ショパン国際ピアノコンクール in ASIA 第5回派遣コンクール 第3次審査 第1日 | 音と言葉と音楽家  ~クラシック音楽コンサート鑑賞記 in 関西~

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クラシック音楽の鑑賞日記や雑記です。
“たまにしか書かないけど日記”というタイトルでしたが、最近毎日のように書いているので変更しました。
敬愛する音楽評論家ロベルト・シューマン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、吉田秀和の著作や翻訳に因んで名付けています。

ショパン国際ピアノコンクール in ASIA 第5回派遣コンクール

第3次審査 第1日

 

【日時】

2020年1月13日(月・祝) 開演 11:00

 

【会場】

昭和音楽大学 ユリホール (川崎市)

 

 

 

 

 

ショパン国際ピアノコンクール in ASIAの第5回派遣コンクールが現在行われている(公式サイトはこちら)。

このコンクールの上位入賞者は、2020年のショパンコンクールにおけるビデオ審査免除の特典が与えられるという。

1月13日は、第3次審査の第1日。

この日のみ、実演を聴きに行った。

なお、以下の曲はいずれもショパンの曲で、使用されたピアノはいずれもスタインウェイである。

 

 

D3-01

水谷桃子 Mizutani Momoko

 

Mazurkas Op.59

Sonata No.2 in B flat minor Op.35

 

力強い演奏で、ソナタ第2楽章などなかなかのテンポで弾けている。

ただ、強音がときにやや力んだように聴こえる。

また、第2楽章のトリオで暗譜が飛んでしまったのは残念。

 

 

D3-02

中村芙悠子 Nakamura Fuyuko

 

Mazurkas Op.59

Preludes Op.28

 

メロディの歌わせ方があっけらかんとしている。

ただ、テクはなかなかで、特に前奏曲第3番の左手の急速なパッセージの滑らかな弾きっぷりが見事。

 

 

D3-03

中村優似 Nakamura Yui

 

Mazurkas Op.41

Sonata No.2 in B flat minor Op.35

 

ロマン的な味がよく出ている。

ただ、例えばソナタ第2楽章などペダルが深く音像がやや不明瞭になってしまっている、といった難点もある。

 

 

D3-04

西山響貴 Nishiyama Hibiki

 

Mazurkas Op.56

Sonata No.2 in B flat minor Op.35

 

男性らしい力感が聴かれ、ソナタ第1楽章コーダなど迫力がある。

ただ、第1楽章主要主題の「タカッタタカッ」のリズムがときに甘くなる。

また、第2楽章は一つ前の人と同様、ペダルが深くて音像が不明瞭。

 

 

D3-05

小野田有紗 Onoda Arisa

 

Mazurkas Op.59

Sonata No.3 in B minor Op.58

 

音色や音楽性がやや硬質(ショパンよりはラヴェルに合いそう)。

とはいえタッチは安定しており、しっかりとした大きな音が出せている。

テクニック的にもかなり安定感がある。

 

 

D3-06

佐原光 Sahara Hikari

 

Mazurkas Op.41

Sonata No.3 in B minor Op.58

 

自然な情感の感じられる演奏。

ただ、しっかりした大きな音を出すタイプではなさそう。

ソナタ第1楽章で、呈示部や再現部で暗譜が飛びかけたのも惜しい。

 

 

D3-07

重森光太郎 Shigemori Koutaro

 

Mazurkas Op.33

Sonata No.3 in B minor Op.58

 

弱音は澄んでおり、強音はずしっとして重みがある。

ショパンというよりもまるでブラームスか何かのようだが、とはいえ存在感のある大きな音、安定したタッチが聴かれるのは良い。

 

 

D3-08

進藤実優 Shindou Miyu

 

Mazurkas Op.17

Sonata No.3 in B minor Op.58

 

また新たな才能の登場である。

きわめて個性的、瞑想的な解釈。

言うなれば、ケイト・リウのようなタイプか。

あらゆる音に意味を見出し、一音一音に魂を込めていくような、緊張感みなぎる演奏となっている。

同じようなメロディでも、最弱音で繊細に歌わせたり、かと思うと朗々と大きく鳴らし心ゆくまでのカンタービレにしたり、と自由自在。

低音部や内声部もきわめて雄弁で、この日だけでも散々聴いたこのソナタをがらりと一変させ新鮮な曲にしてしまうほどの表現力がある。

技巧的にも大したもの。

逸材である。

 

 

D3-09

徳永雄紀 Tokunaga Yuuki

 

Mazurkas Op.56

Sonata No.3 in B minor Op.58

 

素朴な感じの味わいがあり、悪くない。

ただ、先ほどの凄演の後ではやや分が悪いか。

 

 

D3-10

古海行子 Furumi Yasuko

 

Mazurkas Op.56

Sonata No.3 in B minor Op.58

 

いつもながら完成度の高い演奏。

マズルカop.56-3、渋い曲だが彼女が弾くと大変に充実して聴こえる。

ソナタはもはや彼女の得意曲(その記事はこちら)。

第1楽章の音階風和音下行パッセージの滑らかさ、第2主題部後半における左手のアルペッジョの繊細さ、展開部の畳みかけるような迫力。

第2楽章や終楽章は相当速いテンポなのに全くよどみなく流麗、目の覚めるような鮮やかさ。

ミスもわずかにあったが、気になるほどではなかった。

隅々まで情感や情念を凝らした先ほどの進藤実優の演奏とは全く対照的にあくまで自然体でスマートな、なおかつ全く同等に充実した聴きごたえのある演奏。

 

 

そんなわけで、第1日の演奏者のうち、私が最終審査に進んでほしいと思うのは

 

小野田有紗 Onoda Arisa

重森光太郎 Shigemori Koutaro

進藤実優 Shindou Miyu

古海行子 Furumi Yasuko

 

あたりである。

何人が最終審査に進める規定なのかよく知らないが、とりあえず何名か選んでみた。

「ショパンらしさ」など別の観点で審査されるならば、別の人が選ばれてもおかしくない。

しかし、大きなホールでもしっかりと聴こえる大きな音や安定したタッチを持つのは、この4人あたりと感じた。

ただ、今回の会場のユリホールは約350席の小ホールだからか、こうしたしっかり鳴らされる大きな音が頭打ちに聴こえてしまったのが残念。

欲を言うと、800~1000席程度の中ホールか、あるいはそれ以上の規模の大ホールで聴きたかった。

ともあれ、優勝候補はというと、第1日だけで判断するならば進藤実優か古海行子ということになりそう。

 

 

1月14日は、第3次審査の第2日(最終日)。

私は聴きに行けなくて残念。

行ける方はぜひ。

 

 


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