いよいよ来年度(2020年度)から、小学校での英語学習の必修化が本格的に始まります。
すでに前倒しで取り組まれていますが、さらに小学3年から英語活動が加わります。そして、小学5年からは英語が教科として位置づけられます。
時間数としては、3から4年生は、年間35時間(1時間が45分)、5年・6年生は、年間70時間(1時間が45分)が新たに教育課程に組み込まれます。
https://www.mext.go.jp/a_menu/kokusai/gaikokugo/index.htm
それだけの学習時間が確保できるのか、小学校教員のスキルは大丈夫なのか等、問題点も多く指摘されています。
拙ブログでは、数年前に『英語教育5つの誤謬』と題して、「早期教育」や「母語話者」の誤謬を指摘しています。
要約すると、教師を母語話者に限定したり、英語学習の早期化や長時間化を進めようとすると、能力が不足した教師の増加や適切な教科書不足が生じ、英語教育の水準をむしろ低下させるということです。
神戸市では、来年度からの小学校英語学習の必須化本格実施に対応するため、英語授業のALT(外国語指導助手)を増員するとのこと。
https://www3.nhk.or.jp/lnews/kobe/20200205/2020006260.html
神戸市としては、小学校教員のスキルを補う措置として、頑張って予算付けたんでしょうけど、早速英語教育の専門家である藤原康弘博士等から批判の声が上がっています。
藤原康弘博士等は、2017年12月から『これからの英語教育の話を続けよう』と題したウェブマガジンを継続してアップされておられます。
その第7回、8回において、、ALT(外国語指導助手:Assistant Language Teacher)に関する調査報告のことを書かれています。
http://www.hituzi.co.jp/hituzigusa/2018/06/15/letstalk-7/
http://www.hituzi.co.jp/hituzigusa/2018/07/13/letstalk-8/
ALTに関しては、実績として既に30年以上の歴史があるそうなんですが、しっかりとした調査研究が行われておらず、2018年に初めて大規模アンケートによる調査研究が行われたとのこと。
『小学校・中学校・高等学校におけるALT の実態に関する大規模アンケート調査研究』
この調査研究の結論としては、「ALT の多くが英語教育に関して真面目に取り組む姿勢を持っている」、「ALT存在は益々重要になってくる」等々、概ねALTに肯定的なものとなっています。
しかしながら、この報告書、一応、上智大学の体裁をとっていますが、(株)インタラック(現、リンク・インタラック)の委託研究なんですね。委託研究とは、研究者が学外から委託を受けて行う研究で、委託研究費は委託者(企業等)負担となります。
この会社、なんとALTの派遣会社なんですよ。この時点で、こんな調査研究はバイアスかかりまくりと思う方が普通だと思います。利害関係人が行う調査なぞ、なんの価値もないでしょう。
(最近、こういうの多いですね。大阪市廃止特別区設置(いわゆる都構想)の効果額も、都構想推しの高橋洋一が在籍している嘉悦大学に委託)
藤原康弘博士等は他にも次のような問題点を指摘されています。
・データ・サンプルに偏りがあること
これ約1万7千人いるALTにアンケート取ってるんですが(回答者は1807名)、このようなアンケートの呼びかけにボランティアで回答するのは、どうしても「英語教育に熱心で真面目な方に」偏るということです。
調査に対するまとめの抜粋です。
1)ALTの研修は充実しているか
8割のケースが1週間以内であり、まったく充実していない。
2)ALTは学習指導要領を理解しているか
7割以上のALTが1週間以内の研修で聞いた程度と答えていること、4割のALTが今後学習指導要領について研修で学びたいと回答していることから、十分に理解していない。
3)ALTはTESOL等の英語教員資格 / 英語や英語教育分野の学位を取得しているか
この質問と集計方法に重大な問題があることが分かった。無回答者を無資格者とみなすと、無資格者は5割程度、TESOLや英語教育関係の学位の取得者は2割程度である。また「英語教育に熱心で真面目な方」のデータであることをふまえて、理解する必要がある。
4)ALTは教員研修への意欲はあるか
「英語教育に熱心で真面目な方」の研修への意欲は高い。
とにかくも、英語教育に関しては、専門家の意見をしっかり聞いて、安易に早期教育や母語話者の導入に飛びつかないようにしてもらいたいものです。