間違いだった「車が左側通行、歩行者が右側通行なのはイギリスの制度を導入したから」という思い込み | 翻訳で食べていく方法★プロの翻訳者養成所
2020-06-16 15:03:35

間違いだった「車が左側通行、歩行者が右側通行なのはイギリスの制度を導入したから」という思い込み

テーマ:翻訳の一科事典

今日、仕事で

「左側通行」に関する文章を

訳す箇所があり

調べものをしていて

ちょっと気になりました

 

そもそも、なぜ

日本のように

左側通行の国もあれば

右側通行の国もあるんだろう・・・

 

日本は

左側通行のイギリスの影響で

左側通行だったっけ?

 

刀を右手で抜いて

すぐに人を切れるように

右側に人を通すためだっけ?

 

そんな歴史があったような気がしたけど

真相はどうなんだろうと

気になりだしたら止まらず

調べてみたら

意外な事実が分かったので

今日はその話を

共有したいと思います

 

ハチハチハチ

 

世界で

左側通行をしているのは

約35%だそうです

 

どの国が左で

どこが右かは

Wikipediaなどでも

地図で示されていますので

確認してみてください

 

参考:

対面交通 - Wikipedia

 

List of left- & right-driving countries
 

その中にはもちろん

日本も含まれていますが

その多くが元英帝国の領域

ということです

 

ただ

日本は英帝国にも英連邦にも

属したことがありません

 

オーストラリアや香港も

左側通行で知られていますが

どちらも

英国に属していたことがあるので

理解できます

 

日本は

なぜ左側なのでしょうか?

 

イギリスから道路制度を輸入したから

と考えがちですが

正確には

ちょっと違うようなのです

 

そもそも

道路交通は

左側通行が先なのでしょうか?

 

右側通行が先なのでしょうか?

 

いろいろな資料を当たってみましたが

この辺のルーツは

どの資料でも共通しているようです

 

発祥は

欧州の中世の世界のようです

 

車が発明される前

貴族などは剣を携えて

歩行していました

 

右利きの人が多かったので

右で剣を抜く

つまり

鞘は左側に携行していたため

 

すぐに剣を抜いて対応できるように

そして

人とすれ違うときに

鞘が相手にぶつからないようにするために

人を自分の右側に通す

つまり

左側通行をしていたのだそうです

 

つまり

中世の応酬では

「左側通行」がルールだったのだ

そうです

 

今の日本と同じです

 

ところが

馬車が普及するようになると

大きな荷物を運ぶ需要が出てきて

複数の馬に馬車を引かせるようになります

 

右利きの人は

馬の左側から騎乗するのが

都合がいいです

 

右手にはムチ

 

ですから

複数の馬に引かせる場合

乗らない方の馬が

右側に来ることになります

 

そのような馬車で

他の馬車とすれ違うときは

右側がよく見えないので

自分の左側に対向車を通すのが

都合よくなります

 

それで

右側通行になったのだそうです

 

これはどうやら

フランスでの話のようで

イギリスでは

右側にはならなかったのだそうです

 

どうやら

あまり大きな荷物を運ぶ

需要が出なったようで

馬車になっても

イギリスでは

馬の後ろに座るスタイルで

十分に足りたのだそうです

 

ということで

イギリスでは

馬車時代になっても

左側通行のまま

ということだったようです

 

こんな事情から

フランスでは

左側通行が常識だった社会から

右側通行の社会へと

移行していきます

 

右側通行が広まった

決定的な要因は

ナポレオンの征服だそうです

 

ナポレオンが

ベネルクス三国やスイス

ドイツ、ポーランド

スペイン、イタリアなどと

征服をした地域は

右側通行に

転換していきました

 

この辺の歴史については

実はフランス国防省のホームページに

記載されていました

 

参考:

Conduite à droite, conduite à gauche
 

実は

翻訳の仕事をしていて

調べものをしていたとき

偶然にもこのページにたどり着き

興味を持って

少し掘り下げて

調べてみたのでした

 

右側通行については

諸説があるそうなのですが

フランス国防省が

公式に発表しているのですから

この説は

最有力でしょう

 

World Standards には

もっと詳しく(英語で)

歴史が紹介されていました

 

関心のある方は

是非読んでみてください

 

Why do some countries drive on the left and others on the right?
(World Standards)

 

英国は

ナポレオンの侵攻に抵抗し

左側通行を死守したのだそうです

 

その他にも

オーストリア=ハンガリー、

ポルトガルなど

ナポレオンに抵抗した国では

左側通行が

維持されます

 

フランスでは

そんな事情から

農民は右側通行をさせてものの

貴族は引き続き左側通行だったのだそうです

 

ところが

フランス革命を機に

貴族が農民に合わせて

右側通行にそろえたという歴史もあるようで

面白いです

 

面白い歴史は

他にもあります

 

例えば

アメリカでは

植民地時代は

やはり左側通行だったそうです

 

それが

独立を機に

イギリスとのつながりを断ち切るために

右側通行に変更したのだそうです

 

もちろん

イギリスからの移民だけでなく

フランスからの移民も多かったので

その影響もあり

ペンシルバニアでは

かなり早い段階で右側通行に

定められたようです

 

自動車が発明されて

普及していくと

アメリカの自動車産業が

右側通行の普及に貢献するようです

 

アメリカ車の輸出が拡大するにつれて

左側通行から右側通行に

変更する流れが加速します

 

植民地といえば

オランダの旧植民地は

左側通行が多いそうです

 

インドネシアやスリナメなど

 

本国のオランダはというと

ナポレオンの影響で

右側通行になってしまいますが

それ以前に植民が進んだ

植民地では

左側通行が維持されたようです

 

同じくWorld Standardsにあったのですが

パキスタンが面白い!

