
昨日、お話ししたように、私の翻訳の仕事は、基本的には翻訳会社経由でいただく仕事です。
9割以上は翻訳会社の仕事で、それがベースとなっています。
それでも、ときどき、直接翻訳の依頼をいただくこともあります。
昨日の記事は、興味がありましたらこちらからお読みください↓
直接仕事をした方がたくさんお金が手に入るのに、私があえて翻訳会社経由の仕事をする3つの理由 | 翻訳で食べていく方法★プロの翻訳者養成所
直接依頼が来るケースは、(昨日もお話ししたように)知り合いなどの口コミでいただく場合が多いです。
私の場合、ホームページのようなものを(ちゃんと)用意していないので、「ホームページを見ました」といって依頼・打診が来ることはありません(このブログで問い合わせが来たということは何度かあるので、ゼロとは言えませんが)。
たとえば、何冊か書籍を翻訳させていただいていますが、たとえば、2020年1月に出版となった『WHOLE』(Amazonランキングで何週にもわたりベストセラーになりました)の出版社とのつながりは、新宿二丁目のバーで知り合った社長さんとのつながりがきっかけです。
その他の出版社も、直接知り合いから、出版社や編集者の方が翻訳者を探しているということで、ご紹介いただいたのがきっかけでした。
出版物などの実績については、こちらからご覧いただけます↓
また、映画の字幕の仕事は、直接映画制作会社からではないのですが、映画字幕を中心にやっている翻訳会社からお仕事をいただきます。
そのきっかけは、私が応募したのではなく、「翻訳者ディレクトリ」というサイト経由でお問い合わせをいただいた案件がきっかけでした。
こちらのサイトは、仕事の募集も掲載されるのですが、こちらのディレクトリに登録している翻訳者宛てに直接連絡が来ることもあります。
私の場合は、結構多いような気がします(ほかの方に聞いたことがないのでわかりませんが)。
その場合、翻訳会社からの問い合わせもありますが、一般の企業から来たこともありますし、映像関係の会社から連絡がきたこともあります。
直接の仕事に結びつくことも多いかと思います。
模型会社からの依頼で、フランスの模型雑誌(定期刊行物)の日本語訳も毎月担当したことがありました(現在は休刊のようです)。
その模型雑誌の仕事や、映像翻訳やその他の出版も含めた実績は、私のホームページもどき(初期に作った簡易的なページ)に掲載してありますので、興味のある方はこちらもご覧になってみてください↓
その他、直接依頼がくる仕事としては、私の場合は、地元の鶴岡市にコミュニティ通訳・翻訳者を登録する制度があり、そちらの紹介で地元の企業などからお仕事が入ることもあります。
最近では、観光地の観光案内版の英語訳やナレーションをやらせていただきました。
観光案内の英語ナレーションを担当しました | 翻訳で食べていく方法★プロの翻訳者養成所
また、翻訳ではありませんが、9月のサウジアラビア出張もその関係で直接いただいたお仕事ですし、10月にはコミュニティ通訳の紹介で山形大学の学生交流イベントでも通訳を務めさせていただきました。
翻訳の仕事も、それほど頻繁ではありませんが、(私の場合は)平均で月1~2件くらいのペースで直接のお仕事が入ってくる感じです。
昨日の記事でもお話ししたように、翻訳会社経由で仕事をもらうメリットはたくさんあります。
しかし、直接翻訳の仕事をいただくメリットは、「翻訳会社にとられる中間マージンがない」ということ以外にもいくつかあります。
まず、「①どのような翻訳にするか(スタイルや文体など)クライアントと細かく打ち合わせができる」ということが挙げられます。
翻訳会社経由だと、クライアントさんと直接打ち合わせすることが難しく、基本的には与えられた原文と資料をもとに、完成した訳文(成果物)を納品するだけになります(基本的には)。
しかし、直接の仕事だと、いろいろな打ち合わせができます。
たとえば、上でご紹介した観光案内板の例のときは、クライアントの事務所にお邪魔して、どんな案内板になるのか現物のイメージを見せてもらいながら、どんなトーン・スタイルのものになるのか、どれくらいのスペースに英訳を載せるのか、そしてどんな効果(どういうイメージを伝えたいのか)を狙っているのかなど、いろいろ調整したうえで、訳文のトーンを決めました。
