映画、音楽、アート、小説、料理など芸術に関する話題について、思いつくまま気の向くままアットランダムに書いていきます。★★★★★
HELP/復讐島は、単に「パワハラ上司を無人島ふたりきり」というシチュエーション設定の復讐劇ではなく、人間の強欲やその怖さを感じさせる深い作品であった。極限状態で生き延びるには、動物的なたくましさが必要だ。しかしその意味では、主人公のリンダは経験豊富で、すでにパワハラ上司を超えている。いつ助けがくるかもわからない状況、命をかけたサバイバルな出来事が二人に次々と襲い掛かる。無人島で男女二人きり、普通なら恋物語にもなりそうな気配を残しつつも、ふたりの間にはそれ以上のわだか まりが存在していた。この映画の面白いところは、上司と部下といったヒエラルキー的な復讐にとどまらず、人間の善的な部分と邪悪な部分をストーリーの中で描いている点である。一見するとサム・ライミ監督の悪ふざけ的な演出がシーンとして記憶に残るが、映画を見終わってから、こういうタイプの人間がいたらと思うと、怖くなる。(★★★★)●HELP/復讐島公式ページ
ランボーや、アメリカンスナイパーなど、除隊後PTSDで苦しむ兵士を描いた作品はいくつおあるが、日本自衛隊による国連平和維持活動を題材にした作品は、本作が初めてかもしれない。この作品では、日本の花火が火器の隠喩として取り上げられており、日本の文化、精神性といった視点で、戦争に対する意識や、自衛隊とは何かについて深く考えさせられる作品となっている。南スーダンで友人を失った経験を持つ山本は、日本のとある駐屯地近くの花火工場で働くことになる。彼を含め、自衛官たちの戦争は日本にもどっても終わっておらず、その苦しみから逃れるため、自信を肯定するために彼らは行動を起こす。どうしようもないジレンマの中、山本は花火作りを通して、日本人としての誇りを取り戻し、心に咲く花(火の華)を見つけることはできたのか?(★★★☆)
ブゴニアは単なる誘拐サスペンスではない。というのもその理由が金でも社会的要求でもなく、見方を帰れば、ホラーだったり、ブラックコメディ的な要素も入っているからだ。映画の大半は、誘拐犯の妄想とも言える誘拐と監禁にまつわるシーンだが、映画が4分の3ほど進んだころ、物語は急加速し、想像を超える結末へと進行する。前半は少しまどろっこしく感じるところもあり、途中退出した観客もいたが、それはクライマックスへのフリなので、しっかり押さえておこう。ネタバレになるのでこれ以上のことは言えないが、前半気になったのが音楽で、違和感を感じた。なぜこのシーンでこんな仰々しい音楽を使うのか?絵と音楽があっていない。しかしその理由は、映画を見終わったあとに解消される。視点が違っていたのだ。そして、なんと言ってもエマ・ストーンの演技が素晴らしい。流石としか言いようがないが、彼女以外でこの役を演じられそうな女優がイメージできないほど役にハマっている。この作品は韓国映画「地球を守れ」のリメイクだそうだが、まだ見ていないので、こちらもチェックしてみたいと思う。ちなみに「ブゴニア」は、古代の儀式や迷信に関連する造語・概念で、物語の中に流れる「狂信的な信条」「生命の根源への疑念」「腐敗から生まれる何か」といった不気味なテーマを象徴している。(★★★★)
遅ればせながら、2025年の勝手に映画ベスト10を発表します。今回は、邦画と洋画を合わせたベストです。第1位:ウェポンズ第2位:サブスタンス第3位:国宝第4位:敵第5位:ミッシング・チャイルド・ビデオテープ第6位:ストレンジダーリン第7位:マキシーン第8位:おーい、応為第9位:ドールハウス第10位:F1どうもホラー系をよく見る傾向。インパクトが強かったのはデミームーア主演のサブスタンス。邦画で印象に残ったのは、敵とミッシング・チャイルド・ビデオテープどちらも、タイプは異なるが、後を引く怖さを感じた。
アリ・アスター監督の今回の作品は、コロナ禍に小さな町の選挙戦が舞台だ。住民を守るコロナ対策は、住民を守る対策か、それとも自由を奪う悪法か?そんな中、本 当の正義とはなんなのか?一人の保安官が市長に立候補する。人一倍正義感が強い保安官だが、家族の問題や、社会的な立場の問題から、その正義感が空回りし、動けば動くほど行動が裏目となり、徐々に窮地に追い込まれていく。選挙戦はSNSが主戦場。慣れないライブ配信に加え、SNSでの投稿合戦がエスカレート。陰謀論や言論誘導によって、現行の立場でさえも脅かされる事態になっていく。物語は淡々と進むが、後半、予想もつかない展開が待っている。自由に情報を発信することができるSNSだが、発信者や発信方法によってはとても恐ろしい武器になることを実感する。人々はすでにこの制御不能な社会の中にいるのだ。「エディントンへようこそ」は、SNS社会を風刺したエンターテインメントホラーだ。(★★★★)
