映画、音楽、アート、小説、料理など芸術に関する話題について、思いつくまま気の向くままアットランダムに書いていきます。★★★★★
アポロ11号の月面着陸はリアルか、フェイクか?いわゆる、アポロ11号は月着陸の映像は地球で撮られたものだとする都市伝説を、ドラマ化した作品が、フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン。主演は、スカーレット・ヨハンソン。彼女が演じるのは、敏腕PRマンであり、この時代の行き過ぎたPRを皮肉った設定だ。時代は、米ソ宇宙開発競争、泥沼化したベトナム戦争への反戦運動が行われている最中、アポロ計画は実行された。人類は月の上に立つという、世紀の映像を、偽物とすり替えて全世界に発信するという暴挙、そんなことが本当にできるのか?「一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な一歩だ」あまりにも有名なアームストロング船長のこの言葉が、この映画を見る上で重要な意味をもってくる。映画自体は、シリアスというより、陽気なハリウッド映画という感じで、友情や、ロマンス、当時の男女の人生観や価値観が投影される。美術もすばらしく、当時のアメリカの世界観を味わえる。アポロの月面着陸はなんとなく記憶にのこっている程度だが、スクリーンに映し出される歴史的な現場の再現を見て、少しノスタルジックな気持ちになった。(★★★★)
エンツォ・フェラーリの半生は、まさに情熱と狂気に満ちた人生だ。フェラーリの歴史はある程度知っていたが、これほど激しいものであったのかと、本作を観て改めて思った。「車を売るためにレースに出るのではなく、レースに出るために車を売る」というエンツォの印象的な言葉があるが、まさにこれが、彼の人生を物語るものなのだろう。私生活では、長男ディーノを病気で失い、愛人とその息子ピエロとの二重生活。会社経営は破産寸前。そんな苦境の中で、挑むのが伝説の公道レース「ミッレミリア」だ。彼にとって、このレースに勝つことだけが、彼の人生を肯定するものとなる。主演のアダム・ドライバーの演技もさることながら、妻役のベネロペ・クロスの熱演も素晴らしかった。彼女の演技によって、ドラマとしての緊張感が生まれ、物語を劇的なものにしている。映画「フェラーリ」はカーレースファン、必見の作品です。(★★★★☆)合わせてみたいDVDフォードvsフェラーリ 4K UHD [4K ULTRA HD+ブルーレイ] [Blu-ray]Amazon(アマゾン)${EVENT_LABEL_01_TEXT}フェラーリ スーパー・ファクトリーのすべて [DVD]Amazon(アマゾン)${EVENT_LABEL_01_TEXT}F1 LEGENDS F1 グランプリ 1990〈3枚組〉 [DVD]Amazon(アマゾン)${EVENT_LABEL_01_TEXT}グレートカーズ~『フェラーリ』 DVD DSS04-006Amazon(アマゾン)${EVENT_LABEL_01_TEXT}
名古屋駅の駅裏に「シネマスコーレ」という小さな映画館がある。名古屋人の私にとっては、馴染みの名画座だ。実はこの映画館、映画監督、若松浩二が作った映画館であり、その開館とその後を描いたのが本作である。本作の時代背景が、まさに私の大学時代と重なっており、私の友人が支配人と知り合いということもあって、開館について、なんとなく話を聞いた気がするが、実際に、このようなドラマがあったとは‥。物語は、若松監督が、伝手をたよって支配人を依頼するところから始まるのだが、アルバイトの女性が、愛知学院大学の映画研究会が絡んだ設定になっていたり、河合塾が映画を作る話がエピソードとして盛り込まれていたりなど、私の身近な世界で起こっていたことが描かれていることに驚いた。映画自体も、シネマスコーレで観た。当然、スクリーンに映画館の入口や試写室などが映し出されることになるのだが、これがなんとも言いようのない不思議な感覚だった。特に舞台挨拶のシーンはより不思議な感覚だった。若松監督役は、井浦新さんが演じているが、本作が2作目ともあって、若松節が自然すぎて全く違和感がない。主人公の井上淳一は、本映画の監督本人のこと、つまりこの映画は井上監督のことであり、監督自身の自叙伝にもなっているところも面白い。(★★★★)●青春ジャック 止められるか、俺たちを2<関連記事>●止められるか、俺たちを
