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~Integration and Amplification~ クラシック音楽やその他のことなど

学生時代から断続的に聞いてきたクラシックCD。一言二言で印象を書き留めておきたい。その時の印象を大切に。
ということで始めました。
そして、好きな映画や読書なども時々付け加えて、新たな感動を求めていきたいと思います。

4月はブレンデルのシューベルトで ③

ブレンデルの弾くシューベルト。今回は即興曲集を聴きました。録音も多くて、聴き慣れた曲ではありますが、ブレンデルの演奏で聴くのは初めてなので、新たな感慨があればいいなと思います。

【CDについて】

作曲:シューベルト

曲名:即興曲 op90 D899 (27:21)

   即興曲 op142 D935 (33:23)

演奏:ブレンデル(p)

録音:1988年7月18-24日 ノイマルクト

CD:PHCP-1660(レーベル:PHILIPS)

 

【曲と演奏について】

シューベルトの2つの即興曲集は、たびたび演奏会でも取り上げられている曲ですが、4曲セットで演奏されることが多いと思います。4つの曲で一つにまとまっているという構成的な特徴もあるようで、特にop142の方はその傾向が強いと言われているようです。ブレンデルの演奏はここでもしっかりした構築感のある演奏ですが、前回聴いた楽興の時よりニュアンス豊かに感じたのは、曲の性格もありますが、きっと10年を経過して、シューベルトの曲をいろいろ再録しているタイミングであるためではないかと思いました。平たく言えば円熟味が増したという表現ですかね…。

 

op90の方から聴く機会が多いので、今回は特にop142に注力して聴きました。第1曲はソナタの第一楽章という感じです。しっかりした構成感の中で、中間部の対話的な応答がアルペジオの伴奏を伴って展開する素敵な曲になっています。第2曲はシンプルな雰囲気の美しい緩徐楽章で、第3曲の主題はロザムンデの音楽ですね。これが美しい変奏曲となって表情豊かに展開します。

 

第四曲がこの曲の中での一番の聴きどころ。op90の方も第4曲が素晴らしいのですが、op142の方はさらにエネルギーが溢れ、ドラマティックな曲になっています。ブレンデルは確かなテクニックで軽快に演奏していきますが、どのパッセージも乱れなくすっきりして、逆に微妙なニュアンスをあまり感じさせないような自然な演奏は素晴らしいと思います。シューベルトの音楽を聴く喜びを感じるところだと思いました。

 

【録音に関して】

ブレンデルのピアノの音色が美しく明瞭に捉えられています。

 

【まとめ】

シューベルトの即興曲もいろいろな演奏タイプがあるのですが、これはまぁ王道ですかね…。

 

購入:2024/01/19、鑑賞:2024/04/16

 

ブレンデルのいままでの記事のリンクです。一つだけ入れ替えました。

 

 

 

 

 

【CDについて】

作曲:チャイコフスキー
曲名:交響曲第6番ロ短調「悲愴」op74 (42:49)

   幻想序曲「ロミオとジュリエット」 (18:45)

演奏:ダウスゴー指揮 スウェーデン室内管弦楽団

録音:2011年9月 スウェーデン Orebro Concert Hall

CD:SACD-1159(レーベル:BIS)

 

【曲と演奏について】

初めに言っておくと、私はこの演奏がかなり好きなのです。この演奏を聴いて、この曲に対する見方聴き方が変わったが変わったという気までしています。何が…というと難しいのですが、何と言いますか、インテンポ的な美しさというか、その中から曲の向こう側にアプローチできるような気がしたといいますか…。まぁ、こんなものは勝手に思っているだけではありますが。

 

まず歯切れがいい演奏ですね。それは、小編成であることもあるかもしれませんが、切り立った感じで音が出てくるような気がします。HIPの奏法の感触に似てなくもないですが、それほど極端ではないと思います。ただ、個々の音の延ばしかたなど特徴がある様な気がしました。あとは、フレーズはあまり歌わせずインテンポに感じました。でも絶妙に流れていくので、とても表情豊かに感じます。

 

