第18回ショパン国際ピアノコンクール 予備予選 第10日 | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

ポーランドのワルシャワで開催されている、第18回ショパン国際ピアノコンクール(公式サイトはこちら)。

7月21日は、予備予選の第10日。

ネット配信を聴いた(こちらこちら)。

ちなみに、第18回ショパン国際ピアノコンクールについてのこれまでの記事はこちら。

 

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予備予選 第1日

予備予選 第2日

予備予選 第3日

予備予選 第4日

予備予選 第5日

予備予選 第6日

予備予選 第7日

予備予選 第8日

予備予選 第9日

 

 

 

 

 

以下、曲はいずれもショパン作曲である。

 

 

1. Chao WANG (China, 1990-01-16)

 

- Nocturne in C sharp minor Op. 27 no 1

- Mazurka in E minor Op. 41 no 1

- Mazurka in A flat major Op. 41 no 3

- Etude in G sharp minor Op. 25 no 6

- Etude in G flat major Op. 10 no 5

- Ballade in G minor Op. 23

 

ピアノはヤマハ。

まとまりのよい演奏だが、音が硬めで、音色の魅力にやや乏しい。

技巧的にはなかなかだが(特にop.10-5が鮮やか)、op.25-6は弾きにくそうで、別の曲にしたほうが良かったか。

 

 

2. Liya WANG (China, 2001-12-10)

 

- Nocturne in B major Op. 62 no 1

- Etude in C major Op. 10 no 7

- Etude in F major Op. 10 no 8

- Mazurka in A flat major Op. 17 no 3

- Mazurka in A minor Op. 17 no 4

- Fantasy in F minor Op. 49

 

ピアノはスタインウェイ。

かなりのテクニシャンで、切れ味抜群。

エチュード2曲は、第2日の古海行子の完全無欠の同曲演奏にも劣らない出来(自然体な古海行子に対し、より鋭角的な演奏)。

音そのものはやや硬めだが、耽美的かつ情熱的な表現力、そして緻密な完成度の高さでそれを補っている。

優勝候補の一人と言っていいかも。

 

 

3. Yijia WANG (China, 1995-09-05)

 

- Etude in G sharp minor Op. 25 no 6

- Etude in C sharp minor Op. 10 no 4

- Nocturne in B major Op. 62 no 1

- Mazurka in A minor Op. 59 no 1

- Mazurka in A flat major Op. 59 no 2

- Ballade in G minor Op. 23

 

ピアノはスタインウェイ。

悪い演奏ではないが、歌わせ方が少しぶっきらぼうなことがある。

テクニック面でも、エチュード2曲ともタッチにムラがある。

音色も地味目であり、これといった強みに欠ける印象。

 

 

4. Zitong WANG (China, 1999-02-03)

 

- Nocturne in C sharp minor Op. 27 no 1

- Mazurka in B minor Op. 30 no 2

- Mazurka in C sharp minor Op. 30 no 4

- Etude in G flat major Op. 10 no 5

- Etude in G sharp minor Op. 25 no 6

- Fantasy in F minor Op. 49

 

ピアノはスタインウェイ。

表現力に優れ、繊細かつ瞑想的な歌を持つ(ケイト・リウに近いか)。

散々聴いたノクターンやマズルカも特別に聴かせるし、個人的に苦手な幻想曲の序奏はこの演奏で初めて魅力が分かった気がする。

テクニックは最高クラスとは言わないにしても水準以上はあり、特にありそうでなかったop.25-6の最弱音の幻想的な解釈と指捌きは見事。

彼女もまた上位に進みそう。

 

 

5. Zijian WEI (China, 1998-04-27)

 

- Etude in G flat major Op. 10 no 5

- Etude in A flat major Op. 10 no 10

- Mazurka in A flat major Op. 50 no 2

- Mazurka in C sharp minor Op. 50 no 3

- Nocturne in B major Op. 62 no 1

- Ballade in F minor Op. 52

 

ピアノはスタインウェイ。

エチュード2曲は音楽の流れが重い。

バラードのコーダではその重さが迫力につながってはいるものの、その分ペダルが濁りがちであるなど、総合的にはいまいち。

 

 

6. Jacek WENDLER (Poland, 1995-07-27)

 

- Nocturne in D flat major Op. 27 no 2

- Mazurka in G minor Op. 24 no 1

- Mazurka in C major Op. 24 no 2

- Etude in C minor Op. 10 no 12

- Etude in G sharp minor Op. 25 no 6

- Ballade in G minor Op. 23

 

ピアノはスタインウェイ。

オーソドックスな解釈で、さらりとしながらも歌があって良い。

ただ、op.10-12あたりまでは良かったのだが、op.25-6とバラードは技巧的におぼつかず、後味の悪い印象になってしまった。

 

 

7. Marcin WIECZOREK (Poland, 1996-07-12)

 

