ポーランドのワルシャワで開催されている、第18回ショパン国際ピアノコンクール(公式サイトはこちら)。
10月6日は、1次予選の第4日。
ちなみに、第18回ショパン国際ピアノコンクールについてのこれまでの記事はこちら。
(第18回ショパン国際ピアノコンクール 予備予選出場者発表)
(第18回ショパン国際ピアノコンクールの予備予選が4月から9月へと延期)
(第18回ショパン国際ピアノコンクール 予備予選免除の出場者発表)
(第18回ショパン国際ピアノコンクールの予備予選が2021年4月から2021年7月へと延期)
以下、曲はいずれもショパン作曲である。
1. Aleksandra Hortensja DĄBEK (Poland, 1996-10-01)
- Nocturne in C sharp minor Op. 27 no 1
- Etude in C major Op. 10 no 7
- Etude in G flat major Op. 10 no 5
- Ballade in A flat major Op. 47
ピアノはスタインウェイ 300。
東欧風のしっとりとした音が美しい。
ただ、全体的にテンポが遅めで安全運転的(丁寧に弾こうとしているのだろうけれど)、それでもエチュードではときにペダルが濁る。
2. Alberto FERRO (Italy, 1996-03-01)
- Nocturne in E flat major Op. 55 no 2
- Barcarolle in F sharp major Op. 60
- Etude in E flat major Op. 10 no 11
- Etude in C minor Op. 10 no 12
ピアノはスタインウェイ 300。
イタリアらしい明るく美しい音で、スタインウェイだがファツィオリのよう。
予備予選で感じた緻密さの欠如は、今回はop.10-11でやや感じたもののそれほど気にならず、op.10-12は思った以上に出来が良かった。
3. Yasuko FURUMI (Japan, 1998-02-05)
- Nocturne in C sharp minor Op. 27 no 1
- Etude in G flat major Op. 10 no 5
- Etude in A minor op. 10 no 2
- Fantasy in F minor Op. 49
ピアノはスタインウェイ 479。
安易に耽溺しない、ストイックな清々しいショパン。
特に、2015年の前回大会から得意とするエチュード2曲と幻想曲は(前回の動画はこちら)、相変わらず技巧的に卓越しているばかりか、エチュードop.10-5では再現部を通常の強音でなく繊細な弱音で始める遊び心、op.10-2や幻想曲では集中度の高い音楽表現を認め、この6年での成熟を余すところなく示している。
4. Alexander GADJIEV (Italy/Slovenia, 1994-12-23)
- Etude in C sharp minor Op. 25 no 7
- Etude in F major Op. 10 no 8
- Etude in B minor Op. 25 no 10
- Ballade in F minor Op. 52
ピアノはシゲルカワイ EX。
古海行子のストイックさとは違った濃いロマン性が聴かれるが、音自体の明瞭度を保っているため、じめっとせず風通しが良い。
力強くも力みのない余裕の打鍵で、技巧的にも概ね安定している。
5. Avery GAGLIANO (United States, 2001-07-16)
- Nocturne in D flat major Op. 27 no 2
- Etude in F major Op. 10 no 8
- Etude in E minor Op. 25 no 5
- Ballade in G minor Op. 23
ピアノはスタインウェイ 300。
感情表現もあるけれど、それ以上に完成度を重視した演奏。
堅実な反面、緊迫感はやや乏しいが、穴のなさという点ではなかなかのもの(そういえば、同じくマイアミのショパンコンクール入賞者である第1日のEvren OZELも同様の傾向だった)。
6. Martín GARCÍA GARCÍA (Spain, 1996-12-03)
- Etude in A minor Op. 25 no 4
- Etude in C sharp minor Op. 10 no 4
- Nocturne in E flat major Op. 55 no 2
- Ballade in G minor Op. 23
ピアノはファツィオリ F278。
ファツィオリの音色を活かした、からりとした味わいの豪快な演奏。
明るく開放的な歌が魅力だが、なだらかさに欠ける面もある。
技巧面でも緻密さはやや乏しい(op.10-4でのペダルの使い分けなど面白くはあるのだが)。
7. Eva GEVORGYAN (Russia/Armenia, 2004-04-15)
- Nocturne in C sharp minor Op. 27 no 1
- Etude in A minor Op. 25 no 11
- Etude in A minor Op. 25 no 4
- Scherzo in E major Op. 54
ピアノはスタインウェイ 479。
東欧風の美しい音を持ち、情熱的なエチュードop.25-11、活きのいいスケルツォなど、感性豊かかつ引き締まったスリリングな演奏(演奏後すぐにブラボーが飛び交った)。
技巧面でも、ミスはないではないが基礎力はかなりあるほう。
8. Jorge GONZÁLEZ BUAJASAN (Cuba, 1994-07-08)
- Nocturne in C minor Op. 48 no 1
- Ballade in F major Op. 38
- Etude in E minor Op. 25 no 5
- Etude in F major Op. 10 no 8
ピアノはヤマハ CFX。
どの曲も大きな穴はないのだが、特に緩徐部分の表現が少しのっぺりしているきらいがあり、それを補うほどの抜群の技巧だとか、何かしらの強みが欲しいところではある。
9. Joanna GORANKO (Poland, 2001-02-21)
- Nocturne in E major Op. 62 no 2
- Scherzo in B flat minor Op. 31
- Etude in G sharp minor Op. 25 no 6
- Etude in C minor Op. 10 no 12
ピアノはスタインウェイ 479。
古き佳きポーランドを思わせるような、素朴な味わいを持つ。
技巧的にも、洗練とはいわないが意外に悪くなく、エチュード2曲もテンポは遅めだがごまかしなく丁寧に弾けている。
