モーツァルト:セレナード第10番 グラン・パルティータ 十八世紀オーケストラ (1988) | ~Integration and Amplification~ クラシック音楽やその他のことなど

~Integration and Amplification~ クラシック音楽やその他のことなど

学生時代から断続的に聞いてきたクラシックCD。一言二言で印象を書き留めておきたい。その時の印象を大切に。
ということで始めました。
そして、好きな映画や読書なども時々付け加えて、新たな感動を求めていきたいと思います。

【CDについて】

作曲:モーツァルト

曲名:セレナード第10番変ロ長調 グラン・パルティータ K361 (50:22)

演奏:ブリュッヘン指揮、十八世紀オーケストラ団員

録音:1988年6月9-11日 オランダ(ライヴ)

CD:PHCP-3938(レーベル:PHILIPS、発売:ポリグラム)

 

【曲に関して】

モーツァルトは、当時ウィーンで流行していた管楽合奏(管楽合奏)のためにこの曲を作曲しました。当初4楽章の構成でしたが、のちに7楽章まで加えられています。管楽器12本にコントラバスという編成になっていて、このコントラバスはコントラファゴットで演奏されることもあることから、その場合「13管楽器のためのセレナード」と呼ばれることもあります。標題の「グラン・パルティータ」は、当時パルティータが「組曲」の意味でも使われたことから、大組曲という意味になります。

 

【演奏についての感想】

管楽器のための長大なセレナードです。この楽器編成の渋い音色の音楽であり、かつ長いので、今まであまり親しみがわかず、印象が少なかったのですが、久しぶりに聴いてみましょう。うちには2枚ほどCDがあって、そのうち一つは同じブリュッヘンが、のちにドイツ・カンマーフィルを指揮したものでした。こちらはモダン楽器ですね。編成はクラリネット2、オーボエ2、バセットホルン2、ファゴット2、ホルン4、コントラバス1という形になります。主要な旋律はクラリネットを中心にオーボエが加わって演奏されます。

 

十八世紀オーケストラの名手たちによる演奏です。ライナーでは、宇野さんが管楽器だけの古楽器演奏について、そのアドバンテージを持ち上げています。それでは、独特の色彩豊かな音色を楽しませていただきます。第一楽章は長い序奏を含めてこの曲全体の長い導入。演奏を含めてブリュッヘンのほどよいニュアンスを楽しみながら進みます。第二楽章のメヌエットは、特にトリオが聴きどころでした。第一トリオの2本のクラリネットの掛け合いもさることながら、第二トリオのオーボエを中心としたメロディが素晴らしいと思います。この曲のチャームポイントの一つだと思います。

 

第三楽章アダージョで、ホルンで始まると、クラリネットとオーボエノリのいい掛け合いに展開し、優美な音楽が奏でられる、美しい楽章でした。第四楽章で再びメヌエット。厳格な感じのメヌエット主題のあと、哀愁を帯びた第一トリオが美しい楽章です。この第二楽章と第四楽章のメヌエット楽章のトリオは、この曲の聴きどころです。第五楽章は三部形式のロマンツェ。じっくりと演奏される主部に対し、楽しげでどこか哀感のある中間部の緩急緩の対比が面白い楽章でした。第六楽章は、お待ちかねの変奏曲です。各プレイヤーの掛け合いが見事で、アンサンブルのレベルの高さが際立ちます。そして第七楽章は、短いロンドで活気のある終曲。各楽器の音が交錯し、盛り上げて曲を締めくくられました。

 

といったような楽曲でした。長いセレナードの中に時々現れる、トリオや中間部分の短調がとても印象に残ります。有名なK334もそうですが、こういった対比とほのかな哀感はモーツァルトの音楽にとても引きつけられるポイントになっています。それを十八世紀オーケストラの暖かい音色でゆっくり堪能できるのは、幸せな時間なのでした。

 

【録音に関して】

美しい音色がほどよく混じり合った申し分のない録音です。

 

【まとめ】

確かに管楽器だけの古楽器演奏は、モダン楽器との違いは音色が豊かになったという感じで、演奏の雰囲気はそれほど変わらず、ごく自然に聴こえました。そしてあまり聴かなかったこの曲の良さも、少しわかってきた気がします。伝統的なウィーン・フィルやベルリン・フィルのアンサンブルの演奏はまだ聴いていないので、いつか聴いてみたいですね。

 

購入:2023/11/25、鑑賞:2023/12/30