女たちよ!

テーマ:
伊丹十三のエッセイ集(1968年)。
食や服や車やインテリア…
本物と偽物を意識した彼の拘りが垣間見える作品です。
例えばあたしの幼少の頃もパスタではくスパゲッティであり、
茹ですぎた白い麺をケチャップで炒めるか
ミートソースを絡めて食べるのが一般的な時代でしたね。
今や中国を偽物王国と仕立てる風潮はありますが、
当時の日本は欧米諸国から見れば似たような存在だったんだと思います。
内容の是非はともかくラムネ瓶のデザイン性に着目するなど、
その独特な視点はなかなか面白いです。

40年前の作品だからと侮るなかれ!
世代を問わずたまにはこうした人生を豊かにする
知見に触れるのも良いことではないかと思います。
所謂ハウツー本なんかじゃあダメですよw

女たちよ! (新潮文庫)/伊丹 十三

¥562
Amazon.co.jp

因みに伊丹十三といえばあたしの場合、
思春期に観たタンポポ(映画)が衝撃的で…
やっぱりその性描写が刺激的であるのはもちろん、
日本人がパスタを音を立てず食べる隣のテーブルで
当の外人が音を立てて食べている…
といった描写が特に印象に残っています。
あぁそうそうこんなシーンもあったあった↓
前衛的?いずれも独特な感じです。


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臆病な自尊心 尊大な羞恥心

テーマ:
バイン(GRAPEVINE)の新作が出た当初、某スレッドで
「虎を放つ♪」は中島敦の短編小説「山月記」であろう…とかあったので、
気になってアマゾンで取り寄せてみたり、、
事実その後のツアーパンフで明にそのことに触れていたとかなんとか。
実際のところはわかんないけど、まぁでもそうなんだろうなぁ。
因みに山月記は高校の国語の教科書にも多く掲載されているみたいで、、
あたしは当時国語は大嫌いだったので全く覚えてないのだけど(苦笑)


李陵・山月記 (新潮文庫)/中島 敦


漢文調の文体に敷居が高く感じられるけど、
臆せず読めば割と普通に読める感じです。
でもって確かに教材にするには面白い作品かもですね。
記事のタイトルにもした臆病や尊大の使い方や、
人生の長さ(何かをなすには短すぎ、何もなさないには長すぎる)
を両極端に表現するギミックであったり、
また自身の才能の使い方を誤ったがために、
満たされずに終えゆく”人”生に悔いする姿等…

いずれもバインファンで特に虎を放つ♪が好きな人は、
これを読めば一層深みが増すこと間違いなし?(?)

~誇り高き姿で誰もわかってくれないだけ~♪


愚かな者の語ること [通常盤]/GRAPEVINE

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陽だまりの彼女

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怒れる小さな茶色い犬-130428a

昨年末か年始かNHKか何かで本の特番みたいのやってて、
著名人が色んな本を薦めている中にコレがありました。
色恋モノが苦手でも充分楽しめるとかなんとか。
最近は公房含め割とヘヴィだったかなぁ…かと思い、
たまにはこうゆうライト?なのも読んでみるか…的な感じで。

結論としてはナシです(苦笑)
確かに内容は恋愛一辺倒ではなく、ミステリだったりSF要素もあったり、、
ただどうも中途半端な感じで消化不良です。
色々批評を見ていると結末の賛否が多いのだけど、
まぁそれはソレで受け入れるにしても説得できる様な描写もないし、
どうもリアリティに欠ける感じで、
まぁ10代とかそのあたりの世代が読んで若者なりに
何か少しでも気づきがあればいいのかなぁ…レベル。
いい大人が読んで涙を流す様な作品ではない気がしますけどね、、
仮にそうでもそれは相当純粋であるということか…
ただこの場合の”純粋”は決して褒め言葉ではないけど。。