リュック・ベッソンの今回の作品は、ドッグマン。そのタイトル通り、犬と共に生きた主人公の苦悩と、自身との戦いの半生を描いた作品だ。実際にあった事件をもとにベッソン自身が脚本を描いている。冒頭、十数匹の犬をトラックに乗せた女装男性を、警察が止めるシーンから始まるが、状況がまったくわからない。ただ、怪我を負っている状況から、事件性があることだけはうかがい知れる。何かあったのか?この作品は、心の痛みや、信頼や絆を、犬との無垢な関係から描いている。「家族と犬とどっちを愛してる?」この答えが、その後の彼の人生を決める。従順な犬たちには、善悪はわからない、ただ主人との深い絆があるだけ。ここで描かれるのは、理不尽な社会と厳しい現実だ。犬との関係性は、「グラン・ブルー」のイルカとの関係性を、バイオレンスシーンは「ニキータ」や「LEON」を彷彿とさせる。映画「ドッグマン」は人生の激しさと、切なさを感じる、ベッソン監督らしい作品。私の好きなタイプの映画です。(★★★★☆4.3)ニキータ (字幕版)Amazon(アマゾン)グラン・ブルー 完全版 -デジタル・レストア・バージョン- Blu-rayAmazon(アマゾン)レオン 完全版 (字幕版)Amazon(アマゾン)
モノクロ版を観て、ドラマの秀逸性を改めて実感した。カラー版では、良い意味でも、悪い意味でも、映像に意識が行ってしまったが、モノクロ版では色がない分、物語に集中することができた。2回目ということもあったかもしれないが、感動が違った。よく見えない分、より恐さを感じたし、ゴジラの泣き声や、役者の台詞回しがストレートに入ってきた。伊福部昭のゴジラのテーマが心に染みる。モノクロ版が上映されると知った時、「そうきたか」と思った。これは、怪獣映画の金字塔、キングコングや、初代ゴジラへに対するVFXでの挑戦だ。同じモノクロにすることで、同じ条件で比較することができるのだ。カラー版とモノクロ版を比較するという意味でも面白いし、ゴジラならではの見事な企画だ。(★★★★☆)◎ゴジラ-1.0/c予告編
戦争で、家族を失い、家も財産も無い絶望的な状態、復員兵は心的障害で苦しみあえぐ。「ほかげ」はそんな戦後の、生きるための戦争を描いた作品だ。半焼けの居酒屋に残された未亡人。空襲で家族を失った子供。戦争のトラウマに苦しむ復員兵。これからどう生きたらいいのか、精神崩壊寸前の人間の内面を抉り出すように、カメラがそれを追う。キャスト陣の演技は皆素晴らしかったが、特に印象的だったのが居酒屋の未亡人役の趣里さんの迫力のある演技だ。ドスの効いた台詞回しには強烈だった。塚本晋也監督の作品は大体見ているが、本作も人間の内面に深く切り込んだ素晴らしい作品であった。(★★★★)斬、 [Blu-ray]Amazon(アマゾン)塚本晋也読本 SUPER REMIX VERSIONAmazon(アマゾン)KOTOKOAmazon(アマゾン)鉄男 ニューHDマスターAmazon(アマゾン)ヴィタール ニューHDマスターAmazon(アマゾン)
映画「ファースト・カウ」は、1820年代のアメリカ、西部開拓時代の物語。遠い昔の話だけれど、人と人との関わりや友情は変わらない。劣悪な環境の中、一攫千金を夢見る男達。日々の暮らしに絶望感を抱きながらも、光を求めて生きるのだ。二人は山の中で出会い、人生を変えるために、協力して商売を始めるのだが、うまい話などあるわけもなく、危ない橋を渡り始める。初めてやってきた牛(ファースト・カウ)は彼らにとって、頼みの綱、夢をかなえるためのトレジャーだ。理不尽な社会の中で、生き抜くため助け合い、その中で育まれる人間関係。苦しみが大きいほど、喜びが高まり、友情も深くなる。友情は、人間いとって、なくてはならないものなのだ。(★★★★)詩人ウィリアム・ブレイクの言葉「鳥には巣、クモには網、人間には友情」