そんな風に感じつつ、何か往年の演奏ではあまり気にしなかった何かが見えているような気がするようになりました。何かこの曲の闇に引き込まれそうな魅力とか、淡々とストレートに演奏される、第二楽章の美しい中間部を聴きながら、そのままあの世界に移りたくようになるとか、そんな音楽だなぁと…。とても魅力的です。第三楽章はとても歯切れがよくて、これは一二を争うノリの良さですね。曲の魔力を引き出した演奏かもしれません。

 

【録音について】

ボリュームは小さめのようですので、上げる必要はありますが、バランスのいい録音だと思います。あまり上げ過ぎると、第一楽章は特に注意。音がかなり前のめりにバンと出てきます(笑)。

 

【まとめ】

最初に書いた通り、けっこう気にいっています。あまりロシアの指揮者の悲愴が好きではないので、きっとその裏返しかなとも思ったりします。

 

購入:2012/12/01、鑑賞:2024/04/14(再聴)

ショスタコーヴィチの時代 ㊳

この全集の3枚目のCDには、第5番から第7番の3つの弦楽四重奏曲が収められています。ちょうどスターリンの死をはさむ時代に作曲された曲で、初演はいずれもスターリンの死後になりました。ジダーノフ批判の制約が残っていた期間もありますが、作風はこの時期のショスタコーヴィチらしい、アグレッシブなものとなっています。

【CDについて】

作曲:ショスタコーヴィチ

曲名:弦楽四重奏曲第5番変ロ長調 op92 (30:55)

   弦楽四重奏曲第6番ト長調 op101 (26:45)

   弦楽四重奏曲第7番嬰へ短調 op108 (12:47)

演奏:フィッツウィリアム弦楽四重奏団

録音:1975-77年 サリー All Saints Church, Petersham

CD:433 078-2(レーベル:DECCA) 3/6CD

 

【曲と演奏について】

ショスタコーヴィチは1949年に弦楽四重奏曲第4番を作曲後、周囲の勧めもあって発表は見送っていました。そして、ショスタコーヴィチは、比較的話題になることの少ない弦楽四重奏曲の分野で自身の芸術を追求する作品の作曲を継続し、1952年に弦楽四重奏曲第5番を完成させます。そして、1953年のスターリンの死後この曲は初演され、それに第4番の初演も続きました。

その後、第6番を1956年、第7番を1960年に作曲。すでに雪どけの時代となり、これらの曲は作曲後すぐに初演されています。第7番は1954年に亡くなった最初の妻ニーナに捧げられています。

 

弦楽四重奏曲第5番変ロ長調 (1952)

この曲は、当時ヴァイオリン協奏曲第1番等で使い始めたDSCH音型の変形が使用されています。C–D–Es–H–Cisという形になっていて、冒頭から頻繁に出現していきます。この音形を中心に、躍動的に連綿として音楽が続いていく感じは、ショスタコーヴィチの交響曲で聴いてきた雰囲気と同じもので、それがより密度の高いものとなって展開していきます。ある意味不安をあおる様なこの作品は、さすがにスターリン時代には演奏できないですね。

 

ショスタコーヴィチは弦楽四重奏曲では、交響曲で実現したかったが、広く一般大衆に向けられる分野である交響曲では実現できなかったものを、一歩進めて弦楽四重奏で表現しています。この曲の第一楽章も、当時作曲された交響曲第10番などとも似た雰囲気は持っていますが、より深く、また弦楽四重奏でありながらも響きはより厚くと表現されていると思います。そして、緩徐楽章も美しいメロディを演奏しながら、厚い音響の響く第二楽章を経て、全体の統一性ががっちりと保たれた第三楽章で静かに終わります。大変充実した作品でした。フィッツウィリアム弦楽四重奏団の演奏も押しが強いもので素晴らしいものでした。

 

2009年に結成された、オランダのデュドック四重奏団の演奏で聴いてみましょう。

 

弦楽四重奏曲第6番ト長調 (1956)

この曲が作曲された1956年は、雪どけも発表され、スターリン批判が始まった年になります。そういう時代性を反映してかどうかは判りませんが、この曲からは明るい田園的な雰囲気が伺えます。冒頭から暖かな感じがしますし、第三楽章に置かれたパッサカリアがとても美しいものになっています。バロック様式から行きついた「24の前奏曲とフーガ」を作曲したショスタコーヴィチですが、以前交響曲第8番に織り込まれたパッサカリアと比較すると、ずいぶん明るいパッサカリアです。最後まで、ショスタコーヴィチの音楽の構成感を安心にて味わえる曲でもあります。

