ポーランドのワルシャワで開催されている、第18回ショパン国際ピアノコンクール(公式サイトはこちら)。
10月9日は、2次予選の第1日。
ちなみに、第18回ショパン国際ピアノコンクールについてのこれまでの記事はこちら。
(第18回ショパン国際ピアノコンクール 予備予選出場者発表)
(第18回ショパン国際ピアノコンクールの予備予選が4月から9月へと延期)
(第18回ショパン国際ピアノコンクール 予備予選免除の出場者発表)
(第18回ショパン国際ピアノコンクールの予備予選が2021年4月から2021年7月へと延期)
以下、曲はいずれもショパン作曲である。
1. Arsenii MUN (Russia, 1999-03-15)
- Rondo à la Mazur in F major , Op. 5
- Waltz in E flat major Op. 18
- Scherzo in B minor Op. 20
- Andante spianato and Grande Polonaise Brillante in E flat major Op. 22
ピアノはヤマハ CFX。
ロシア風の力強く激しい音を持ち、迫力がある。
技巧面も弱いわけではないが、洗練されたタッチとは言い難い。
2. Szymon NEHRING (Poland, 1995-09-29)
- Impromptu in G flat major, Op. 51
- Polonaise-Fantasy in A flat major op. 61
- Waltz in A flat major Op. 64 no 3
- Andante spianato and Grande Polonaise Brillante in E flat major Op. 22
ピアノはスタインウェイ 479。
ポーランド風の素朴で温かみのある音を持つ。
技巧面でも一定以上の洗練がみられる。
3. Việt Trung NGUYỄN (Vietnam/Poland, 1996-09-30)
- Prelude in F sharp major Op. 28 no 13
- Barcarolle in F sharp major Op. 60
- Waltz in F major Op. 34 no 3
- Nocturne in C minor Op. 48 no 1
- Polonaise in A flat major Op. 53
ピアノはスタインウェイ 479。
こちらも温かみのある音(ネーリングよりは地味かもしれないが)。
技巧面の弱さは1次ほどには気にならないが、英雄ポロネーズの序奏と中間部の足取りがやや重いのが難点。
4. Georgijs OSOKINS (Latvia, 1995-04-25)
- Polonaise-Fantasy in A flat major Op. 61
- Polonaise in B flat major, Op. 71 No. 2
- Mazurka in C sharp minor Op. 30 no 4
- Mazurka in C sharp minor Op. 50 no 3
- Waltz in F major Op. 34 no 3
- Polonaise in A flat major Op. 53
ピアノはヤマハ CFX。
いつものオソキンス・ワールド。
個性的で面白いが、技巧面が弱いのと、突然出す強音がきついというか、あまり美しくないことがあるのが気になる。
5. Evren OZEL (United States, 1999-01-30)
- Impromptu in A flat major, Op. 29
- Polonaise in F sharp minor Op. 44
- Waltz in A flat major Op. 34 no 1
- Impromptu in F sharp major, Op. 36
- Ballade in F minor Op. 52
ピアノはスタインウェイ 479。
どの曲も大きな穴なく弾けていて、何が駄目というわけではないのだが、表現が薄味であり、そのぶん他を引き離すほどの技巧をみせるわけでもなく無理しないタイプなので、存在感は薄くなりがちか。
6. Kamil PACHOLEC (Poland, 1998-11-11)
- Polonaise in F sharp minor Op. 44
- Impromptu in F sharp major, Op. 36
- Waltz in F major Op. 34 no 3
- Waltz in C sharp minor, Op. 64 no 2
- Waltz in D flat major, Op. 64 no 1
- Scherzo in B flat minor Op. 31
ピアノはスタインウェイ 479。
ポーランド風の素朴で温かみのある明るい音。
ワルツop.64-2でのマズルカ風リズムも味がある。
技巧面の弱さは、1次のエチュードほどには気にならなかった。
7. Hao RAO (China, 2004-02-04)
- Ballade in A flat major Op. 47
- Waltz in A flat major Op. 34 no 1
- Barcarolle in F sharp major Op. 60
- Andante spianato and Grande Polonaise Brillante in E flat major Op. 22
ピアノはスタインウェイ 479。
洗練された技巧に基づく、耽美的かつ明快な演奏。
