第18回ショパン国際ピアノコンクール 3次予選 第1日 | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

ポーランドのワルシャワで開催されている、第18回ショパン国際ピアノコンクール(公式サイトはこちら)。

10月14日は、3次予選の第1日。

ネット配信を聴いた(こちらこちら)。

ちなみに、第18回ショパン国際ピアノコンクールについてのこれまでの記事はこちら。

 

第18回ショパン国際ピアノコンクール 予備予選出場者発表

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予備予選 第1日

予備予選 第2日

予備予選 第3日

予備予選 第4日

予備予選 第5日

予備予選 第6日

予備予選 第7日

予備予選 第8日

予備予選 第9日

予備予選 第10日

予備予選 第11日

予備予選 第12日

1次予選 第1日

1次予選 第2日

1次予選 第3日

1次予選 第4日

1次予選 第5日

2次予選 第1日

2次予選 第2日

2次予選 第3日

2次予選 第4日

 

 

 

 

 

以下、曲はいずれもショパン作曲である。

 

 

1. Szymon NEHRING (Poland, 1995-09-29)

 

- Nocturne in E major Op. 62 no 2

- Scherzo in E major Op. 54

- Mazurka in B major Op. 56 no 1

- Mazurka in C major Op. 56 no 2

- Mazurka in C minor Op. 56 no 3

- Piano Sonata in B minor Op. 58

 

ピアノはスタインウェイ 479。

ポーランドの素朴さとロマン性とが、力強く、勢いよく繰り広げられる。

特に、マズルカの味わいは他国の奏者の追随を許さない。

ただ、技巧的に概ね問題ないものの、速いパッセージがわずかに荒れることがあるのと、またスケルツォでは時折ミスがみられる。

 

 

2. Kamil PACHOLEC (Poland, 1998-11-11)

 

- Rondo in E flat major, Op. 16

- Mazurka in C minor Op. 30 no 1

- Mazurka in B minor Op. 30 no 2

- Mazurka in D flat major Op. 30 no 3

- Mazurka in C sharp minor Op. 30 no 4

- Piano Sonata in B minor Op. 58

 

ピアノはスタインウェイ 479。

こちらも同じくポーランドの味が芳醇で、先ほどのネーリングの厚みのある濃厚な音に比べると細身ですっきりしており、どちらも良い。

完成度についてはこちらのほうが多少高いが、それでもソナタ終楽章など完全なコントロールとまでは言えない。

 

 

3. Hao RAO (China, 2004-02-04)

 

- Berceuse in D flat major, Op. 57

- Piano Sonata in B minor Op. 58

- Mazurka in G sharp minor Op. 33 no 1

- Mazurka in C major Op. 33 no 2

- Mazurka in D major Op. 33 no 3

- Mazurka in B minor Op. 33 no 4

- Polonaise in A flat major Op. 53

 

ピアノはスタインウェイ 479。

きわめて水準の高い洗練された技巧を持ち、完成度が高い。

どの瞬間ものびのびと朗らかに、かつ繊細に奏される。

ただ、地音が硬めなのと、全体に丁寧なぶん攻めの要素があまりなく凄味には欠ける(ソナタ第2、4楽章などもっとスリルが欲しい)。

 

 

4. Miyu SHINDO (Japan, 2002-04-26)

 

- Mazurka in B flat major Op. 17 no 1

- Mazurka in E minor Op. 17 no 2

- Mazurka in A flat major Op. 17 no 3

- Mazurka in A minor Op. 17 no 4

- Rondo à la Mazur in F major , Op. 5

- Piano Sonata in B minor Op. 58

 

ピアノはスタインウェイ 479。

ワルシャワの皆さんにぜひとも聴いてほしかったのは、まさにこのマズルカ、このソナタである。

ショパンコンクール in Asiaでのあの名演が(その記事はこちらこちら)、そのまま再現されている(今回少し緊張がみられるが)。

音の一つ一つが、心の内奥の哀しみを訥々と歌い上げていく。

上記の3人とは違った内省的な暗いショパンだが、こういうショパンが評価されてほしいものである。

 

 

5. Kyohei SORITA (Japan, 1994-09-01)

 

- Mazurka in B major Op. 56 no 1

- Mazurka in C major Op. 56 no 2

- Mazurka in C minor Op. 56 no 3

- Sonata in B flat minor Op. 35

- Boże, coś Polskę (harmonization of the old version of the song for piano), Op. posth.