結果、原文と同じ分量で訳すよりは、外国人にも伝わりやすいように原文に微調整を加えながら訳文を作ることにしました。
また、その流れで「では、ナレーションも丸山さんにお願いします」ということになったのでした。
その他の案件でも、パンフレットなどの紙面のスペースの使い方や色遣いについてもアドバイスしながら、訳文を、文章だけでなく、レイアウトや色など総合的に考えて訳文を作っていくという作業をするということもありました。
こんな風に、直接クライアントと仕事をすると、さまざまな工夫をすることができ、単に言語学的に訳すだけではなく、視覚的な効果やターゲットを考えた文体・文量で訳文を作ることが可能になります。
こういった細かい作業ができるのも、クライアントと直接やる仕事ならではです。
直接翻訳の仕事をいただくメリットの2つ目は、「②次の仕事で指名されやすくなる」ということです。
もちろん、1回目の仕事で満足していただくということが前提ですが、2回目以降の仕事もいただきやすくなります。
そうすると、仕事のやり方にも慣れていますし、どんなものが求められるかも理解が深まりますので、どんどん仕事がやりやすくなります。
一方で、翻訳会社の場合でも、同じようにリピートで発注があったり、指名をいただいたりすることもありますが、同じ翻訳者を指名して依頼することのメリットをクライアントに感じていただく機会が減ってしまいます。
また、直接お顔を拝見して仕事ができないので(その場合が多い)、なかなかリピートするモチベーションにもつながらないと思います。
直接仕事をすると、「また丸山さんにお願いしよう」と思っていただけるチャンスが増えると思います。
直接翻訳の仕事をいただくメリットの3つ目はやはり…
「③翻訳会社経由の仕事よりも高い単価で仕事ができる」ということです。
翻訳会社が一般的に何パーセントくらいを取っているのかよくわかりませんが、結構取っているような気がします。
と言うのも、直接依頼がきた企業などにお見積もりを出すと、「安いですね」と驚かれることが多いからです。
もちろん、安いと感じていただけるか、高いと感じられるかは、それぞれまちまちです。
「高いですね」と言われたこともあります。
それでも、一般的には翻訳会社からの仕事よりは単価が高くなることが多いですし、もし翻訳会社よりも安くなるようだったら、そのクライアントの仕事を「断る」という選択肢があります。
直接やる場合は、昨日も話したようにいろいろなリスクもありますし、チェック体制や品質保証の観点から、翻訳会社経由よりも経費が掛かってしまいます。
さらに、請求書を書いたり、いろいろな調整をしたり…
基本的には、翻訳会社経由の仕事よりも作業量自体が多くなりますし、税金や手数料など、さまざまな経費もありますから、やはりそれなりに請求しないと成り立たないということもあります。
それでも、いったんは自分の手元に現金が入ってきますから、そういう意味では、翻訳会社経由とはまた違ったキャッシュフローになるので、それはそれでメリットになるかと思います。
以上で挙げたこと以外にも、直接仕事をするメリットはたくさんあります。
しかし、私個人としては、直接仕事をする場合の作業量や責任、リスクを考えて、月に1~2件ほどしか抱えていないという状況です。
やはり、直接やるなら、それなりの労力をかけたいですし(レイアウトや色、スタイルなど総合的な翻訳をしたい)、そうすると1つの案件自体のボリュームも大きくなり、それなりに時間とお金(経費やスタッフの費用など)もかけたいですから、おのずと毎月何件も何件も引き受けられないという感じです。
そうすると、やはり毎月の収入のべースは翻訳会社経由の仕事で稼いで、そのうえで直接受注した仕事をするという感じになるのです。
書籍の翻訳や映像字幕の翻訳の仕事も、それなりのボリュームになりますから、毎月何件も受けることができません。
ですので、その場合も1年に何件か…といったペースになります。
まあ、あくまでも私の場合の話ですし、私の働き方の好みですので、他の翻訳者の方の中にはもっと別のやり方をしている人もいると思いますので、あくまでも参考までにということでお受け止めください。
UnsplashのRyan Ancillが撮影した写真
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