 

右側通行への変更を

検討したそうですが

実現しませんでした

 

それは

パキスタンでは

馬の代わりに

ラクダが使われていたのだそうですが

ラクダの調教が難しいとのことで

右側通行への転換を

断念したようです

 

だからパキスタンは

今でも左側通行!

 

実は

イギリスでも右側通行への変更が

検討されたのだそうです

 

しかし

インフラの変更など

お金がかかりすぎるということで

断念したのだそうです

 

Photo by Fernando Tavora on Unsplash

 

 

では

肝心の日本ですが・・・

 

イギリスの道路交通制度を導入して

左側通行になっている

というのは

正確に言うと

正しくないようなのです

 

そもそも

江戸時代から

刀を携行していた

侍などの影響から

人は左側通行でした

 

その後

日本初の鉄道が

イギリスから輸入されて開業します

 

当時

日本の鉄道は

ほとんどがイギリスからの

輸入でした

 

したがって

鉄道や路面電車は

すべて左側通行で

建設されたのです

 

要するに

鉄道が左側通行だったから

自動車も左側通行

とのことです

 

車が正式に左側通行と定められたのは

1924年になってからだそうです

 

参考:

右側通行? 左側通行?-「人は右、車は左」と言われている歩行者や自動車の通行ルールについて

 

右側通行? 左側通行?-「人は右、車は左」と言われている歩行者や自動車の通行ルールについて | ニッセイ基礎研究所「人は右、車は左」と言われて、何となく「歩行者は右側通行」するものだという意識が根付いている。私自身もつい最近改めて感じたのだが、「歩行者は右側通行」の意味するところが、必ずしも十分に理解できていない。そこで、歩行...リンクwww.nli-research.co.jp

 

 

以上、

右側通行、左側通行には

こんな経緯があったのです

 

なかなか面白いですよね

 

世界的に右側通行なのは

ナポレオンの影響が大

ということです

 

ただ

Wikipediaの解説を読むと

実はこのナポレオン説を裏付ける証拠が

まったくないのだそうです

 

参考:

Left- and right-hand traffic - Wikipedia
 

また、

世界的に右側通行へ変更するのが

主流かというと

そうでもないようです

 

サモア独立国では

2009年9月7日に

それまでの右側通行から

左側通行へと

変更になったそうです

 

世界の流れに逆行!!

 

それは

近隣のオーストラリアやニュージーランド

そして日本からの輸入自動車の方が

安いからなのだそうです

 

合理的ですね

 

人口20万人弱の国だからこそ

なせる業だったのかもしれません

 

ちなみに

英国では

歩行者は右側通行だそうです

 

これは

歩行者は自動車の通行に背を向けてはならない

という法律があるからだそうです

 

日本も

歩行者は右側通行と

定められています

 

よね?

 

これは

英国に倣ったのかというと

これもまた

違うそうです

 

戦後、

GHQに占領されていたとき

道路交通をすべて

アメリカ式の右側通行に

しようとしたのだそうです

 

ところが

やはり

自動車は

インフラなどの変更に

相当のお金がかかるということで

断念

 

ならばと

歩行者だけを右側にした

ということなのだそうです

 

随分と雑!

 

このような事情から

道路交通以外のところでは

歩行者も左側通行

となっているわけです

 

駅構内は

GHQの指導が

及ばなかったところだそうです

 

沖縄は

戦後、完全に右側通行に

させられましたもんね

 

本土と同じ

左側に戻されたのは

1978年だそうです

 

かたつむりかたつむりかたつむり

 

日本の左側通行は

英国鉄道の輸入が原因

とのことですが

 

鉄道の話になると

確かに

欧州の中でも

意外と左側通行が

多いのです

 

私が初めて欧州の地に

足を踏み入れたのは

フランスでした

 

パリから夜行列車で

スウェーデンに向かったのですが

乗ってすぐに気づいたのが

「?左側通行?」

でした

 

道路は

もちろん右側通行です

 

朝、目が覚めると

ドイツ国内だったのですが

そこでまた

「?!」

 

今度は

右側を走っていました

 

どうやって

右側と左側を

入れ替えたのか分かりませんでしたが

途中で

通行する側が変わったのでした

 

ドイツやオランダ、

東欧では

鉄道も右側通行が

多いようですが

フランス、イタリア、ポルトガルなどでは

左側通行です

 

もちろんイギリスも

 

これは

イギリスの鉄道技術を

利用して発展したから

のようです

 

歴史も絡んで

いろいろと複雑な欧州ですが

このような歴史をたどることも

楽しいものです

 

参考文献:

https://en.wikipedia.org/wiki/Double-track_railway#Operation

 

俗説に喝!! 日本の車が左側通行な理由 英国追従説は嘘だった!!

 

Why Does Japan Drive On The Left Side of the Road?
 

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