10. Chelsea GUO (United States, 2001-01-02)
- Nocturne in E major Op. 62 no 2
- Etude in E minor Op. 25 no 5
- Etude in G flat major Op. 10 no 5
- Barcarolle in F sharp major Op. 60
ピアノはファツィオリ F278。
一つ前の人の素朴さとは対照的に、ロマン的な音や様式を持ち、こちらも良い(こちらのノクターンのほうが一般的なイメージに近いか)。
また、技巧面では少し上の印象。
11. Eric GUO (Canada, 2002-08-01)
- Nocturne in B major Op. 62 no 1
- Etude in A minor op. 10 no 2
- Etude in C sharp minor Op. 10 no 4
- Barcarolle in F sharp major Op. 60
ピアノはスタインウェイ 479。
ファツィオリではないが、音の華やぎは一つ前の人よりもやや上。
技巧面では、鮮やかとまでは言わないにしてもエチュード2曲ともよく弾けていて、予備予選のときよりも少し印象が良くなった。
12. Saaya HARA (Japan, 1999-02-17)
- Nocturne in D flat major Op. 27 no 2
- Etude in F major Op. 10 no 8
- Etude in G sharp minor Op. 25 no 6
- Scherzo in E major Op. 54
ピアノはスタインウェイ 479。
ノクターンは繊細な歌が聴かれ美しい。
エチュードとスケルツォは、丁寧だが刺激は少なめか。
op.25-6では技巧的に苦しそうな箇所もある。
13. Yifan HOU (China, 2004-04-09)
- Nocturne in C sharp minor Op. 27 no 1
- Etude in C sharp minor Op. 10 no 4
- Etude in E minor Op. 25 no 5
- Ballade in G minor Op. 23
ピアノはスタインウェイ 479。
こちらは先ほどと対照的に、急速部分の技巧は大変鮮やかだが、緩徐部分の歌いまわしはまだまだこれからといった印象。
タッチは常に重めで、打鍵の種類の引き出しがまだ少ないか。
14. Wei-Ting HSIEH (Chinese Taipei, 1996-05-07)
- Fantasy in F minor Op. 49
- Nocturne in C sharp minor Op. 27 no 1
- Etude in E minor Op. 25 no 5
- Etude in A minor Op. 25 no 11
ピアノはスタインウェイ 479。
こちらは先ほどと対照的に、軽めのタッチによる演奏。
ペダルの響きも薄めにしてあり、モーツァルトを思わせる。
技巧的にもまずまずで、こういうショパンが2次に残ってもいいかも。
15. Kaoruko IGARASHI (Japan, 1994-08-22)
- Nocturne in C sharp minor Op. 27 no 1
- Etude in A minor Op. 25 no 11
- Etude in A flat major Op. 10 no 10
- Scherzo in C sharp minor Op. 39
ピアノはスタインウェイ 479。
力のこもった演奏で、ノクターンの中間部やエチュードop.25-11、スケルツォでのベートーヴェン風の迫力が印象的。
テクニック面でも安定している。
16. Riko IMAI (Japan, 2001-07-05)
- Etude in C major Op. 10 no 1
- Etude in B minor Op. 25 no 10
- Nocturne in D flat major Op. 27 no 2
- Ballade in F minor Op. 52
ピアノはスタインウェイ 300。
力むことの多いエチュード2曲が、思いがけず優美に奏される。
ノクターン、上記の原沙綾の同曲演奏と並ぶ美しさ。
バラードも、何気ないのにきわめてロマン的で歌に満ちている。
テクニックも、彼女の音楽性が必要とするだけのものはある印象。
17. Junichi ITO (Japan, 1991-02-27)
- Nocturne in B major Op. 62 no 1
- Etude in G flat major Op. 10 no 5
- Etude in A flat major Op. 10 no 10
- Ballade in F major Op. 38
ピアノはファツィオリ F278。
派手な音ではないが、優しい音楽が聴かれる。
ただ、エチュードやバラードのコーダでは多少のミスがみられた。
そんなわけで、第4日の演奏者のうち、私が2次予選に進んでほしいと思うのは
2. Alberto FERRO (Italy, 1996-03-01)
3. Yasuko FURUMI (Japan, 1998-02-05)
4. Alexander GADJIEV (Italy/Slovenia, 1994-12-23)
5. Avery GAGLIANO (United States, 2001-07-16)
7. Eva GEVORGYAN (Russia/Armenia, 2004-04-15)
9. Joanna GORANKO (Poland, 2001-02-21)
10. Chelsea GUO (United States, 2001-01-02)
11. Eric GUO (Canada, 2002-08-01)
14. Wei-Ting HSIEH (Chinese Taipei, 1996-05-07)
15. Kaoruko IGARASHI (Japan, 1994-08-22)
16. Riko IMAI (Japan, 2001-07-05)
あたりである。
次点で、
1. Aleksandra Hortensja DĄBEK (Poland, 1996-10-01)
6. Martín GARCÍA GARCÍA (Spain, 1996-12-03)
8. Jorge GONZÁLEZ BUAJASAN (Cuba, 1994-07-08)
17. Junichi ITO (Japan, 1991-02-27)
あたりか。
またもや、ほとんど絞り込めずに終わった。
次回(10月7日)は1次予選の第5日。
1次予選の最終日である。
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