反緊縮財政派が認識すべきこと | 真の国益を実現するブログ

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ステファニー・ケルトン著『財政赤字の神話ーMMTと国民のための経済の誕生』(早川書房)を読みました。
https://www.hayakawa-online.co.jp/shopdetail/000000014628/pc_detail/

MMTに関しては、約7,8年前でしょうか、Rickyさんのブログ『断章、特に経済的なテーマ』で、欧米のMMTブログ等を翻訳されているのを知り、それなりに学習してきましたし、既に多くの著作も出ているので、先の著作で特段新たに吸収する知識や理論はなかったというのが正直な感想です。
ただし、米国の学識者や政治家、官僚、そしてマスコミの財政赤字に対する考え方がよく分かるような、非常に興味深いエピソードなどが紹介されていましたので、取り上げます。

(P109より抜粋)
「目が覚めるような思いをしたのは、予算委員会のメンバー(とそのスタッフ)と、あるゲームをしたときだ。何十回と繰り返したが、毎回同じ、驚くような反応が返ってきた。まず魔法の杖を手に入れたと想像してほしい、相手に伝える。一振りするだけで、アメリカの債務をすべて帳消しにする力を持った杖だ。そして「杖を振ってみたいか」尋ねる。すると誰もが躊躇なく、杖を振って債務をなくしたいという。債務を帳消しにしたい、という強い思いが確認できたところで、一見まったく違う質問をする。「同じ杖が、世界中から米国債を消す力を持っているとしたら、振ってみたいか」と。すると相手は困惑した表情を浮かべ、眉をひそめ、考え込んでいます。そして最後には「杖は振らない」と答える。」

意味分かりますかね。これ「債務を帳消しにする」という問いと「世界中から米国債を消す」という問いは、同じことなんですね。米国の債務と米国債は一心同体なのに。。。
要は、皆「国家の債務(財政赤字)」については、悪だとしか思ってないのです。

他にも多種多様な財政赤字に対する誤謬、誤解が紹介されています。
ニューヨーク市には国家の債務時計があるそうです。また、マスコミでは国民一人あたりの借金(国家債務を人口で割る)も報道されるようです。
特に社会保障削減・社会保険制度(米国でも一部公営あり)の民営化、将来世代への負担の転嫁・増税論など、言論や制度状況は我が国と全く同じです。

ケルトンがこの本を書いたのは2020年であり、その前後から日米においてMMT論争も盛んになってきているので、日米や英国のような変動相場制の主権通貨国においては財政破綻はあり得ないという正論は、少しづつ拡がってきているとは思います。
しかし、ケルトン自身も、当初MMTの考え方が理解できなかったように、時々マスコミが取り上げたり、一度著作を読んだだけでは、世間、マスコミや主流の学識者による圧倒的な財政赤字悪玉論、財政破綻論に打ち消されてしまうでしょう。
で、財政破綻論が跋扈する日米の言論状況がよく似ていると述べましたが、おそらく世界中そうなわけで(普通の思考回路ならそうなる)、我が国の財務省だけを悪の根源のように非難することがいかに的外れかということです。

次のような読売新聞の記事もありましたね。
『財務省は徹底的に弱体化、「官邸1強」に…古川貞二郎・元官房副長官[語る]霞が関』

今回のコロナ禍による財政赤字の急拡大でも、金利・インフレ率に何の問題も起きなかったことで、財政赤字に関する正確な理解がまた少し前進したかもしれませんが、圧倒的多数である財政赤字悪玉論者、財政破綻論者を積極財政に転換させる、あるいは政府赤字が問題にはならないことを認識させることは、非常に難しいと思います。

ケルトンでも、最初理解できなかったのです。どうしても家計と同様に考えてしまうか、主流派経済学の知識が邪魔するのです。
地道に丁寧に、近しい政治家含め、周囲に説明していくしかないですね。
一番ダメなのは、財政赤字悪玉論者、財政破綻論者を中国共産党の手先だとか、レントシーカーだとして非難することです。このような論者が全くいないわけではないでしょうが、たいていは本当にそう思い込んでいるのですから。
(もちろん、棒界隈でよく展開される財政出動さえ行えば、単純に経済が好転するとか、格差が解消すると説明するのも駄目)



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