- Polonaise in A flat major Op. 53

 

ピアノはスタインウェイ 479。

まさに王者の風格。

ダイナミズムといいロマンティシズムといい、これだけハイレベルな面々の中にあってなお他を引き離す、圧倒的な存在感を誇る。

完成度の高さも随一。

最も優勝に近い人物、と言っても決して言い過ぎではないだろう。

 

 

6. Hayato SUMINO (Japan, 1995-07-14)

 

- Mazurka in G minor Op. 24 no 1

- Mazurka in C major Op. 24 no 2

- Mazurka in A flat major Op. 24 no 3

- Mazurka in B flat minor Op. 24 no 4

- Polonaise-Fantasy in A flat major Op. 61

- Sonata in B flat minor Op. 35

- Scherzo in C sharp minor Op. 39

 

ピアノはスタインウェイ 300。

あれほどすごかった反田恭平の直後に聴いても決して色褪せない、輝かしい音と技巧を持つ(反田恭平の音を七色の光だとすると、角野隼斗の音は白色光の輝きといったところか)。

重複曲のソナタで比べても、魔王のような反田恭平の演奏とはまた違った、まっすぐな推進力を持つ演奏で、充実度は一歩も譲らない。

 

 

7. Andrzej WIERCIŃSKI (Poland, 1995-11-21)

 

- Mazurka in G minor Op. 24 no 1

- Mazurka in C major Op. 24 no 2

- Mazurka in A flat major Op. 24 no 3

- Mazurka in B flat minor Op. 24 no 4

- Scherzo in E major Op. 54

- Piano Sonata in B minor Op. 58

 

ピアノはスタインウェイ 300。

マズルカ、先ほどの角野隼斗の同曲演奏も良かったが、こちらを聴くと「これぞポーランド!」と感じる。

ただ、スケルツォやソナタ第2、4楽章のような急速な曲では、タッチのキレや正確性に欠ける。

 

 

8. Piotr ALEXEWICZ (Poland, 2000-04-09)

 

- Mazurka in G minor Op. 24 no 1

- Mazurka in C major Op. 24 no 2

- Mazurka in A flat major Op. 24 no 3

- Mazurka in B flat minor Op. 24 no 4

- 24 Preludes Op. 28

 

ピアノはスタインウェイ 479。

こちらはよりくっきりとした明瞭度の高い音づくりが特徴で、ポーランドの味という点で劣らない。

ただ、前奏曲などこじんまりと素朴な感じで、ショパンの革新や詩情は影を潜めている(それには第3日の小林愛実を待たねばならない)。

 

 

 

 

 

そんなわけで、第1日の演奏者のうち、私がファイナルに進んでほしいと思うのは

 

4. Miyu SHINDO (Japan, 2002-04-26)

5. Kyohei SORITA (Japan, 1994-09-01)

6. Hayato SUMINO (Japan, 1995-07-14)

 

あたりである。

次点で、

 

1. Szymon NEHRING (Poland, 1995-09-29)

2. Kamil PACHOLEC (Poland, 1998-11-11)

3. Hao RAO (China, 2004-02-04)

7. Andrzej WIERCIŃSKI (Poland, 1995-11-21)

8. Piotr ALEXEWICZ (Poland, 2000-04-09)

 

あたりか。

ポーランドの4人の実力者と中国の若き俊英を差し置いて日本人3人を選んでしまったが、これが決して贔屓目によるものだけではないと信じたい。

 

 

次回(10月15日)は3次予選の第2日。

 

 


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