 

大半のショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲を初演したベートーヴェンSQの演奏で聴いてみましょう。

 

弦楽四重奏曲第7番へ短調 (1960)

ショスタコーヴィチは、1954年に妻のニーナを失いました。そして、彼女の50回目の誕生日にあたって作曲された曲がこの曲です。妻の死がショスタコーヴィチの作風に与えた影響は少なくないものと思いますが、この曲はグロテスクなテーマもある、内省的な作風になっています。また、非常に激しいフガートが含まれています。かの高速フガートを思い出すような。演奏時間は15曲中で最も短く、その分中身の詰まった曲という形です。

 

ショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲は、例えば第5番のように、各声部を綿密に組み合わせた厚い響きを作っていたのですが、この曲では四つの声部が合奏される部分が減少し、非常にクリアな音になってきています。そういった響きは後年の作品にも続いていくことになりますが、このあたりが大きな転換点になっているようです。シンプルで内省的に短く詰まった、それでも激しさを感じる曲。じっくり聴き込んでみたい作品です。

 

原題のショスタコーヴィチの演奏では定評のあったエマーソンSQの演奏です。じっくり細部まで丁寧に演奏されています。

 

この3曲を聴いて、世相はスターリンの死から雪どけへと変わり、作風は中期の重厚な音楽から、後期のシンプルで密度の高い音楽へと変わっていく時期に当たります。とても興味深い3曲の組み合わせだと思います。

 

購入:不明、鑑賞:2024/04/14(再聴)

 

関連リンクです

 

 

【CDについて】
曲名と演奏:

   ペルシャの市場にて(ケテルビー) (5:44)

    ランチベリー指揮 フィルハーモニア管弦楽団
   ワルツ「ドナウ河のさざ波」(イヴァノヴィッチ) (7:56)
   ワルツ「金と銀」op79(レハール) (8:19)

    A.デイヴィス フィルハーモニア管弦楽団

   歌劇「マドンナの宝石」より、第2幕の間奏曲(ヴォルフ=フェラーリ) (5:54)

    プラッソン指揮 フィルハーモニア管弦楽団

   スラヴ行進曲(チャイコフスキー) (9:33)

    プレヴィン指揮 ロンドン交響楽」

   組曲「コーカサスの風景」より酋長の行列(イッポリトフ=イヴァノフ) (4:54)

    ヒューズ指揮 フィルハーモニア管弦楽団

   歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲(グリンカ)(5:04)

   ルーマニア狂詩曲第1番 op11(エネスク)(12:16)

    プレヴィン指揮 ロンドン交響楽団

録音:記載なし

CD:TOCE-8927(レーベル:EMI、発売:東芝EMI)

 

【曲と演奏について】

毎日ブログを上げていると(毎日書いている訳ではない…)だんだんプレッシャーになってきました。貯金?があるうちは良いのですが、差し迫ってくると、いつ聴いていつ書くかが気になってきます。そもそも「書くために聴く」つもりで始めた訳では無く、聴いた感動を残したいということから始めたので、だんだん本末転倒になっている、今日この頃です…(笑)。

 

そんな時、イージーリスニング風の音楽が車のラジオから流れてきて、これなら今の気分でも聴けるなと思っていたら、ケテルビーの管弦楽集をラジオで放送していました。当時は「ライトミュージック」と言われたらしいですね。そこで、ケテルビーの管弦楽集のCDを探してみたのですが、家にはあったのは「ペルシャの市場にて」の入っているものが一枚だけ。それでもいいか…と聴いてみたという訳です。

 

ペルシャの市場にて

合唱がいいです。ケテルビーの代表作ですね。でも、ラジオではまだまだ面白そうなケテルビーの曲が、いろいろ流れていました。

ドナウ河のさざ波
この中では、一番好きです。映画「あゝ野麦峠」で流れた映像が忘れられません。見たのは高校生の頃ですね。監督は山本薩夫で、山村の貧困と対比するような舞踏会の映像で流れていました。この曲を聴くと、メロディは違いますが、さだまさしの「防人の詩」を思い出してしまいます😅。

