第18回ショパン国際ピアノコンクール 2次予選 第2日 | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

ポーランドのワルシャワで開催されている、第18回ショパン国際ピアノコンクール(公式サイトはこちら)。

10月10日は、2次予選の第2日。

ネット配信を聴いた(こちらこちら)。

ちなみに、第18回ショパン国際ピアノコンクールについてのこれまでの記事はこちら。

 

第18回ショパン国際ピアノコンクール 予備予選出場者発表

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予備予選 第1日

予備予選 第2日

予備予選 第3日

予備予選 第4日

予備予選 第5日

予備予選 第6日

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予備予選 第9日

予備予選 第10日

予備予選 第11日

予備予選 第12日

1次予選 第1日

1次予選 第2日

1次予選 第3日

1次予選 第4日

1次予選 第5日

2次予選 第1日

 

 

 

 

 

以下、曲はいずれもショパン作曲である。

 

 

1. Szu-Yu SU (Chinese Taipei, 1998-03-14)

 

- Andante spianato and Grande Polonaise Brillante in E flat major Op. 22

- Waltz in A flat major Op. 34 no 1

- Mazurka in B major, Op. 63 no 1

- Mazurka in F minor, Op. 63 no 2

- Mazurka in C sharp minor, Op. 63 no 3

- Ballade in F minor Op. 52

 

ピアノはスタインウェイ 479。

ポロネーズやバラードは、ほのかなロマン性と確かな技巧とが感じられて良いが、ワルツやマズルカといった舞曲を面白く弾くタイプの人ではないため、(ワルツは必須で仕方ないにしても)マズルカはもっと他の、彼女の技巧が発揮できる曲に変えたほうが良かった気がする。

 

 

2. Hayato SUMINO (Japan, 1995-07-14)

 

- Rondo à la Mazur in F major , Op. 5

- Ballade in F major Op. 38

- Waltz in E flat major Op. 18

- Polonaise in A flat major Op. 53

 

ピアノはスタインウェイ 300。

色を付けすぎないストレートな情感表現が良く、またメカニックに優れていて、ロンドの速いパッセージやワルツの同音連打などさすが。

バラードのコーダは、彼ならもっと鮮やかに弾けそうな気もしたが(和音連打がやや苦手か、あるいはこちらの耳が贅沢になりすぎたか)。

 

 

3. Yutong SUN (China, 1995-09-28)

 

- Ballade in A flat major Op. 47

- Waltz in A flat major Op. 42

- Polonaise in F sharp minor Op. 44

- Scherzo in C sharp minor Op. 39

 

ピアノはスタインウェイ 479。

洗練された明晰な演奏。

音が硬めなのが気にはなるが、そのぶん耽美的になりすぎない。

技巧面も安定していて、ワルツやスケルツォはともに最後にスマートに畳みかける感じが良い。

 

 

4. Tomoharu USHIDA (Japan, 1999-10-16)

 

- Waltz in A flat major Op. 42

- Ballade in F minor Op. 52

- Barcarolle in F sharp major Op. 60

- Polonaise in A flat major Op. 53

 

ピアノはヤマハ CFX。

この音!

反田恭平の色彩豊かな音とは全く違った、どちらかというと単色系で、しかし透明感があって、滴るような情感を含んだ音である。

技巧も確かだが、その誇示をほとんど感じさせない。

このバラード、この舟歌、何と言ったらいいか。

反田恭平が人工美の極致、洗練を突き詰めた先に魂の表現へと達したのだとすると、牛田智大はショパンの心から発して、その追求の結果自然に技巧へとたどり着いたような、そんな印象を受ける。

最終的にこの2人に優劣をつけるというのは、可能なのだろうか。

 

 

5. Andrzej WIERCIŃSKI (Poland, 1995-11-21)

 

- Ballade in F minor Op. 52

- Variations in B flat major on a theme from Ludovic by Hérold/Halévy (Je vends des scapulaires), Op. 12

- Waltz in E flat major Op. 18

- Polonaise in A flat major Op. 53

 

ピアノはスタインウェイ 300。

音にポーランドの味があり、どの曲も「本場の華」が感じられる。

技巧面の弱さも1次ほど気にならない(欲を言うと、バラードの最後のミスや、変奏曲の音階やトリルのムラが気にはなったけれど)。

 

 

6. Yuchong WU (China, 1995-12-28)

 

- Barcarolle in F sharp major Op. 60

- Waltz in A flat major Op. 34 no 1

- Waltz in A minor, Op. 34 no 2

- Waltz in F major Op. 34 no 3

- Andante spianato and Grande Polonaise Brillante in E flat major Op. 22

 

