレバ
行ッテ看病シテヤリ
西ニツカレタ母アレバ
行ッテソノ稲ノ朿ヲ負ヒ
南ニ死ニサウナ人アレバ
行ッテコハガラナクテモイヽトイヒ
北ニケンクヮヤソショウガアレバ
ツマラナイカラヤメロトイヒ
ヒドリノトキハナミダヲナガシ
サムサノナツハオロオロアルキ
ミンナニデクノボートヨバレ
ホメラレモセズ
クニモサレズ
サウイフモノニ
ワタシハナリタイ

南無無辺行菩薩
南無上行菩薩
南無多宝如来
南無妙法蓮華経
南無釈迦牟尼仏
南無浄行菩薩
南無安立行菩薩

                  (『青空文庫』より)

   矢印

手帳に書き留められた、この散文詩の最後のページに

南無―」ではじまるこの念仏が連なっており、

真ん中の「南無妙法蓮華経」は、

ひときわ大きな字で書かれていたということです。

 

 

仏教徒でなくても、

この「南無」の意味は

日本人の常識として、知っておきたいですね。

 

 

 

正解…

 

 

【夕顔(第4章)】の一気読みはこちら⇒

【源氏物語イラスト訳】の冒頭はこちら⇒

 

【今回の源氏物語】

起ち居けはひ堪へがたげに行ふいとあはれに、「朝の露異なら貪る祈り聞きたまふ。「南無当来導師拝むなる


 

過去記事リンク

ゐる(居る)

の(格助詞)

けはひ(気配)

―がたし

~げなり

いと

あはれなり

に(識別)  「に」識別②

に(助詞)

ことなり

なり(識別)

ぬ(「ず」「ぬ」の識別)

よ(世)

を(格・接続助詞)

み(身)

にか

か・かは

と(格助詞)

たまふ  たまふ②

ぞ・ぞや

なり(伝聞・推定)

係り結びの法則

 

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