金と銀

美しいメロディを持ったワルツ。レハールはオペレッタが有名ですね。
マドンナの宝石

NHKの名曲アルバムでよく聴きます。

スラヴ行進曲

この中では一番演奏機会が多いかも。この中に入ると、ものすごく華々しい曲に聴こえてしまいます。

コーカサスの風景
時々ロシア管弦楽集に入っている気がします。
ルスランとリュドミラ序曲
ムラヴィンスキー=レニングラードの名刺代わりの曲?(笑)。

ルーマニア狂詩曲第1番
これも大好きな曲。とても映える曲なので、最後にこの曲を持ってきた選曲のセンスが素晴らしいと思いました。大迫力でこの曲集が締められました。

 

という訳で、このCDは流石に廉価版シリーズによくある編集ものだと思いますが、選曲のセンスもなかなか面白いと思います。あとは、スケーターズ・ワルツとか入れて欲しいなぁと思ったりしたので、ついでに家のCDを探してみるとスケーターズ・ワルツが入っているCDが1枚ありました。「剣闘士の入場」(フチークの曲ですね)と題されたアルバムで、編集ものでは無くオリジナル録音のCDに入ってました。ヤルヴィ=エーテボリ響のDG版ですね。さすがヤルヴィ、やってくれます。今度聴いてみよう…。

 

【録音について】

とりあえず、ゴージャスに聴こえます(笑)

 

【まとめ】

ケテルビーの管弦楽集を探してみようかな…。

 

購入:不明、鑑賞:2024/04/10(再聴)

【CDについて】
作曲:モーツァルト

曲名:①セレナード第10番変ロ長調「グラン・パルティータ」K361 (47:09)

   ②セレナード第12番ハ短調「ナハトムジーク」K388 (17.35)

演奏:ウィーン・フィルハーモニー木管グループ
録音:1949年②、1953年① (M) ウィーン Konzerthaus Mozartsaal

CD:MVCW-19016(レーベル:Westminster、発売:MCAビクター)

 

【曲について】

モーツァルトのセレナードの中で、木管楽器のみで演奏される曲「管楽セレナード」は、第10番~第12番の3曲が存在します。これらは当時1780年頃にウィーンで流行していた、ハルモニームジークのために書かれた曲で、ハルモニームジークは、オーボエ、クラリネット、ホルン、ファゴット各2本の八重奏が基本となっています。第10番はさらにバセットホルン2、ホルン2、コントラバスが加わり、このコントラバスがコントラファゴットで代用されることがあることから、「13管楽器のためのセレナード」と呼ばれることがあります。このCDでも、コントラファゴットによる演奏となっています。

 

【演奏について】

モーツァルトのセレナードということで、ちょっと気軽に聴き始めます。演奏は、伝統のウィーン・フィルのアンサンブル。ウラッハをはじめとする、ウィーンの名手たちによるものです。ウィーンメンバーの演奏ですので、ニュアンスもウィーン的で典雅なものと期待して聴き始めますが、意外と重いですね…。もちろん、内容はウィーン風のニュアンスに富むものですが。これは、13管楽器という音質や録音もあるかもしれませんが、前回聴いたのは18世紀オーケストラだったので、この曲は古楽器の方が音色が柔らかくて聴きやすいのかなと改めて感じました。

 

ウィーン・フィルハーミニー木管グループの名手たちの演奏は、伝統の演奏とはいえ、全体的にバランスが良くてストレートな演奏ではないかと思いました。これは前回のブリュッヘンと比較してのことですが、あちらは個人技で歌う要素がかなりあったのではないかと思いますが、こちらは全体的に調和のとれた、かつ大変彫りの深いというか、輪郭のはっきりした演奏だと思いました。

 

第12番の方はコンパクトにまとまった感じの曲で、のちに弦楽五重奏曲第2番に編曲されています。管楽器8本ながら、実質5部の構成の曲だったとのことで、ほぼそのまま落とし込まれたようです。モーツァルトのセレナードでは唯一短調の曲で、緊張感のある引き締まった音楽が聴かれました。