陽だまりの彼女 (新潮文庫)/越谷 オサム




以下、個人的に気に入らなかったとこ(ネタバレ注意)。

まず、仮に寿命が十数年だとして、
ふたりが夫婦として過ごしたのは最期の1年、既に終盤だ。
普通に考えたら彼女は既に老女である。
なのに見た目は若く、それなりに体力もある風でリアルじゃない。
無論、フィクションなので人の成長とソレを全くリンクさせない
展開の仕方もあるとは思うけど、作中にも終盤、
体力の衰えを示唆する描写があったりと一貫性がない。
この辺りがご都合主義も甚だしく萎えてしまう理由なのです。
そういったある種の”期限”があっていつか手段が目標になるなんて、、
それも展開として相当無理があると思いますね…
つまり彼を愛する時間に限りがあるというのに、
探す事もないがしろにキャンパスライフをのうのうと楽しむ…
といったくだりも説得力を見出せない一幕だったり、、
それも「気まぐれな猫だからさ…」とかで言い訳されるんだろうか?(苦笑)

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星を継ぐもの

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怒れる小さな茶色い犬-130302a

SFはもう流行しないの?(by 冥王星♪ -GRAPEVINE-)

ジェイムズ・P・ホーガン著(1977年)。
以前アンドロイドは~を縁あって読んでから、
アマゾンさんの怒濤のSF攻勢に遭い…(苦笑)
そのタイトルからつい食指が動いてしまった作品。
Zガンダム劇場版のサブタイトルがコレでしたね。
富野氏の著者へのオマージュ的な意味合いもあるのだろうか?

ハードSFの類ということで楽しめる人は限られるのかもしれないけど、
大好きな宇宙の話に加えて謎解き要素も交えつつ、
より論理的でリアルな描写が知識欲を満たしてくれます。
やっぱり名作は名作たる所以があるんですね。

月/ミネルバ/太陽系/木星/惑星/矮惑星…ホモ・サピエンス。

てことで本作には続編があるらしい。
また機会を見つけて読んでみたいと思う。




機動戦士Zガンダム -星を継ぐ者-
飛田展男,池田秀一,古谷 徹

第四間氷期 -Inter Ice Age 4-

テーマ:
怒れる小さな茶色い犬-121202a

「未来は、日常的連続感へ、有罪の宣告をする」(あとがきより)

毎度期待を裏切らないですね。いつか
”時代が作品に追いついた”
と評されたようだけど、まさにその通りかと。
因みに彼の作品の中では割と分かり易い方ですかね、
特有のグニャリな展開?もこの作品では皆無ですし、、
それでもスキルが足らないあたしは既に2回も読んじゃいましたけど。。

水棲哺乳類の量産…
それに関わるまたは関わる事のできない者とのミステリー。
至極簡単に表現すればそういった内容ではあるけど、
真骨頂である医学に明るい緻密でリアリティのある描写で説得力があります。
加えてそうした極端に現実的な場面と、相反するように展開される
ロマンチックで哀愁を帯びた場面とのギャップが絶妙で
いやもうこれは読まないと…表現しようがありません(逃げ…苦笑)

全編を通して謎解きの要素も十分楽しめるし、
でも個人的にはラストに挿入される少年の話が大好きですね。
”レスリング競技で反則の鰓おさえ”といったユーモアも交えつつ、
少年の最期は慈悲に溢れている。

「しかし待望の風は吹いていた。とりわけ風が眼を洗い、
 それにこたえるように、何かが内側からにじみだしてくる。
 彼は満足した。どうやら、それが涙であり、
 地上病だったらしいと気づいたが…もう動く気はしなかった」

またして安部公房の作り出す世界に引き込まれてしまった。
1度読んだらお終いの消費を目的とした大衆小説?とは違い、
こうした(良い意味で)薄気味悪い読後感…
それに当分浸っていたいと思えるような内容は
やっぱり安部公房ならではだと思う。




第四間氷期 (新潮文庫)/安部 公房

怒れる小さな茶色い犬-120617b

フィリップ・K・ディック著(1968年)。
きっかけはBUCK-TICK(笑)
この小説をモチーフに作られたとされるがあって、
興味を惹かれたので読んでみました。
因みに1982公開のハリソン・フォード主演映画「ブレードランナー」
の原作でもあります。ただあたしは映画は観た事はないので
そうゆう意味では先入観なく楽しく読めました。
(色んな方のレビューだと別モノと捉えた方が良いみたい)