映画「市子」は、市子と彼女に関わる人との人間ドラマを描きながら、市子の存在とその人生を目撃し、人の尊厳とはなにか?人の幸せとはなにか?を考えさせられる映画です。なんといっても、市子役の杉咲 花の演技が素晴らしかった。彼女の役に対する想像力がなければ、この作品は成り立たなかったと思う。おそらく、監督自身も絵を撮っていてそう思ったに違いない。映像表現として面白いと思った点として、シーンの並べ方がある。本作では、白骨遺体が発見された事件と、市子の突然の失踪という二つの出来事を追う形で、時間を交差させながら物語が展開される表現だ。この手法はオードリー・ヘップバーンの「いつも二人で」などでも使われていたと思うが、これによって、市子の人生がどのようなものであったかが、まるで謎解きをしているようにじわじわ浮かび上がってくる効果がある。映画の後半、真実がすべて明らかになったとき、なんとも言いようのないやるせなさを感じた。(★★★★)
2023年の外国語映画は、初作の前日岸や、パート2などシリーズものが強かった。これは、やはり予算効率を考えた、興業的な問題か?第1位「PEARL パール」第2位「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」第3位「ミッション・インパッシブル/デッドレコニング PART ONE」第4位「ミーガン」第5位「ファースト・カウ」第6位「search2」第7位「ナポレオン」第8位「エスター ファースト・キル」第9位「TAR」第10位「モリコーネ 映画か恋した音楽家」【コメント】パールは昨年話題になった。X(エックス)の前日譚の話だが、ストーリーが巧妙。本当に怖い殺人鬼とはこういうものかもしれない。1918年アメリカの当時の美術もツボにハマった。【監督賞】 作品名[マーティン・スコセッシ] (「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」)【コメント】シーン・カットの数は相当なはず、206分という長さを感じさせない、どんどん物語に引き込まれていく構成と演出はさすがです。【脚本賞】[エリック・ロス マーティン・スコセッシ](「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」)【コメント】ネイティブアメリカンと、白人の立場や、関係性。当時の社会情勢も踏まえた見事な脚本だった。セリフ一つ一つの意味が深く、重い。【主演男優賞】【コメント】[トムクルーズ] (「ミッション・インパッシブル/デッドレコニング PART ONE」)【コメント】60歳でこのアクションが出来てしまう、トム様はすごい。年齢を重ねるたびに、内面を表現する演技が磨かれてきた感じだ。【主演女優賞】[ミア・ゴス] (「PEARL パール」)【コメント】無垢なシリアルキラーを見事に演じている、エックスの一人二役に繋がる、役作りは見事。【助演男優賞】[ロバート・デニーロ] (「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」)【コメント】デカプリオのすばらしい演技をより際立たせたのは、円熟したデニーロの演技であることは、間違いない。【助演女優賞】[ヴァネッサ・カービー] (「ナポレオン」)【コメント】個性の強い、ジョセフィーヌの心情を見事に表現していた。ミッション・インパッシブルのホワイトウィドウ役も良かった。