 

【録音について】

しっかりとした音で録音されており、53年の第10番は全く問題なく聴かれますが、第12番の方はいくぶん録音が古いためか、一部で少々音が割れ気味のところを感じました。

 

【まとめ】

ウェストミンスターの伝統の音楽を聴きました。このシリーズは大変面白いので、全部聴きたいぐらいですが、時間がかかりますね(笑)。このカプリングは、元のレコードでは第10番で1LP、第11番と第12番で1LPだったので、片割れの第11番をまず探してこないといけません。第11番はポストホルンのCDにカプリングされています。現役版ですが、何度も再発されている音源ですので、中古も多いと思います。

 

購入:2023/11/25、鑑賞:2024/04/10

 

モーツァルトのセレナードの記事からです。

 

 

 

最近リリースされた新譜から ㊲

今週の新譜は、ブラームスのヴァイオリン協奏曲を聴きました。以前、モーツァルトの四重奏曲で、主張の強いヴァイオリンという印象を持ったデゴの演奏ですが、ブラームスのヴァイオリン協奏曲という正統派の大曲をもってどういった演奏を聴かせてくれるのか、楽しみです。

【CDについて】

作曲:ブゾーニ
曲名:ヴァイオリン協奏曲ニ長調 op35a K243 (23:13)

作曲:ブラームス

   ヴァイオリン協奏曲ニ長調 op77 (38:04)

演奏:デゴ(vn)、スタセフスカ指揮 BBC交響楽団

録音:2023年7月4-5日 ロンドン Phonix Concert Hall, Fairfield Halls, Croydon

CD:CHSA 5333(レーベル:CHANDOS)

 

【曲と演奏について】

まずは、ブゾーニのヴァイオリン協奏曲から始まります。神童と言われたブゾーニは、リストやブラームスとも関係があり、影響を受けていたことと思われます。このヴァイオリン協奏曲もブラームスからの影響があるようではありますが、感じとしては次の世代の後期ロマン派の雰囲気があると思いました。難曲のようで、ちょっと極端に振れる感じもあったりします。そんな曲ではありますが、よくまとめられて演奏されていると思います。

 

それで、このCDの本題のブラームスです。デゴの演奏に関しては、自己主張の強いヴァイオリンという印象を持っていたのですが、どうもその印象が私の中で、豊かな音のヴァイオリンという印象にすり替わっていたかもしれません。聴いてみると素晴らしい技巧に裏打ちされた繊細で美しい音でした。冒頭の第一楽章の序奏については、スタセフスカの指揮が少々堅めでアクセントに乏しく、あまりロマン派っぽく流れてこない印象を持ちました。そのあとでこのデゴの音を聴いたので、しばらく頭の中には疑問符が発生したりしました。

 

しかし、第二楽章に入ってそのヴァイオリンの美しさに疑問も払拭され、第三楽章に入って活気のある演奏でフィナーレを迎えます。申し分なく素晴らしい演奏でした。このヴィジュアルや以前聴いたイメージから、ムターのような音を少々想像していたのですが、違いましたね。現代風の美しい繊細さの中に豊かなニュアンスを持ったヴァイオリンが聴かれます。これまでの録音は、モーツァルトやベートーヴェンの曲が多かったと思うので、ロマン派の曲も今後録音されていくかもしれませんが、ちょっと楽しみです。

 

このCDのPVのようです。これは、ブゾーニのヴァイオリン協奏曲について

こちらは、ブラームスのヴァイオリン協奏曲についてですね

 

【録音について】

SACDハイブリッドで、自然な録音だとは思いますが、ちょっと固めかな…?