映画「ウェポンズ」。都市伝説の様相が漂う暗黒寓話だった。物語は17人の子供が同じ時間にいなくなるという事件から始まる。防犯カメラに残されていた、アラレちゃん走りのように両手を伸ばした不自然な走り方が不気味だ。「何があったんだ?」鑑賞者はその疑問に囚われ、映画に釘付けになる。物語は複数の登場人物の視点で断片的に語られ、徐々に事の意外な真相が明らかになっていく。映像演出では、過去の名作のオマージュと思われるカットが数多く使われており、映画ファンをニヤリとさせる。物語の設定や構成もさることながら、脚本がとても秀逸で、とても面白かった。タイトルのウェポンズの意味も納得だ。(★★★★)
葛飾北斎とその娘、応為の物語だ。北斎の娘にして弟子となり、独自の画風は絵に生涯を捧げた北斎をも唸らせた。応為の代表作、「夜桜美人図」、北斎が物の形や動きを表現したのに対し、応為は光と影と物語を描いたと作家と言えるだろう。見所は、なんといっても、応為役の長澤まさみと、北斎役の永瀬正敏の熱演だろう。長澤まさみの、男前な演技は応為の気質を自分なりの解釈で見事に表現していたし、永瀬正敏も絵を追求した、頑固な北斎の人柄を見事に演じていた。永瀬さんのここ最近の出演作の中では、自然体で一番はまっていたように思う。(濱マイクのマイク役を思い起こしました。)ふたりの相性も良い感じで、お互い役に入って北斎と応為親子のいい雰囲気をだしていた。応為がいかにして応為になったか、応為がどのように生きたか、当時の江戸庶民の生活や家族のあり方や文化をシーンの中でうまく活かした演出は物語として見応えがあった。(★★★★)●おーい、応為 公式サイト映画『おーい、応為』公式サイト | 10月17日(金)公開主演:長澤まさみ、監督・脚本:大森立嗣「悪かったな、北斎の娘で」映画『おーい、応為』2025年10月17日(金)公開oioui.com
映画「この夏の星を見る」は、新型コロナウィルスパンデミックで、普通の学校生活が送れなくなった中・高校生が天体観測で繋がる物語。自分たちでは、どうすることも出来ない状況の中で思いついたアイデア「スターキャッチコンテスト」手作りの望遠鏡で、指名された星をキャッ チしスピードを競うコンテストだ。さらに、オンラインを活用して茨城、東京、長崎五島列島の3箇所で、同時にスピードを競い合う。離れたもの同士が、一つのイベントでつながり、同じ時間を共有する。人との接触が限定され、ソーシャルディスタンスであっても、屋外なら大丈夫だし、なにより世界は空でつながっている。「何ならできるか?」そんな逆境にもめげない、前向きな想いが全国の苦しんでいる生徒たちの心を結びつけ、本当に大切なこととは何かを教えてくれる。(★★★★☆)
話題の映画「国宝」を観た。175分の長さを感じさせない物語性に加え、豪華キャスト人の演技が素晴らしい、特に主役の二人、吉沢亮(喜久雄)と横浜流星(俊介)の女方の圧巻の演技には度肝を抜かれた。演技の域を超え、歌舞伎役者としても通用するような完成度の高さだったし、吉沢亮の有名なアドリブのシーンもそうだが、なにより役になり切っていた。血筋が重んじられる歌舞伎界において、任侠一家に生まれた人間が芸でそれを超えることができるのか、別々の運命を背負った二人が厳しい歌舞伎の世界を生きる人生に感動する。曽根崎心中をはじめ、歌舞伎の演目も難易度の高いものであり、表現的な面でも二人の違いが出ていて、興味深かった。歌舞伎の世界で生きる人間にしかわからない、苦悩と歓喜の人生がそこにあった。(★★★★☆)
物語は娘をなくした母親が、骨董市で見つけた古い日本人形を購入するところから始まるのだが、その展開がとても秀逸で面白い。Jホラーのエッセンスがうまく盛り込まれて、脚本的にもかなり怖いストーリーになっている。母親役を長沢まさみ、その夫役を瀬戸康史が演じているが、二人の明るく元気なキャラのせいか、陰湿な感じがなく、ある種コメディ的な要素も感じられる。アットホーム的な展開とのギャップや科学検証的な点も面白く、想像を裏切りながらも、期待通りの展開に思わずニヤリとしてしまう。この脚本、ハリウッドでリメイクしたら、かなり怖い作品になるんじゃないかな。「ドールハウス」新しいタイプのジャパンホラーを堪能できる一本です。(★★★★)