経団連のシンクタンク「21世紀政策研究所」の報告書に注目! | 真の国益を実現するブログ

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令和4年6月2日に経団連のシンクタンク「21世紀政策研究所」から、「中間層復活に向けた経済財政運営の大転換」と題する報告書が発出されました。
https://www.keidanren.or.jp/journal/times/2022/0630_09.html

報告書はこちらで読めますので、分量多いですが全文目を通されることをお勧めします。http://www.21ppi.org/pdf/thesis/220602.pdf

ポイントとしては、日本経済の長期低迷の主要因を構造改革の不十分さや遅れとはせず、「需要不足と中間層衰退」にあると分析しているところです。そして、積極財政への転換もうたわれています。

経団連は不況期において財政出動を求めることは普通にあったので、その延長線上とも言えるかもしれませんが、報告書の第6章は特に経済政策として注目に値し、かつ経団連としては異色の論ではないかと思いますので、そこを取り上げます。

第6章は、鈴木章弘研究員による「公共部門の賃上げ・雇用増、競争政策の強化」とする論稿です。何点か抜粋します。
・分配構造を踏まえた政策の方向性
「あるべき政策の方向性として、「完全雇用」の実現にダイレクトな財政政策が考えられる。GDP の総額を増やすのではなく、望む人すべてに良質な雇用が提供されるよう、財政政策を展開する。
「国家の運営においては、それ以外にも、各種公共インフラ、科学技術開発、社会保障、教育、農林水産業等、様々な重要政策分野がある点には留意する必要がある。それら重要政策分野については、十分な規模で安定的に財政出動を行わなければならず、多少インフレ率が高まろうとも、これらの分野への政府支出は継続して行うべきである。むしろ逆にこれらの分野への投資をおろそかにすれば、特定の財・サービスの生産にボトルネックが生じ、インフレを引き起こすこともあり得る。
・公共部門の賃上げ・雇用増による効果
「公共部門の賃上げ・雇用増が、マクロの分配構造にどのような影響を与えるかみて
いく。図表 6-2 の左側はその直接効果を図示しており、支出側 GDP では政府消費が拡大し、三面等価であるため、分配側 GDP も増加し、その内訳としては主に雇用者報酬が増加することになる。これは公務員等の一般政府に直接雇用されている場合の給与は、GDPの支出側では政府消費として扱われるためである。また、一般政府による直接雇用でない場合であっても、公共部門においては、給与等の処遇に対して政府が影響を及ぼすことができるため、雇用者報酬の増加につなげやすい7。公共部門の雇用者の多くは中間層に位置すると考えられるため、ここでの賃上げ・雇用増は、直接的な効果だけでも、中間層の底上げに寄与する。
「さらに、公共部門の賃上げ・雇用増には、間接的な効果もあり、それが「完全雇用」の実現にも寄与する。その効果を図示したものが図表 6-2 の右側である。所得が増えた公共部門の雇用者は消費額を増やすと考えられるため、民間消費も増加する。また、民間消費の増加が持続的なものとみなされれば、民間企業は積極的に投資を行い、事業拡大を目指すようになる。こうした動きは支出側の GDP の拡大としてとらえられる。」
「三面等価であるため、分配側 GDP も増加する必要があるが、ここでも雇用者報酬が最
も増加すると考えられる。というのも、公共部門において賃上げ・雇用増が措置されていれば、民間部門の雇用者にとっては、公共部門に転職するインセンティブが強く働くからである。民間部門の事業主が労働移動を阻止するためには、雇用者の処遇改善が不可欠であり、結果として雇用者報酬の引き上げに迫られるのである。また、公共部門の雇用は多種多様であり、必要とされるスキルや賃金水準も幅が広い。そのため、公共部門において全般的に賃上げ・雇用増を措置すれば、民間部門においても幅広い層で賃上げがなされると期待される。
・人事院の給与勧告の見直し
「「公務員の給与は民間に合わせる」という従来の発想を大きく変え、「公務員を含めた公共部門の雇用者が、豊かな生活を送るために必要な給与水準を目指す」という考え方に移らなければならない。公共部門雇用者の多くは中間層を構成することが期待され、さらに賃上げの効果は民間部門にも波及する。つまり、公共部門雇用者の生活水準は、広く国全体の中間層の生活水準の基礎となると言える。
・公共サービスのアウトソースの見直し
アウトソースに偏重してきたこれまでの傾向を見直し、公務員として直接雇用するとともに、十分な処遇を与えていくべきである。
・非正規公務員の正規化
公共部門の賃上げとして、まずは低所得の非正規公務員を正規雇用に転換させていくべきである。2020 年時点で、国・地方の非正規公務員は 83 万人いるが、これだけの人数の処遇が大幅に改善されれば、民間消費も押し上げが期待される。さらに、様々な職種の公務員の処遇が改善することになるため、民間も幅広い分野において、雇用流出を防ぐための処遇改善に迫られることになる。
・公的価格の引き上げ
「岸田政権は、公的価格の見直しとして、2021 年度補正予算において、看護師・介護士・保育士・幼稚園教諭等の収入引き上げを措置した。これらの職種は公共部門に属するものであり、極めて重要な役割を担っているが、賃金をはじめとする処遇が低いとされてきた。こうした社会的に重要な仕事を担っている人々こそが、中間層として位置付けられ、豊かな国民生活を送れるようにすべきであり、岸田政権の方向性は望ましいと言える。ただしその具体的な内容については、さらに踏み込んだものとすべきである。」

ただし、これら公務員数の増加と給与上昇、非正規公務員の正規化等で危惧されるのが、中小企業から公務員への人材流出です。慢性的な人手不足下においては、人材流出と採用難、それを抑制するための給与上昇で経営が成り立たなくなる企業が続出すると推測されます。
つまるところ、一定の給与水準が確保できない、また休暇取得や社会保険等の福利厚生に関して法令を守れない企業は、従来にも増して存続できなくなるということです。
企業倒産等により失業者が増えることが想定されますが、考えようによっては、多くのブラック企業が存続の危機に立たされることになるため、むしろ社会全体にとっては最適化が進むとも言えます。また、簡単にはいかないでしょうが、失業者は公務員として採用すればよいのです。


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