 

【まとめ】

デゴの最新録音を聴いて、往年の演奏スタイルとは少し違った感触を受けつつ、これからどういう演奏を聴かせてくれるのか楽しみなヴァイオリニストの一人だと思いました。

 

購入:2024/03/16、鑑賞:2024/04/10

【CDについて】

①作曲:フランク

 曲名:フルート・ソナタイ短調(23:38)

②作曲:ピエルネ

 曲名:フルート・ソナタ op36(18:49)

演奏:ランパル(fl)、バルビゼ(p)

録音:①1972年12月21日、②1972年12月22日

   パリ リバン、ノートルダム教会

CD:WPCS-11021(レーベル:ERATO、販売:ワーナーミュージックジャパン)

 

【曲に関して】

ガブリエル・ピエルネは、ドビュッシーたちと同世代のフランスの指揮者であり作曲家で、長くコロンヌ管弦楽団の常任指揮者として、当時の数々の作品も初演にあたりました。作曲にあたっての作風は比較的判りやすいロマン派的なものということですが、印象派的な雰囲気も加味されているということです。このCDではフランクの作品と同様に、ヴァイオリン・ソナタからの編曲となっており、原曲はティボーに献呈され、のちに作曲者自身により、フルート・ソナタに編曲されました。

 

【演奏についての感想】

フランクのヴァイオリン・ソナタは、濃厚でロマンティックな素晴らしい曲で、もちろんヴァイオリンの名曲として、耳にしみついているところですが、今回はフルート編曲版での鑑賞です。フルート版のこの曲は、ゴールウェイなど名手たちによる演奏も聴くことができるのですが、このCDに収められた演奏が初録音になるとのこと。編曲はそれぞれいろいろのようです。

 

まず聴いた感じは、聴き慣れたヴァイオリンの濃厚な音に比較すると、単旋律でもありスッキリとした感じに聴こえます。その分ヴァイオリンなら対峙するピアノの音が、ここではフルートを圧倒するような感じに聴こえなくもありません。バルビゼのピアノも容赦なく弾いているように聞こえますので、尚更です。しかし、ランパルも名手らしいテクニックと表情でヴァイオリンソナタの旋律を演奏しきっていて、爽快な音を楽しむ事ができました。やはり、素晴らしい曲だと思いました。

 

ピエルネは、伝統的なフランス音楽の継承者であり、穏健な作風ですが、輝かしいフルートとピアノのデュオが楽しめます。フランクやマスネの系統をひく音楽という事だと思いますが、優美なメロディが流れていく雰囲気でした。フルート・ソナタなので爽やかな印象を残します。せっかくなので、ヴァイオリンの原曲版も聴いてみたいなと思いました。そうするともう少しこの曲のことが判るのかもしれません。

 

【録音に関して】

細かい音までしっかりとらえられたいい録音だと思います。デジタルが一般的になる前の優秀なアナログ録音の雰囲気が素晴らしいです。

 

【まとめ】

ランパルとバルビゼというコンビでの録音は多くは無いのですが、同じ年の生まれで、若い時から苦楽を共にした間柄だそうです。そういう意味ではお互い遠慮のない関係で、自然な音楽を作り上げているのだと思います。

 

購入:2024/02/19、鑑賞:2024/04/09

 

ランパルの演奏するCDの、過去記事をリンクします。

 

 

4月はブレンデルのシューベルトで ②

ブレンデルの弾くシューベルト。今回はピアノ・ソナタから離れて、さすらい人幻想曲と楽興の時の2曲の入ったCDを聴きました。演奏は一連の80年代後半のものではなく、1970年代のもの。いわゆる旧盤の方ですね。

【CDについて】

作曲:シューベルト

曲名:幻想曲ハ長調「さすらい人」D760 (21:04)

   楽興の時 D780 (27:52)

演奏:ブレンデル(p)

録音:1971年10月(D760)、1972年5月(D780) オーストリア

CD:PHCP-9596(レーベル:PHILIPS)

 

【曲と演奏について】

さすらい人幻想曲は、一楽章の音楽ですが、内容は四楽章の部分に分けることができる構成になっています。さらに、その楽章部分の間で主題が統一されているという画期的な試みで、このスタイルはリストのロ短調ソナタなどにも大きな影響を与えているものです。ブレンデルの演奏は、とても元気が良い感じで始まります。テンポが良く統一されていて、聴いていて楽しくなる演奏だと思いました。ブレンデルの音は、どっしりと地に足がついた深みのある音で、アクセントもはっきりしている上に、装飾も美しいもの。安心して聴き通すことができます。

 