所謂SFなのだけど、当時にこういった時代設定…
三次世界大戦や火星…人造人間(アンドロイド)に
人々を精神面で支える装置(ムードオルガン、共感ボックス)
といった発想がどこまで斬新だったのかは定かでないけど、
人間とは?生命とは?といったシンプルなテーマを
先の小道具を織り交ぜ、テンポ良く巧みに描いています。
加えて今現在進行中?の放射能や絶滅していく動物、ロボットの躍進を考えると、
ある種の予言書とも取れなくない位かと。
発表から40年以上経った今でもこの内容が読む側に訴えるのは
そうした事実、脅威にリアリティがあるせいなんだろうな…とか。

”人間とアンドロイドの生物学上の、或は自然科学上の区別は
 全く無意味である。親切な存在はすべからく「人間」であり、
 それ以外は人間ではない。この非人間的性質の比喩としてのみ
 「アンドロイド」を持ち出している事を失念してはならない”

上記はあとがきの引用だけど、
つまり悪しきはアンドロイドではなく…
あくまで親切心を持たない非人道的性質であると。
そしてその"親切"は作中では"感情移入"という言葉で語られ、
科学の躍進により人間と区別がつけられなくなったアンドロイドを
選別するため唯一の検査方法(感情移入反応があるか否か…)となるのだが…
果たして2012年の今この時に…全ての生きとし生きる人間が
その検査を受けたとて、結果はどう出るのだろう?
協調性を欠き表情に乏しく赤く流れる血に反応を示さない…
そういった彼らの入れ物はホンモノではないのかも?…とか。
しかしもう随分と前から知らない内にそうした輩が
どんどん世の中に生産(排出)されているのかもしれない。。


アンドロイドは電気羊の夢を見るか? (ハヤカワ文庫 SF (229))
/フィリップ・K・ディック

怒れる小さな茶色い犬-120530b

ジェフリー ユージェニデス著(1993年)。
最近雑誌か何かの特集でこの作品が扱われていたので
他に読みたいものもなかったし…と、読んでみました。
結論としては好きな類です。この暗さ加減は心地良い。
タイトルからは読み取れないけどあくまで目線は
思春期の少年と当時を回想する中年男性?で…
故に女性の監督が映画化したのはなかなか興味深いですね。
(これを原作としたソフィア・コッポラ監督デビュー作、
 ヴァージン・スーサイズは遡ったら5年前に観てますね。
 ただもう内容はあまり覚えてなくて…苦笑)

タイトルにある6月に街を埋め尽くすヘビトンボと姉妹とで
共通する短い生涯が淡くシンクロしてる感じもいいです。
身近な人の死が小さな虫の死の意味を増幅させ…
叶えられなかった未来への想いは各々の中で行き場を探しながら
そして彷徨いどんどん膨れ上がって…
悲しみを覚えると共に日常の一コマが哀愁を愛でる様が
あらゆる場面で絶妙に表現されています。

加えて1970年代というアメリカが衰退を見せ始めた時代設定。
オイルショックや日本車の台頭で立場をなくしていく
デトロイトを都市に持つミシガン州を舞台としたところも
その哀しさをよりリアルにするんですね(解説より)。
当時のナンバー、アローンアゲイン(ギルバートオサリバン)
明日に架ける橋(サイモンアンドガーファンクル)といった描写もあったり。
元々自分が生まれた(1973)年代の音楽に興味があったので
それら選曲も自然と物語に馴染む感じでした。

それにしても慣れない外人の名前に加えて5人姉妹とか、、
(はじめはほんと誰が誰やらひと苦労です…苦笑)
なのであたし的には再読でより一層深みにハマれそうな作品ですネ。
あ、あと映画もまた観てみようかなぁ…とか。。


ヘビトンボの季節に自殺した五人姉妹 (ハヤカワepi文庫)
/ジェフリー ユージェニデス