第18回ショパン国際ピアノコンクール 1次予選 第4日 | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

ポーランドのワルシャワで開催されている、第18回ショパン国際ピアノコンクール(公式サイトはこちら)。

10月6日は、1次予選の第4日。

ネット配信を聴いた(こちらこちら)。

ちなみに、第18回ショパン国際ピアノコンクールについてのこれまでの記事はこちら。

 

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予備予選 第1日

予備予選 第2日

予備予選 第3日

予備予選 第4日

予備予選 第5日

予備予選 第6日

予備予選 第7日

予備予選 第8日

予備予選 第9日

予備予選 第10日

予備予選 第11日

予備予選 第12日

1次予選 第1日

1次予選 第2日

1次予選 第3日

 

 

 

 

 

以下、曲はいずれもショパン作曲である。

 

 

1. Aleksandra Hortensja DĄBEK (Poland, 1996-10-01)

 

- Nocturne in C sharp minor Op. 27 no 1

- Etude in C major Op. 10 no 7

- Etude in G flat major Op. 10 no 5

- Ballade in A flat major Op. 47

 

ピアノはスタインウェイ 300。

東欧風のしっとりとした音が美しい。

ただ、全体的にテンポが遅めで安全運転的(丁寧に弾こうとしているのだろうけれど)、それでもエチュードではときにペダルが濁る。

 

 

2. Alberto FERRO (Italy, 1996-03-01)

 

- Nocturne in E flat major Op. 55 no 2

- Barcarolle in F sharp major Op. 60

- Etude in E flat major Op. 10 no 11

- Etude in C minor Op. 10 no 12

 

ピアノはスタインウェイ 300。

イタリアらしい明るく美しい音で、スタインウェイだがファツィオリのよう。

予備予選で感じた緻密さの欠如は、今回はop.10-11でやや感じたもののそれほど気にならず、op.10-12は思った以上に出来が良かった。

 

 

3. Yasuko FURUMI (Japan, 1998-02-05)

 

- Nocturne in C sharp minor Op. 27 no 1

- Etude in G flat major Op. 10 no 5

- Etude in A minor op. 10 no 2

- Fantasy in F minor Op. 49

 

ピアノはスタインウェイ 479。

安易に耽溺しない、ストイックな清々しいショパン。

特に、2015年の前回大会から得意とするエチュード2曲と幻想曲は(前回の動画はこちら)、相変わらず技巧的に卓越しているばかりか、エチュードop.10-5では再現部を通常の強音でなく繊細な弱音で始める遊び心、op.10-2や幻想曲では集中度の高い音楽表現を認め、この6年での成熟を余すところなく示している。

 

 

4. Alexander GADJIEV (Italy/Slovenia, 1994-12-23)

 

- Etude in C sharp minor Op. 25 no 7

- Etude in F major Op. 10 no 8

- Etude in B minor Op. 25 no 10

- Ballade in F minor Op. 52

 

ピアノはシゲルカワイ EX。

古海行子のストイックさとは違った濃いロマン性が聴かれるが、音自体の明瞭度を保っているため、じめっとせず風通しが良い。

力強くも力みのない余裕の打鍵で、技巧的にも概ね安定している。

 

 

5. Avery GAGLIANO (United States, 2001-07-16)

 

- Nocturne in D flat major Op. 27 no 2

- Etude in F major Op. 10 no 8

- Etude in E minor Op. 25 no 5

- Ballade in G minor Op. 23

 

ピアノはスタインウェイ 300。

感情表現もあるけれど、それ以上に完成度を重視した演奏。

堅実な反面、緊迫感はやや乏しいが、穴のなさという点ではなかなかのもの(そういえば、同じくマイアミのショパンコンクール入賞者である第1日のEvren OZELも同様の傾向だった)。

 

 

6. Martín GARCÍA GARCÍA (Spain, 1996-12-03)

 

- Etude in A minor Op. 25 no 4

- Etude in C sharp minor Op. 10 no 4

- Nocturne in E flat major Op. 55 no 2

- Ballade in G minor Op. 23

 

ピアノはファツィオリ F278。

ファツィオリの音色を活かした、からりとした味わいの豪快な演奏。

明るく開放的な歌が魅力だが、なだらかさに欠ける面もある。

技巧面でも緻密さはやや乏しい(op.10-4でのペダルの使い分けなど面白くはあるのだが)。

 

 

7. Eva GEVORGYAN (Russia/Armenia, 2004-04-15)

 

- Nocturne in C sharp minor Op. 27 no 1

- Etude in A minor Op. 25 no 11

- Etude in A minor Op. 25 no 4

- Scherzo in E major Op. 54

 

ピアノはスタインウェイ 479。

東欧風の美しい音を持ち、情熱的なエチュードop.25-11、活きのいいスケルツォなど、感性豊かかつ引き締まったスリリングな演奏(演奏後すぐにブラボーが飛び交った)。

技巧面でも、ミスはないではないが基礎力はかなりあるほう。

 

 

8. Jorge GONZÁLEZ BUAJASAN (Cuba, 1994-07-08)

 

- Nocturne in C minor Op. 48 no 1

- Ballade in F major Op. 38

- Etude in E minor Op. 25 no 5

- Etude in F major Op. 10 no 8

 

ピアノはヤマハ CFX。

どの曲も大きな穴はないのだが、特に緩徐部分の表現が少しのっぺりしているきらいがあり、それを補うほどの抜群の技巧だとか、何かしらの強みが欲しいところではある。

 

 

9. Joanna GORANKO (Poland, 2001-02-21)

 

- Nocturne in E major Op. 62 no 2

- Scherzo in B flat minor Op. 31

- Etude in G sharp minor Op. 25 no 6

- Etude in C minor Op. 10 no 12

 

