反田恭平 兵庫公演 ショパン アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ ほか | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

反田恭平 ピアノ・リサイタル 2021

 

【日時】

2021年8月9日(月祝) 開演 18:00 (開場 17:15)

 

【会場】

兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール

 

【演奏】

ピアノ:反田恭平

 

【プログラム】

ショパン:ノクターン 第17番 ロ長調 op.62-1

ショパン:ワルツ 第4番 ヘ長調 op.34-3

ショパン:マズルカ風ロンド ヘ長調 op.5

ショパン:バラード 第2番 ヘ長調 op.38

ショパン:アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ op.22

ショパン:マズルカ op.56

ショパン:ピアノ・ソナタ 第2番 変ロ短調 「葬送」 op.35

 

※アンコール

ショパン:ラルゴ 変ホ長調 (遺作)

ショパン:英雄ポロネーズ

 

 

 

 

 

反田恭平のオール・ショパン・プログラムを聴きに行った。

兵庫だけで1日2回も公演があり、それも大ホールなのに、会場はほぼ満席。

すさまじい人気ぶりである。

 

 

その人気のため、かなり後ろの方の席しか取れず、せっかくの実演なのに音が遠くてあまり満足には聴こえてこなかった。

それでも、先日のショパンコンクール予備予選の配信を聴いて大きな感銘を受けたノクターン第17番やバラード第2番は今回もそのすごさの片鱗が伝わってきたし(その記事はこちら)、他の曲も素晴らしかった。

 

 

以前に一度彼の実演を聴いた際には(その記事はこちら)、弱音の美しさに感銘を受けた反面、強音がときに硬く感じたのと、テンポの変化が気まぐれのように感じた覚えがある。

しかし今回は、弱音の美しさはもちろんのこと、強音は力強いが硬くはなく、またテンポ変化もかなり練られていて、個性的でありながらも普遍性をも併せ持つような、彼の「本気」を感じた。

 

 

特に、「アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ」。

この曲は、2010年のユンディ・リの颯爽とした実演に感銘を受け(その記事はこちら、記録のみ)、同年のショパンコンクール配信でクレア・フアンチのみずみずしい演奏にいっそう感動し(動画)、それを2017年の彼女の実演で再確認した後(その記事はこちら)、今年1月にそれをさらに上回らんばかりの小林愛実の蠱惑的な実演を聴いた(その記事はこちら)、という経緯がある。

 

 

そんな贅沢な体験をしてきた上での今回の反田恭平の演奏は、これらの名演を凌駕するといっても過言でないものだった。

特に前半の「アンダンテ・スピアナート」は、私のいる後方の席までなぜかしっかり音が届き、その美しさは信じがたいほど。

彼の「歌」は底抜けに明るく輝かしく、しかし盤石な古典的安定よりはむしろはかり知れない繊細さ、脆さ、傷つきやすさを湛えていて、聴き手は知らず知らず涙を誘われる。

その天才的なロマン性に、私はホロヴィッツの弾くスカルラッティのソナタK.380、それも晩年のものではなく、脂の乗り切った壮年期の偉大なる“明るくも哀しいロマンティシズム”を思った(動画)。

 

 

終演後のトークで、彼は「ショパンコンクールに今さら出るのかとよく言われるが、思うところあって出ることにした」と言っていた。

彼ほどの売れっ子が今さらというと確かにそうだが、考えてみるとかのアルゲリッチも、10歳代でブゾーニおよびジュネーヴコンクールで優勝、ドイツ・グラモフォンからレコードデビューした大スターだったのに、24歳であえてショパンコンクールに挑戦したのだった。

ショパンコンクールでの優勝がなければ、さすがの彼女も現在の立ち位置は違っていたかもしれないことを思うと、反田恭平の挑戦も決して無駄ではなく、むしろ彼の将来を左右しうるものだろう。

最有力優勝候補の一人と思しき彼の挑戦、楽しみに見届けたい。

 

 

 

(画像はこちらのページからお借りしました)

 

 


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