- Ballade in G minor Op. 23

- Etude in C minor Op. 10 no 12

- Etude in E minor Op. 25 no 5

- Nocturne in E major Op. 62 no 2

- Mazurka in B major Op. 56 no 1

- Mazurka in C major Op. 56 no 2

 

ピアノはスタインウェイ。

勢いがあって良いのだが、ときにタッチの粗さがみられ(ミスというよりは凸凹する感じ)、繊細さに欠ける。

ただ、マズルカ2曲は野趣があってなかなか悪くない。

 

 

8. Riko IMAI (Japan, 2001-07-05)

 

- Nocturne in D flat major Op. 27 no 2

- Etude in C minor Op. 10 no 12

- Etude in E minor Op. 25 no 5

- Mazurka in D major Op. 33 no 3

- Mazurka in B minor Op. 33 no 4

- Ballade in F minor Op. 52

 

ピアノはスタインウェイ。

これぞショパンというべき夢見るような美音、ロマンティックな歌に満ちており、特にノクターンは理想的名演と言っていいかも。

テクがあるほうとは言えないが、ショパンにふさわしい音と表現とでそれを十分にカバーしている印象。

 

 

9. Sze Yuen WONG (China, Hong Kong, 1997-09-21)

 

- Nocturne in E flat major Op. 55 no 2

- Etude in B minor Op. 25 no 10

- Etude in A minor Op. 25 no 11

- Mazurka in G minor Op. 24 no 1

- Mazurka in C major Op. 24 no 2

- Ballade in F minor Op. 52

 

ピアノはスタインウェイ。

こちらも良い音だが、先ほどの今井理子と比べると硬い(特に強音)。

テクニック面も、悪くはないのだがエチュードop.25-11など流れがやや重く(付点リズムも鈍い)、強みにまではなっていない印象。

 

 

10. Victoria WONG (Canada, 1997-02-15)

 

- Nocturne in C sharp minor Op. 27 no 1

- Etude in E minor Op. 25 no 5

- Etude in F major Op. 10 no 8

- Mazurka in C minor Op. 30 no 1

- Mazurka in C sharp minor Op. 30 no 4

- Fantasy in F minor Op. 49

 

ピアノはヤマハ。

まとまりはよく、繊細さもあるが、全体的に音色・表現ともにこじんまりしている印象。

もう少し何か強めの主張があると良かったか。

 

 

11. Maciej WOTA (Poland, 1992-12-05)

 

- Fantasy in F minor Op. 49

- Nocturne in C sharp minor Op. 27 no 1

- Etude in G flat major Op. 10 no 5

- Etude in A flat major Op. 10 no 10

- Mazurka in B minor Op. 30 no 2

- Mazurka in D flat major Op. 30 no 3

 

ピアノはヤマハ。

全体的に音楽の流れが重く、また特に速いパッセージで余裕がなくなり歌が失われやすい(幻想曲やop.10-5など)。

op.10-10では、スタッカートになる箇所でもたついてしまっている。

 

 

12. Maiqi WU (China, 2003-10-20)

 

- Nocturne in B major Op. 62 no 1

- Mazurka in G sharp minor Op. 33 no 1

- Mazurka in B minor Op. 33 no 4

- Etude in F major Op. 10 no 8

- Etude in A minor Op. 25 no 4

- Ballade in F minor Op. 52

 

ピアノはヤマハ。

テクニックが優れており、エチュード2曲やバラードのコーダはなかなかの出来だが、音の魅力は乏しく(細身で硬い)、また表現もやや生硬。

 

 

13. Yuchong WU (China, 1995-12-28)

 

- Nocturne in E flat major Op. 55 no 2

- Etude in E flat major Op. 10 no 11

- Etude in F major Op. 10 no 8

- Mazurka in D flat major Op. 30 no 3

- Mazurka in C sharp minor Op. 30 no 4

- Ballade in F minor Op. 52

 

ピアノはスタインウェイ。

ロマンティックなのとは違った明快なショパンで、こういうのも面白い。

テクニック的にもしっかりしており、エチュード2曲やバラードも無理なく弾けている。

 

 

 

 

 

そんなわけで、第10日の演奏者のうち、私が1次予選に進んでほしいと思うのは

 

2. Liya WANG (China, 2001-12-10)

4. Zitong WANG (China, 1999-02-03)

8. Riko IMAI (Japan, 2001-07-05)

13. Yuchong WU (China, 1995-12-28)

 

あたりである。

次点で、

 

1. Chao WANG (China, 1990-01-16)

9. Sze Yuen WONG (China, Hong Kong, 1997-09-21)

10. Victoria WONG (Canada, 1997-02-15)

12. Maiqi WU (China, 2003-10-20)

 

あたりか。

この日は良いと思う人が比較的少なかったが、その代わり、中国ピアノ界に超一級の才能が現れてきていることを知った。

 

 

次回(7月22日)は予備予選の第11日。

 

 


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