ピアノはスタインウェイ 479。

古き佳きポーランドを思わせるような、素朴な味わいを持つ。

技巧的にも、洗練とはいわないが意外に悪くなく、エチュード2曲もテンポは遅めだがごまかしなく丁寧に弾けている。

 

 

10. Chelsea GUO (United States, 2001-01-02)

 

- Nocturne in E major Op. 62 no 2

- Etude in E minor Op. 25 no 5

- Etude in G flat major Op. 10 no 5

- Barcarolle in F sharp major Op. 60

 

ピアノはファツィオリ F278。

一つ前の人の素朴さとは対照的に、ロマン的な音や様式を持ち、こちらも良い(こちらのノクターンのほうが一般的なイメージに近いか)。

また、技巧面では少し上の印象。

 

 

11. Eric GUO (Canada, 2002-08-01)

 

- Nocturne in B major Op. 62 no 1

- Etude in A minor op. 10 no 2

- Etude in C sharp minor Op. 10 no 4

- Barcarolle in F sharp major Op. 60

 

ピアノはスタインウェイ 479。

ファツィオリではないが、音の華やぎは一つ前の人よりもやや上。

技巧面では、鮮やかとまでは言わないにしてもエチュード2曲ともよく弾けていて、予備予選のときよりも少し印象が良くなった。

 

 

12. Saaya HARA (Japan, 1999-02-17)

 

- Nocturne in D flat major Op. 27 no 2

- Etude in F major Op. 10 no 8

- Etude in G sharp minor Op. 25 no 6

- Scherzo in E major Op. 54

 

ピアノはスタインウェイ 479。

ノクターンは繊細な歌が聴かれ美しい。

エチュードとスケルツォは、丁寧だが刺激は少なめか。

op.25-6では技巧的に苦しそうな箇所もある。

 

 

13. Yifan HOU (China, 2004-04-09)

 

- Nocturne in C sharp minor Op. 27 no 1

- Etude in C sharp minor Op. 10 no 4

- Etude in E minor Op. 25 no 5

- Ballade in G minor Op. 23

 

ピアノはスタインウェイ 479。

こちらは先ほどと対照的に、急速部分の技巧は大変鮮やかだが、緩徐部分の歌いまわしはまだまだこれからといった印象。

タッチは常に重めで、打鍵の種類の引き出しがまだ少ないか。

 

 

14. Wei-Ting HSIEH (Chinese Taipei, 1996-05-07)

 

- Fantasy in F minor Op. 49

- Nocturne in C sharp minor Op. 27 no 1

- Etude in E minor Op. 25 no 5

- Etude in A minor Op. 25 no 11

 

ピアノはスタインウェイ 479。

こちらは先ほどと対照的に、軽めのタッチによる演奏。

ペダルの響きも薄めにしてあり、モーツァルトを思わせる。

技巧的にもまずまずで、こういうショパンが2次に残ってもいいかも。

 

 

15. Kaoruko IGARASHI (Japan, 1994-08-22)

 

- Nocturne in C sharp minor Op. 27 no 1

- Etude in A minor Op. 25 no 11

- Etude in A flat major Op. 10 no 10

- Scherzo in C sharp minor Op. 39

 

ピアノはスタインウェイ 479。

力のこもった演奏で、ノクターンの中間部やエチュードop.25-11、スケルツォでのベートーヴェン風の迫力が印象的。

テクニック面でも安定している。

 

 

16. Riko IMAI (Japan, 2001-07-05)

 

- Etude in C major Op. 10 no 1

- Etude in B minor Op. 25 no 10

- Nocturne in D flat major Op. 27 no 2

- Ballade in F minor Op. 52

 

ピアノはスタインウェイ 300。

力むことの多いエチュード2曲が、思いがけず優美に奏される。

ノクターン、上記の原沙綾の同曲演奏と並ぶ美しさ。

バラードも、何気ないのにきわめてロマン的で歌に満ちている。

テクニックも、彼女の音楽性が必要とするだけのものはある印象。

 

 

17. Junichi ITO (Japan, 1991-02-27)

 

- Nocturne in B major Op. 62 no 1

- Etude in G flat major Op. 10 no 5

- Etude in A flat major Op. 10 no 10

- Ballade in F major Op. 38

 

ピアノはファツィオリ F278。

派手な音ではないが、優しい音楽が聴かれる。

ただ、エチュードやバラードのコーダでは多少のミスがみられた。

 

 

 

 

 

そんなわけで、第4日の演奏者のうち、私が2次予選に進んでほしいと思うのは

 

2. Alberto FERRO (Italy, 1996-03-01)

3. Yasuko FURUMI (Japan, 1998-02-05)

4. Alexander GADJIEV (Italy/Slovenia, 1994-12-23)

5. Avery GAGLIANO (United States, 2001-07-16)

7. Eva GEVORGYAN (Russia/Armenia, 2004-04-15)

9. Joanna GORANKO (Poland, 2001-02-21)

10. Chelsea GUO (United States, 2001-01-02)

11. Eric GUO (Canada, 2002-08-01)

14. Wei-Ting HSIEH (Chinese Taipei, 1996-05-07)

15. Kaoruko IGARASHI (Japan, 1994-08-22)

16. Riko IMAI (Japan, 2001-07-05)

 

あたりである。

次点で、

 

1. Aleksandra Hortensja DĄBEK (Poland, 1996-10-01)

6. Martín GARCÍA GARCÍA (Spain, 1996-12-03)

8. Jorge GONZÁLEZ BUAJASAN (Cuba, 1994-07-08)

17. Junichi ITO (Japan, 1991-02-27)

 

あたりか。

またもや、ほとんど絞り込めずに終わった。

 

 

次回(10月7日)は1次予選の第5日。

1次予選の最終日である。

 

 


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