楽興の時もしっかりした演奏で、何度も聴いても飽きがこないようないい演奏だと思います。聴いていてとてもテンポ良くて楽しく感じます。楽興の時という訳語は、言い得て妙といった感じがして面白く感じます。原題はSix Moments Musicals。この訳語からどういうイメージを持って聴くかというところも、音楽への感じ方に影響するのかなと、いろいろ考えてみました。結論が何かある訳ではありません…。

 

この曲集を初めて聴いたのは、確か抒情的に演奏されたスタイルのもので、それはそれでいい雰囲気で聴いていたので、この曲にはどちらかというと情緒的なイメージを持っていましたが、今回改めてブレンデルの演奏を聴いてみると、とても輝いて楽しく聴ける演奏だと思いました。ブレンデルもまだ40歳代になったばかりの頃で、大変溌剌とした演奏と思います。

 

【録音に関して】

アナログ録音時代のブレンデルの演奏によるピアノの音色です。基本的に変わらないのでしょうが、何か奥深い感じがしました。

 

【まとめ】

シューベルトの音楽が溌剌として入ってくる、楽しい演奏だと思います。

 

購入:2024/01/26、鑑賞:2024/04/08

 

ブレンデルのいままでの記事をリンクしてみましょう。

 

 

 

 

 

 

【CDについて】

①作曲:ブルッフ

 曲名:ヴァイオリン協奏曲第1番ト短調 op26(21:57)

②作曲:ブルッフ

 曲名:スコットランド幻想曲 op46(25:35)

③作曲:ヴュータン

 曲名:ヴァイオリン協奏曲第5番イ短調 op37 (17:14)

演奏:ハイフェッツ(vn)

   サージェント指揮 ロンドン新交響楽団

録音:①1962年5月14,16日、②③1961年5月15,22日

   ロンドン ウォルサムストウ・タウンホール

CD:BVCC-5063(レーベル:RCA、販売:BMGビクター)

 

【曲に関して】

ブルッフのこの2曲は先に登場していたので、今回はヴュータンについて。ヴュータンはロマン派時代の名ヴァイオリニストであり、ヴァイオリン曲を中心にたくさんの作品も残しています。フランコ=ベルギー楽派に区分けされ、イザイの師にあたることになります。ヴュータンは7曲のヴァイオリン協奏曲を残しており、第5番は単一楽章の曲で、第4番とともに演奏機会が多いということです。この曲はブリュッセル音楽院、パリ音楽院の卒業試験の課題曲として作曲された曲で、技巧難度の高い作品だそうです。

 

【演奏についての感想】

ハイフェッツのブルッフも、長らく名盤と言われていた録音のようです。素晴らしい技巧と情緒をもって演奏される、ブルッフの濃厚なロマンティシズムが際立つ録音だと思いました。細かなニュアンスというか、細かな溜めも効いていて、熱い歌が生まれてきます。私は、この曲は最初に聴いたコーガン・マゼール盤の印象が強いのですが、きっとあの演奏に勝るとも劣らない演奏なんでしょう。スコットランド幻想曲も同様に、しっかり歌われた演奏で文句はありません。

 

今回、それにもまして印象に残ったのが、サージェントとロンドン新交響楽団のオーケストラのサポートでした。サージェントは堅実な指揮者のイメージだったのですが、ここでは素晴らしいサポートで、ハイフェッツの強い演奏に、とても雄弁で豊かな音で応答していると思いました。この名演も両者の協奏の成果として生まれたものだと思いました。

 

ヴュータンのヴァイオリン協奏曲第5番は、単一楽章で構成された曲ですが、その内部は急-緩-急の構成になっています。ブルッフと同様に大変ロマンティクな曲で、ここでもよく歌うハイフェッツのヴァイオリンが雄弁にこの曲を奏でていました。中間のアダージョの歌もしっかりと歌いあげられ、強い哀愁を漂わせます。やはりハイフェッツの演奏は素晴らしく、音と技巧に圧倒されるばかりです。

 

【録音に関して】

ハイフェッツのヴァイオリンの美しい音がしっかり表現されていて、オーケストラも重心の低いしっかりした音で鳴っています。この時代のRCAの録音は素晴らしいと思いました。

 

【まとめ】

以前聴いたシベリウスと同様に、ハイフェッツの音とテクニックに魅了されたCDでした。巨匠という言葉がまさにピッタリの演奏です。

 