1次同様、部分的に安全運転風のテンポを採ることがあって(例えばポロネーズの中間部に入っていく箇所など)、やや物足りなさもあるが、そのぶん表現が丁寧で完成度としては高くなっているのも確か。
8. Sohgo SAWADA (Japan, 1998-11-09)
- Andante spianato and Grande Polonaise Brillante in E flat major Op. 22
- Waltz in F major Op. 34 no 3
- Barcarolle in F sharp major Op. 60
- Scherzo in B flat minor Op. 31
ピアノはシゲルカワイ EX。
丁寧に、繊細に仕上げられているが、細身の硬質な音による彼の求心的な音楽性は、どちらかというとシリアスな曲と相性がよく、今回の曲目に求められる華やかさとは少し性質が異なるかもしれない。
9. Aristo SHAM (China, Hong Kong, 1996-03-12)
- Barcarolle in F sharp major Op. 60
- Scherzo in B flat minor Op. 31
- Waltz in A flat major Op. 42
- Andante spianato and Grande Polonaise Brillante in E flat major Op. 22
ピアノはスタインウェイ 300。
ヴィルトゥオーゾ的な華やかさがある。
ショパン風というよりはリスト風の演奏だが、これはこれで面白いし、特に今回のような曲目には合っている。
10. Miyu SHINDO (Japan, 2002-04-26)
- Ballade in G minor Op. 23
- Andante spianato and Grande Polonaise Brillante in E flat major Op. 22
- Waltz in A flat major Op. 42
- Barcarolle in F sharp major Op. 60
ピアノはスタインウェイ 479。
バラード、入魂の演奏で、ただならぬ雰囲気がよく出ている。
技巧も確かで、また強音でも音がきつくならず美しい。
ただ、続くポロネーズやワルツも入魂となっているが、これらは本来サロン風の明るく軽快な曲と思われ、どう評価されるか。
3次で彼女のソナタをぜひワルシャワの皆さんに聴いてほしいのだが。
11. Talon SMITH (United States, 2002-02-14)
- Barcarolle in F sharp major Op. 60
- Berceuse in D flat major, Op. 57
- Waltz in A flat major Op. 64 no 3
- Andante spianato and Grande Polonaise Brillante in E flat major Op. 22
ピアノはスタインウェイ 300。
彼のみずみずしい澄んだ音がよく活きる選曲(彼は自分の強みがよく分かっていそう)。
子守歌やアンダンテ・スピアナートの清澄な美しさは比類なく、特に前者は(あまり奏されないのもあり)これまでに聴いた最高の演奏かも。
12. Kyohei SORITA (Japan, 1994-09-01)
- Waltz in F major Op. 34 no 3
- Rondo à la Mazur in F major , Op. 5
- Ballade in F major Op. 38
- Andante spianato and Grande Polonaise Brillante in E flat major Op. 22
ピアノはスタインウェイ 479。
別格の貫禄。
洗練されたタッチ、内声まで歌う細かな工夫、そして溢れる色彩感。
予備予選で弾いたバラードも相変わらずすごい(嵐の部分であまりの迫力に驚いたのか音響技師があからさまに音量レベルを調節するので、こちらで少し音量を戻さなければならないほど)。
そして先日実演で感銘を受けたアンダンテ・スピアナート(その記事はこちら)、これは先ほどのTalon SMITHの清澄さも捨てがたいが、人工美の極致ともいうべき反田恭平の精妙さに軍配を上げたくなる。
ポロネーズ部分はもう少し速い方が好みだが、力感は十分。
そんなわけで、第1日の演奏者のうち、私が3次予選に進んでほしいと思うのは
2. Szymon NEHRING (Poland, 1995-09-29)
6. Kamil PACHOLEC (Poland, 1998-11-11)
7. Hao RAO (China, 2004-02-04)
9. Aristo SHAM (China, Hong Kong, 1996-03-12)
10. Miyu SHINDO (Japan, 2002-04-26)
11. Talon SMITH (United States, 2002-02-14)
12. Kyohei SORITA (Japan, 1994-09-01)
あたりである。
次点で、
5. Evren OZEL (United States, 1999-01-30)
8. Sohgo SAWADA (Japan, 1998-11-09)
あたりか。
最後に全部持っていった感のある反田恭平は別にして、後は誰を選ぶべきか、かなり絞ったつもりでもつい多く選びすぎてしまう。
次回(10月10日)は2次予選の第2日。
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