今年の邦画は、秀作が多かった気がします。繊細な人間の描き方やドラマ性など、かつての日本映画の良さを感じられた一年でした。第1位「首」第2位「ゴジラ-1.0」第3位「PERFECT DAYS」第4位「市子」第5位「ケイコ、目を澄ませて」第6位「月」第7位「福田村事件」第8位「怪物」第9位「ほかげ」第10位「春に散る」【コメント】1位〜3位までは、甲乙つけがたく、順位をつけるのが難しかったですが、面白さで、北野武監督の「首」が1位です。【監督賞】 作品名[北野武] (「首」)【コメント】北野監督らしいストーリー展開と、キャスティングは見事。本能寺の変を題材に、戦国武将の人間性を、独自の解釈とユーモアで、極上のエンターテインメントに仕上がってました。【脚本賞】[山崎貴] (「ゴジラ−1.0」)【コメント】ゴジラという怪獣映画に、人々のドラマがしっかりと描かれている。これは結構衝撃でした。当時の時代背景もVFXで見事に再現しており、ゴジラの生の怖さも感じました。【主演男優賞】【コメント】[役所広司] (「PERFECT DAYS」)【コメント】この役は役所さんじゃなきゃ出来ないでしょ。共感する場面も多く、何気ない生活の中から、社会の抱える問題が炙り出されていつ感じでした。ラストカットの役所さんの演技にはグッときました。【主演女優賞】[杉咲 花] (「市子」)【コメント】市子という複雑な境遇の役を、しっかり自分のものとして昇華している。今後の活躍が楽しみです。【助演男優賞】[磯村優斗] (「月」)【コメント】彼のクールで狂気な演技はこの作品にリアリティとインパクトを与えていた。【助演女優賞】[安藤サクラ] (「怪物」「ゴジラ−1.0」)【コメント】怪物のモンスターペアレント、ゴジラ−1.0の隣のおばちゃんの役、シーンを作っていたのは彼女の演技のうまさですね。【ニューフェイスブレイク賞】[岸井ゆきの] (「ケイコ、目を澄ませて」)【コメント】まるでドキュメンタリーを見ているよう。とにかく彼女の訴えかけるような目と、熱演に心が揺さぶられました。-----------------------------------------------------------------【勝手に○×賞】[設定が厳しかったで賞]◎「シン・仮面ライダー」【コメント】後付けで、よくここまでの設定を考えたものだと思いますが、さすがに無理がありましたね。そういうものだと肯定して見返してみるとなかなか面白い。
何気ない日常を描いた映画とい方もいるが、そんな単純な作品ではない。この映画はある意味、ロードムービーに近い手法で描かれた人生賛歌のように思えた。主人公は、一人暮らしの高齢者、仕事は公共トイレの清掃員だ。毎日、自分が決めたルーティンで、1日、1日を意志をもって生きている姿は素敵だ。大切なことは、自分が納得する人生を送れているかどうかなのだ。彼の趣味は神社の木々の木漏れ日をカメラで撮ることと、境内で見つけた木々の芽を持ち帰り、育てること。ここに、人生とは何かという問いに答える一つのヒントが隠されているように思う。記憶の断片が、オーバーラップし、積み重なる。ラストカットで、何を感じる事ができるか、それが重要だ。(★★★★)→PERFECT DAYS 公式サイト映画の舞台となっている、東京トイレットというプロジェクトは、本当に素晴らしい企画だと思う。公共トイレを著名な建築家やクリエイターが設計し、トイレ自体が観光名所となる。全てを巡るのは大変だが、チャレンジしたい気持ちになる。→THE TOKYO TOILET
監督リドリー・スコット、主演ホアキン・フェニックスのタッグによるナポレオン。フランス革命の時代、マリー・アントワネットの処刑にはじまり、ロベスピエールの恐怖政治、そして天才的な軍事戦略で皇帝にまで上り詰めたナポレオン。妻ジョセフィーヌを愛し、失脚後、セントヘレナ島で亡くなるまでの波乱の人生を、丁寧に描いてる。クライマックスとなるワーテルローの戦いは、かなり迫力があった。カリスマ、ナポレオンに対し、統率力と組織力のウェリントン率いるイギリス軍。戦術の違いも興味深かった。主演のホアキン・フェニックスの役作りもすばらしく、神経質で完璧主義者でありながら、コンプレックスを抱えているナポレオンを見事に演じていた。ジョセフィーヌ役のヴェネッサ・カービーもいい演技をしていた。全体としてよく出来た伝記映画で、ナポレオンの人となりを描いた秀作。西洋史が好きな方は必見。(★★★★)
