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「界面活性剤不使用」
というのを度々聞きます。
今更珍しいフレーズでも何でもありませんね。
似たフレーズで
・合成界面活性剤不使用
・石油系界面活性剤不使用
みたいなのはありますが、
「界面活性剤不使用」
と上にリストアップした言葉達では大きく意味が違っています。
というのは、
「石油系~」などと言ってしまえばそれに該当しない界面活性剤は使えます。
アミノ酸系とか優し目のやつにすれば良いのです。
(まぁ最近は石油から作っている界面活性剤なんてあんまりありませんが)
「合成界面活性剤不使用」
であれば『石鹸』は使えますし、合成云々言っているところは大抵石鹸推しです。
しかし「界面活性剤不使用」ということは、
世にある『界面活性剤』というジャンルの化学物質を一切使っていない
という意味になるはずです。
(かずのすけの感覚がおかしくなければ)
この意味をあまり知らなければなんとなくそれくらいまぁ出来そうなもんだと思う方も多いのかもしれませんが、
実はこれは想像以上にハードルの高いことなのです。
もし、
『しっかり洗える界面活性剤不使用のシャンプー』
なんてものがあったとしたら、
僕はそのシャンプーは100%偽物だと思います。
『洗える』…つまり乳化・洗浄効果を持つということは
まず間違いなく「界面活性剤」が作用しているということだからです。
もしそのシャンプーに確かに僕達の知り得ない新しい成分が使われていて、
その成分の画期的な効果でそういう洗浄機能が得られたとしても、
つまりそれはその成分が界面活性剤ということになります。
作った人が「違う!」と言い張ってもそうなります。
そもそも『界面活性剤』というのは
水に溶かした時に水の界面(表面)の性質を変化させる物質
を総じてそう呼んでいるのです。
何も『--○』←こんな形のやつだけが界面活性剤というわけではないんです。
その成分を水に混ぜて、
少しでも水の表面張力が弱まって泡が立つようになれば
それでその成分は「界面活性剤」の仲間入りです。
泡が立たなくても例えば『粘度』を変えるだけでも、
水の表面張力を変えるので界面活性剤です。
呼んで時のごとく「界面(水の表面)を活性化させる性質のある成分」は全て界面活性剤になってしまうのですから、
そんな成分は世の中にごまんとあります。
全部を避けて化粧品を作るなんて至難の業だと思いませんか。
だから「界面活性剤不使用~」とか言いながら
『洗顔料』とか『クリーム』とかもろ界面活性作用なくして作れないような商品を売っている業者があったとしたら
それは絶対にウソっぱちだと言えるのです。
実際に少し僕の方で調べてみましたが
本当に100%完全に界面活性剤不使用の化粧品を作っているところはハッキリ言って皆無のようです。
いくつか事例をご紹介します。
◎「タンパク質」を乳化剤に使うケース
通常の界面活性剤は
水に馴染みにくい構造が長く続いてその先っちょに親水性の構造が付く。
これが基本の界面活性剤の形です。
しかし別に界面活性剤はこの構造が全てではありません。
水に馴染みにくい親油基と水に馴染みやすい親水基さえ持ってれば、
それは界面活性剤になりえます。
例えば一部の「タンパク質」は有名な界面活性作用を持つ物質です。
→「豚骨スープで洋服のシミが落ちる」を実験してみた
何故かと言うと、
タンパク質は超絶簡単に書くと↓のような感じで親油基と親水基を持っているからです。
タンパク質はアミノ酸が長く繋がった高分子化合物で、
アミノ酸には「疎水性アミノ酸」と「親水性アミノ酸」があります。
メインの鎖と疎水性アミノ酸が親油基として、
親水性アミノ酸が親水基として働くため
タンパク質を上手く使うと乳化作用や洗浄作用を持たせることが出来るのです。
この場合はいかにタンパク質でもこのような用途で使われたタンパク質は「界面活性剤」ということになります。
「界面活性剤不使用」とは言えません。
ただ機能効率は当然普通の界面活性剤の方が良いですし、
タンパク質は濃度が濃すぎるとアレルゲンになるので
化粧品にいっぱい入れるのはちょっと…という感じがしますね。。
出来ても乳化が関の山ですし。
(泡立ちは殆ど無いはず)