ピアノはスタインウェイ 300。

明快で落ち着いた古典派風の演奏で、こういうショパンも悪くないし、1次で感じた技巧面での問題も今回の曲目ではあまり感じない。

ただ、このメンバーの中では地味目なのも確か。

 

 

7. Lingfei (Stephan) XIE (China, 2000-10-12)

 

- Barcarolle in F sharp major Op. 60

- Waltz in A flat major Op. 64 no 3

- Ballade in A flat major Op. 47

- Lento con gran espressione cis-moll (WN 37)

- Andante spianato and Grande Polonaise Brillante in E flat major Op. 22

 

ピアノはスタインウェイ 300。

こちらはロマン派寄りの耽美的な音楽づくりで、音が華やか(特に後半2曲)。

「アンダンテ・スピアナート~」、先ほどのYuchong WUも良かったが華やかさやロマン性の点でこちらのほうがこの曲らしいか。

技巧面でもかなり弾けるほう(ときに怪しい箇所もあるが)。

 

 

8. Zi XU (China, 1994-12-24)

 

- Nocturne in C minor Op. 48 no 1

- Ballade in F major Op. 38

- Scherzo in B flat minor Op. 31

- Waltz in A flat major Op. 34 no 1

- Polonaise in A flat major Op. 53

 

ピアノはスタインウェイ 479。

先ほどのLingfei (Stephan) XIEと音楽の方向性は近しいが、その分あの華やかな音に比し地味に感じてしまうのは否めない。

 

 

9. Piotr ALEXEWICZ (Poland, 2000-04-09)

 

- Polonaise in F sharp minor Op. 44

- Waltz in F major Op. 34 no 3

- Waltz in A flat major Op. 64 no 3

- Rondo à la Mazur in F major , Op. 5

- Ballade in F minor Op. 52

 

ピアノはスタインウェイ 479。

やはりポーランドの味がある。

ただ、上記のAndrzej WIERCIŃSKIに比し音はやや硬めでこじんまりとしている(その分くっきりとしていて、打鍵も丁寧だが)。

 

 

10. Leonora ARMELLINI (Italy, 1992-06-25)

 

- Sostenuto in E flat major (Waltz in E flat major) [WN 53]

- Waltz in A flat major Op. 34 no 1

- Ballade in A flat major Op. 47

- Ballade in F minor Op. 52

- Polonaise in A flat major Op. 53

 

ピアノはファツィオリ F278。

ファツィオリの明るくからっとした音は相変わらず活かせているが、今回は彼女のパワーと情熱を活かせる曲が少なかったかもしれない(バラードは良かったが)。

 

 

11. J J Jun Li BUI (Canada, 2004-06-10)

 

- Variations in B flat major on a theme from Ludovic by Hérold/Halévy (Je vends des scapulaires), Op. 12

- Fantasy in F minor Op. 49

- Waltz in A flat major Op. 64 no 3

- Andante spianato and Grande Polonaise Brillante in E flat major Op. 22

 

ピアノはシゲルカワイ EX。

やはりうまい。

技巧および音楽的センスを最高度の質で兼ね備えている。

「アンダンテ・スピアナート~」も、あの第1日の反田恭平の名演にさえ引けを取らないほどの出来(ポロネーズ部分の躍動感を併せると、総合的にはむしろ上とすら言っていいかも)。

これは本当に史上最年少優勝してしまうかもしれない(個性の確立した反田恭平や牛田智大が待ち受けているのでまだ分からないが)。

 

 

 

 

 

そんなわけで、第2日の演奏者のうち、私が3次予選に進んでほしいと思うのは

 

2. Hayato SUMINO (Japan, 1995-07-14)

3. Yutong SUN (China, 1995-09-28)

4. Tomoharu USHIDA (Japan, 1999-10-16)

5. Andrzej WIERCIŃSKI (Poland, 1995-11-21)

7. Lingfei (Stephan) XIE (China, 2000-10-12)

11. J J Jun Li BUI (Canada, 2004-06-10)

 

あたりである。

次点で、

 

1. Szu-Yu SU (Chinese Taipei, 1998-03-14)

6. Yuchong WU (China, 1995-12-28)

9. Piotr ALEXEWICZ (Poland, 2000-04-09)

10. Leonora ARMELLINI (Italy, 1992-06-25)

 

あたりか。

今回も聴きごたえがありすぎて、うかつに聴き飛ばせず、疲れを感じるほど。

 

 

次回(10月11日)は2次予選の第3日。

 

 


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