この作品は実際に起こった事件を題材に、書かれた同名小説を元に映画化されたものだ。実際に、重度障害者施設の現実がどうなのかはわからないが、この映画で取り挙げている出来事は、ある程度のリアリティが感じられた。物語は、宮沢りえ演じる洋子がこの施設で働くことからはじまり、彼女とともに、その現実を見ることになる。同僚となる陽子(二階堂ふみ)の葛藤。磯村勇斗演じる、さとくんの苦悩。夢を追う夫(オダギリジョー)との生活の中で、自分の人生を生きようとする洋子。そんな中、ついに事件が起きてしまう。「見て見ぬふり」をしてきたの行末の結末。問題は常に内在していて、月が満ちるように、突然、それは表面化してしまうのだ。社会生活と営む我々にとって、人としてどう生きるべきなのか?いろいろなことを考えさせられる作品であった。(★★★★)◎映画「月」オフィシャルサイト
愛か、金か、友情か、価値観の問いの定番の選択肢だが、この映画はまさに、この選択を如実に語るものである。舞台は、1920年代のアメリカ、オクラホマ州での物語、当時この地域ではアメリカ原住民のオセージ族がオイルマネーを背景に、白人を使用する状況にあった。白人たちはオセージ族と血縁関係を結び、非業な手口で彼らの財を狙う。この作品は、実話がもとになっており、まさに米国の消された歴史を切り抜いている。物語は、デカプリオ演じる退役軍人アーネスト、デニーロ演じるキング、そしてオセージ族で、アーネストの妻となるリリー・グラッドストーン演じるモーリーを中心に、家族、友人を巻き込んだ疑心的な人間ドラマが繰り広げられる。一体誰を信じたら良いのか?生きるために大切なことは何なのか?そんなことを思いつつ、登場人物に感情移入をしながら物語の行方を伺う206分。かなり長い作品でインターミッションがあっても良いくらいだが、長いと感じられないほど、ドラマティックな作品であり、見応えがあった。そして、なんといってもデカプリオの演技がすばらしかった。年々磨きがかかる彼の演技に、これからも注目したい。(★★★★)◎キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン
映画「首」は戦国の世を背景にした、エンターテインメント時代劇。最初から最後まで、楽しめる作品に仕上がってます。とにかく、キャスティングが素晴らしい。それぞれの役者が与えられた役をどう演じるか、見る側の期待も高まります。主要な武将の役を演じる役者の熱演もさることながら、侍大将を夢見る百姓、茂助役の中村獅童、元甲賀忍者の芸人、曽呂利新左衛門役の、木村祐一の二人の演出がすばらしく、この二人の視点を描く事で、その時代を生きた人々の生活感や人生観が伝わってくる。歴史上謎とされている、織田信長の首の所在や、明智光秀の行方など、北野監督ならではの解釈も面白かった。合戦シーンも見応えがあったし、緊張感の中で、落とす笑いも効果的だった。映画「首」北野監督が出した演技のお題に役者が大喜利で答える。そんな感じの作品でした。(★★★★)
ゴジラ −1.0観てきました。VFXならではの独特なアングル。冒頭の映像を見るだけで、山崎監督の作品だとわかる。この作品、映像もさることながら、脚本がいい。戦争で何もなくなってしまった日本に突然現れたゴジラ、それは何を意味するものなのか?設定としては、1954年の第1作のゴジラの前日譚としての物語であり、そこには原爆という科学兵器への恐怖が根底にある。特攻逃れ兵士や、生き残った人々を中心に描かれる愛と勇気。ゴジラに戦いを挑む中で見えてくる、生きる事の大切さ。戦争と核兵器の恐怖がゴジラを通して語られる。VFXの表現と、ゴジラを再定義した脚本が見事に融和した作品。ゴジラファン必見なのは言うまでもない。(★★★★)