まぁこれは比較的マシなケース。
特にダメなのは次です。
◎「セッケン」の表記を分けて書いているケース
とある界面活性剤不使用を謳う業者の洗顔料。
水 / フィブロイン / オリーブ油 / プロパンジオール / ミリスチン酸ミリスチル / グリセリン / マルチトール / ステアリン酸 / グリコシルトレハロース / BG / 加水分解水添デンプン / 水酸化カリウム / ラウリン酸 / グレープフルーツ果皮油 / パルミチン酸 / アルギン酸 …
『フィブロイン』がシルク由来のタンパク質なので、これで洗ってるよ-!という感じで宣伝しているのですが、
よくよく見てると
グリセリン・ステアリン酸・水酸化カリウム・ラウリン酸・・・
という成分が見えてきますね。
これは『セッケン』の成分を分けて書くとこうなります。
いかにタンパク質が界面活性剤になると言っても機能面ではハッキリ言ってかなり微妙です。
水と油の乳化くらいは出来るかもしれませんが
洗浄となるとそれだけでは心もとないというわけで
結局界面活性剤の「セッケン」を加えているわけです。
ご丁寧に成分が分かりにくいように分けているのがクサイですね~。。
◎『天然界面活性剤』を「界面活性剤じゃない!」と言い張るケース
『天然ならば界面活性剤じゃない』
というよく分からない論調を貫き通すパワフルな業者もあるみたいですね。
水添レシチンやレシチンを使っている場合が多いようです。
これは紛れも無く界面活性剤です。
言い逃れは絶対無理です。
◎『バイオサーファクタント』を「界面活性剤じゃない!」と言い張るケース
まだ化粧品分野ではあんまり出てきてないんですが、
ヨーロッパの方では洗浄剤としての『バイオサーファクタント』の実用化がかなり進んでます。
バイオサーファクタントとは「微生物界面活性剤」とも呼ばれるもので、
微生物の発酵や分解などで作った人工の天然界面活性剤ですね。
セラミドやアミノ酸を発酵法で作るのと同じ感じです。
これを配合した化粧品を作って、
「うちの化粧品は世界初の界面活性剤不使用!」
とか言っちゃう方々がいらっしゃるようです。
まぁ微生物がつくろうがそれは「界面活性剤」ですから…。
界面活性剤不使用とは言えませんよね。
しかもバイオサーファクタントは生き物に作らせるので時間もかかるし性能もイマイチで価格も高額なので、
日本では殆ど注目されてないんです。
普通に合成して作った方が構造も機能も自由自在で価格も安価ですから、
今のところは合成界面活性剤に勝るポイントは殆どありません。
◎一番最悪 「普通に入ってる」 パターン
一番最低なのはこれで、
「界面活性剤不使用!」とか言いつつ堂々と界面活性剤沢山入れてる会社を1個見つけちゃいました。
皆さんもよ~くご存知の超有名化粧品なんですけどね…。(-_-;)
大胆不敵にも程があります。
まぁちょっと前にも使用前使用後の写真を公式ページで堂々と出してましたし、
ここはもうそういうメーカーに成り果てたんだなぁと残念な気持ちになりました…。
◎妙に「界面活性剤不使用」を謳う業者は・・・
勉強が足りない頼りないメーカーか、
もしくは単純に悪い人のどちらかです。
ある程度洗浄や乳化が必要な化粧品にはほぼ間違いなく界面活性剤(もしくはそれに準じる成分)が入っています。
(特殊な技術を用いれば可能ですが、非常に高額。)
界面活性剤の研究は長い時間をかけてどんどん進化し、
今では皮膚刺激を生じない界面活性剤は普通ですし
わざわざ避ける程でもないようなものばかりです。
むしろ合成して作る界面活性剤は機能などを自由に設定して作ることが出来るますが、
変な成分で代用したり不安定な作り方で作ったりした界面活性剤はその効果が未知数です。
本来は全く問題にならない危険を避けるために
効果不明なタンパク質とかバイオサーファクタントとかに手を出すのは
低いリスクを避ける為にかえって高いリスクを選んでいるようなものです。
僕は絶対にオススメしません。
価格も圧倒的に高くなりますし、
より安全で安価な製品を買おうと思うなら
普通に合成の界面活性剤に頼るほうがまだまだ良いのでは、と僕は思います。
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