ポーランドのワルシャワで開催されている、第18回ショパン国際ピアノコンクール(公式サイトはこちら)。
10月14日は、3次予選の第1日。
ちなみに、第18回ショパン国際ピアノコンクールについてのこれまでの記事はこちら。
(第18回ショパン国際ピアノコンクール 予備予選出場者発表)
(第18回ショパン国際ピアノコンクールの予備予選が4月から9月へと延期)
(第18回ショパン国際ピアノコンクール 予備予選免除の出場者発表)
(第18回ショパン国際ピアノコンクールの予備予選が2021年4月から2021年7月へと延期)
以下、曲はいずれもショパン作曲である。
1. Szymon NEHRING (Poland, 1995-09-29)
- Nocturne in E major Op. 62 no 2
- Scherzo in E major Op. 54
- Mazurka in B major Op. 56 no 1
- Mazurka in C major Op. 56 no 2
- Mazurka in C minor Op. 56 no 3
- Piano Sonata in B minor Op. 58
ピアノはスタインウェイ 479。
ポーランドの素朴さとロマン性とが、力強く、勢いよく繰り広げられる。
特に、マズルカの味わいは他国の奏者の追随を許さない。
ただ、技巧的に概ね問題ないものの、速いパッセージがわずかに荒れることがあるのと、またスケルツォでは時折ミスがみられる。
2. Kamil PACHOLEC (Poland, 1998-11-11)
- Rondo in E flat major, Op. 16
- Mazurka in C minor Op. 30 no 1
- Mazurka in B minor Op. 30 no 2
- Mazurka in D flat major Op. 30 no 3
- Mazurka in C sharp minor Op. 30 no 4
- Piano Sonata in B minor Op. 58
ピアノはスタインウェイ 479。
こちらも同じくポーランドの味が芳醇で、先ほどのネーリングの厚みのある濃厚な音に比べると細身ですっきりしており、どちらも良い。
完成度についてはこちらのほうが多少高いが、それでもソナタ終楽章など完全なコントロールとまでは言えない。
3. Hao RAO (China, 2004-02-04)
- Berceuse in D flat major, Op. 57
- Piano Sonata in B minor Op. 58
- Mazurka in G sharp minor Op. 33 no 1
- Mazurka in C major Op. 33 no 2
- Mazurka in D major Op. 33 no 3
- Mazurka in B minor Op. 33 no 4
- Polonaise in A flat major Op. 53
ピアノはスタインウェイ 479。
きわめて水準の高い洗練された技巧を持ち、完成度が高い。
どの瞬間ものびのびと朗らかに、かつ繊細に奏される。
ただ、地音が硬めなのと、全体に丁寧なぶん攻めの要素があまりなく凄味には欠ける(ソナタ第2、4楽章などもっとスリルが欲しい)。
4. Miyu SHINDO (Japan, 2002-04-26)
- Mazurka in B flat major Op. 17 no 1
- Mazurka in E minor Op. 17 no 2
- Mazurka in A flat major Op. 17 no 3
- Mazurka in A minor Op. 17 no 4
- Rondo à la Mazur in F major , Op. 5
- Piano Sonata in B minor Op. 58
ピアノはスタインウェイ 479。
ワルシャワの皆さんにぜひとも聴いてほしかったのは、まさにこのマズルカ、このソナタである。
ショパンコンクール in Asiaでのあの名演が(その記事はこちらやこちら)、そのまま再現されている(今回少し緊張がみられるが)。
音の一つ一つが、心の内奥の哀しみを訥々と歌い上げていく。
上記の3人とは違った内省的な暗いショパンだが、こういうショパンが評価されてほしいものである。
5. Kyohei SORITA (Japan, 1994-09-01)
- Mazurka in B major Op. 56 no 1
- Mazurka in C major Op. 56 no 2
- Mazurka in C minor Op. 56 no 3
- Sonata in B flat minor Op. 35
- Boże, coś Polskę (harmonization of the old version of the song for piano), Op. posth.
- Polonaise in A flat major Op. 53
ピアノはスタインウェイ 479。
まさに王者の風格。
ダイナミズムといいロマンティシズムといい、これだけハイレベルな面々の中にあってなお他を引き離す、圧倒的な存在感を誇る。
完成度の高さも随一。
最も優勝に近い人物、と言っても決して言い過ぎではないだろう。
6. Hayato SUMINO (Japan, 1995-07-14)
- Mazurka in G minor Op. 24 no 1
- Mazurka in C major Op. 24 no 2
- Mazurka in A flat major Op. 24 no 3
- Mazurka in B flat minor Op. 24 no 4
- Polonaise-Fantasy in A flat major Op. 61
- Sonata in B flat minor Op. 35
- Scherzo in C sharp minor Op. 39
ピアノはスタインウェイ 300。
あれほどすごかった反田恭平の直後に聴いても決して色褪せない、輝かしい音と技巧を持つ(反田恭平の音を七色の光だとすると、角野隼斗の音は白色光の輝きといったところか)。
重複曲のソナタで比べても、魔王のような反田恭平の演奏とはまた違った、まっすぐな推進力を持つ演奏で、充実度は一歩も譲らない。
7. Andrzej WIERCIŃSKI (Poland, 1995-11-21)
- Mazurka in G minor Op. 24 no 1
- Mazurka in C major Op. 24 no 2
- Mazurka in A flat major Op. 24 no 3
- Mazurka in B flat minor Op. 24 no 4
- Scherzo in E major Op. 54
- Piano Sonata in B minor Op. 58
ピアノはスタインウェイ 300。
マズルカ、先ほどの角野隼斗の同曲演奏も良かったが、こちらを聴くと「これぞポーランド!」と感じる。
ただ、スケルツォやソナタ第2、4楽章のような急速な曲では、タッチのキレや正確性に欠ける。
8. Piotr ALEXEWICZ (Poland, 2000-04-09)
- Mazurka in G minor Op. 24 no 1
- Mazurka in C major Op. 24 no 2
- Mazurka in A flat major Op. 24 no 3
- Mazurka in B flat minor Op. 24 no 4
- 24 Preludes Op. 28
ピアノはスタインウェイ 479。
こちらはよりくっきりとした明瞭度の高い音づくりが特徴で、ポーランドの味という点で劣らない。
ただ、前奏曲などこじんまりと素朴な感じで、ショパンの革新や詩情は影を潜めている(それには第3日の小林愛実を待たねばならない)。
そんなわけで、第1日の演奏者のうち、私がファイナルに進んでほしいと思うのは
4. Miyu SHINDO (Japan, 2002-04-26)
5. Kyohei SORITA (Japan, 1994-09-01)
6. Hayato SUMINO (Japan, 1995-07-14)
あたりである。
次点で、
1. Szymon NEHRING (Poland, 1995-09-29)
2. Kamil PACHOLEC (Poland, 1998-11-11)
3. Hao RAO (China, 2004-02-04)
7. Andrzej WIERCIŃSKI (Poland, 1995-11-21)
8. Piotr ALEXEWICZ (Poland, 2000-04-09)
あたりか。
ポーランドの4人の実力者と中国の若き俊英を差し置いて日本人3人を選んでしまったが、これが決して贔屓目によるものだけではないと信じたい。
次回(10月15日)は3次予選の第2日。
↑ ブログランキングに参加しています。もしよろしければ、クリックお願いいたします。