100年前、関東大震災の混乱時に、このような事件あったとは知らなかった。ましてや、日本人が、この混乱に乗じて中国人や朝鮮人を殺していたなんて。福田村事件、この事件の背景には、生活や安全が脅かされる状況、本当のことがわからない恐怖がある。人々は自分の身を守るために、置かれた環境の中で、やりきれない思いを持ちながらも犠牲をはらって生きていかなくてはならない。自分の人生とは何なのか?不安が彼らを支配し、疑心暗鬼が蔓延する。人々はそれから逃れるため、責任を押しつけ、思い込みで行動してしまう。今の時代、森監督がこの事件を映画にしようと思った理由はとてもよくわかる。それは、時代こそ異なるが、今この時代にも類似する点があるからだ。SNSで誰もが情報が発信できるようになったことで良いこともあるが、一方で無責任な発信や、神経質な反応、誇大表現などの不安要素もある。組織では、保身や忖度、見て見ぬ振りが当たり前にように行われている。この作品では、閉ざされた村社会の群衆心理が描かれているが、現代では、誹謗中傷など、オンラインで特定の人間を攻撃するような事件も起きている。人間関係における不安や疑心暗鬼ほど、人の行動を狂わすものはない。自分ではどうすることもできない状況であっても、本作で登場する新聞記者のように真実をしっかり見つめ、自分で出来ることは何なのかを考え、行動することが大切なのだ。(★★★★)●福田村事件公式サイト
「春に散る」は、ボクシング映画の王道をいく作品だ。ボクシング映画の醍醐味は、なんと言っても対戦シーンにあり、役者の力量が問われる。黒木翔吾役の横浜流星、対峙する中西役の窪田正孝、二人ともしっかり体を作ってきており、見応えがあった。そして、最も重要なのが、黒木のトレーナー役(広岡仁一)の存在だ。本作では、佐藤浩一が好演しており、彼の存在がこの物語の軸となる。脇を固める、片岡鶴太郎と哀川翔。山口智子、橋本環奈のキャスティングもいい。原作は「深夜特急」の沢木耕太郎。ボクサーにしか分からない、人生観や描写は、スポーツライターでもある沢木ならではのものなのだろう。題名の「春に散る」はこの物語を実によく表している。二人にとって「春」とは何か、「散る」という言葉に込められた意味とは何なのか劇場で、是非確かめてほしい。(★★★★)春に散る(上)Amazon(アマゾン)深夜特急 全6巻セット 文庫本Amazon(アマゾン)春に散る(下)Amazon(アマゾン)
160分、怒涛のアクションの連続。(過去作の中で最もアクションシーンの時間が長いのではないでしょうか?)毎度のことながら、年齢を感じさせないトムのアクションは、危険度においては過去最高?予告編で見る崖からバイクで飛び降りるシーンから連続するクライマックスは面白かった。ミッションの目的は、若干抽象的な印象を持ったが、「何のために命をかけるのか?」という問いに対する疑問が深まる。ストーリーはシンプルで、「それ」を手に入れるための鍵の争奪戦だ。鍵をめぐり、対立する4つの組織の思惑が交錯し、4つどもえの戦いが繰り広げられる。イーサンはどうして、IMFのメンバーになったのか、このあと彼らはどうなってしまうのか?パート2への期待が高まる。(★★★★)◎ミッション・インパッシブル デッドレコニング パート1
重たいですが、自然との共生や、人の営みの根元を感じる映画です。舞台は18世紀末の東北の寒村。米の不作にあえぐ村社会、閉鎖的な村社会の同調圧力と、身分差別が村民を支配する。そこで、起きる一つの事件をきっかけに、主人公、凛は村を捨てて山に入る。この映画は柳田邦夫を遠野物語に着想を得て制作されており、作品の後半に、人々の生活の中に根付く、信仰や自然に対する畏敬の念のようなその世界観を感じる。表向きは楢山節考のように社会的に耐えがたい物語であり、終始暗いイメージの中で進行するが、その裏に描かれる人と自然との関係、八百万の神を尊ぶ精神的な感性が日本人としての様式美や美意識につながるような気がする。(★★★☆)◎「山女」公式ホームページ遠野物語 (光文社文庫)Amazon(アマゾン)新装版 遠野物語Amazon(アマゾン)絶対読むべき日本の民話 遠野物語Amazon(アマゾン)