購入:2024/02/09、鑑賞:2024/04/07

 

 

このブログの過去記事からのブルッフ関連のリンクです

 

 

 

ショスタコーヴィチの時代 ㊲

ショスタコーヴィチの「24の前奏曲とフーガ」は、もちろんバッハの「平均律クラヴィーア曲集」に影響を受けた作品で、ショスタコーヴィチの、ひいては20世紀のピアノ曲の大曲の一つです。今回は、この曲の誕生に密接に関係のあったニコラーエワの演奏で鑑賞しました。

【CDについて】

作曲:ショスタコーヴィチ

曲名:24の前奏曲とフーガ(165:53)

演奏:ニコラーエワ(p)

録音:1990年9月24-27日 ロンドン

CD:CDA66441/3(レーベル:Hyperion)3CD

 

【曲と演奏について】

ショスタコーヴィチは、1950年7月に没後200年記念としてライプツィヒで開催された、第1回国際バッハ・コンクールの審査員として参加しました。この時に多くのバッハの作品に触れ、優勝したニコラーエワの演奏に深く感銘を受けたことから、この作品を作曲を思い立ちます。その構想は膨らんでいき、最終的に「平均律クラヴィーア曲集」のならって、24の調性の前奏曲とフーガという形に発展しました。

 

この曲の成立はニコラーエワと密接な関係を持っており、作曲の過程でショスタコーヴィチは1曲毎にニコラーエワに披露したと言われています。しかし、ジダーノフ批判が継続している中で、この作品の演奏と出版の許可の判定を行う作曲家同盟は、形式主義的傾向があるとして厳しい数々の批判を浴びせ、ジダーノフ批判以降、指導に従った作品を発表していたショスタコーヴィチの純音楽作品への復帰という印象もあって、許可しようとしませんでした。

 

当局より特に問題視された、15番の変ニ長調の前奏曲とフーガ。確かにこの曲は突出してショスタコーヴィチ的な曲ではあります(笑)。演奏はエリソ・ヴィルサラーゼ。

 

そのような中で、ユーディナ、ギレリス、ネイガウス、ニコラーエワたちのソ連の錚々たるピアニストたちからは絶大な支持を受け、ユーディナは作曲家同盟の議論を厳しく批判、出版の許可の出ないこの曲は、手稿譜によって広まり、ソ連の著名なピアニストたちが続々と演奏を開始します。そして、ニコラーエワは1952年に、ショスタコーヴィチの不在の間に、芸術問題委員会に直接乗り込んで演奏を披露し、当局の好意的な反応を得て、全曲演奏と出版に正式にこぎつけたのでした。

この作品は、二人だけの秘密ということで、ニコラーエワに献呈されたとのことですが、どこにも献呈文は印刷されていないとのこと。むしろ、ニコラーエワの意見も多く取り入れられており、ニコラーエワとの共作によって出来上がった作品というべきかもしれません。

 

ショスタコーヴィチの24の前奏曲とフーガは、バッハへのリスペクトやオマージュに彩られていて、政治や思想の背景やアイロニーはそれほど感じさせず、真摯な音楽への奉仕に溢れる曲となっていると思います。それは、初期作品から既に革命やスターリン時代の影響を受け続けているショスタコーヴィチの作品群の中では、逆に異彩を放っているように感じます。そのような作品の性格もあって、ソ連のピアニストたちから、今世紀の芸術の偉業として盛大に支持され演奏されていったのかもしれません。

 

内容としては、同時代のショスタコーヴィチの曲からの引用などもあって、どこかで聴いた感もたまにはあるのですが、穏やかで緻密な処理がされていて、とても聴きやすくて、内容の豊かな曲集でもあります。全部通して聴くと大仕事になってしまいますので、いくつかの曲を聴くというのもこの曲にあった楽しみ方ではないかと思いました。ニコラーエワはこの曲を4度録音していますが、それは最も基本的な解釈ということになるのでしょう。

 

最後に、最も長大な第24番ニ短調をギレリスの演奏で聴いてみましょう。

 

購入:不明、鑑賞:2024/04/07(再聴)

 

リンクは、過去のショスタコーヴィチのピアノ曲から