小泉進次郎議員は信用できない?それとも〇〇なのか? | 真の国益を実現するブログ

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将来の宰相候補とも言われる小泉進次郎議員が、何かと話題です。

一つにはこれ。
「健康ゴールド免許・勤労者皆保険… 小泉進次郎氏ら提言」

詳しくは論じませんが、彼は根本的に、福祉及び保険制度の意義が分かっていません。
福祉の主な目的は、弱者や頑張ることができない人に対して援助を行うことですし、保険制度の根本精神は相互扶助の精神ですから、健康維持が可能な人だけに対する優遇は、その土台を崩してしまいます。また、個人的には「健康が善で不健康が悪」という前提にも憤りを感じます。

もう一つはこれ。今回はこちらを中心に論じたいと思います。
「小泉進次郎氏の手腕が問われる 「農協改革の本丸」の攻め方」


彼は、現在自民党の農林部会長(昨年10月から2期目)という立場で、農協改革に切り込んでいます。世間一般は、農協は既得権益者であり、旧態依然の悪い組織であるとの意見が多数派なようで、安倍政権自体も改革方針を全面的に支援するとのことです。

しかしながら、小泉部会長を中心とする農協改革が具現化すれば、農業の衰退が加速する可能性が高まると考えます。

次の記事をご覧ください。農畜産物流通コンサルタント&農と食のジャーナリストの山本謙治氏の東洋経済オンラインの配信記事です。
「バター不足」解消をめぐる不思議な規制改革~酪農家の意見は今の制度で問題ない~」

酪農関係者からの辛辣な批判に驚かされると思います。
そのまま抜粋します。
「今の制度でまったく問題はないし、困ってもいません。なんであんな意見が出てくるのか、正直言って疑問です」
バター不足問題に関しては「規制改革の方向性はバター不足を解消しない、それどころか不足を常態化させるだろう」という乳業関係者の声が上がっている。

山本氏は、実際に話を聞いた乳業関係者、指定団体の関係者、そして「守る」対象の酪農家の多くがこのような意見だと述べています。

しかし、小泉議員は、10月14日の農林水産業骨太方針策定プロジェクトチームの会合後にこの問題について「指定団体制度は50年続いた制度で、このままでいいと思っているのは指定団体、党、現場でひとりもいないと思う。(中略)制度を守るということではなく、酪農家を守ること」と語ったという、とあります。

山本氏の記事が正しいとすると、小泉議員は、まったくもって現状を理解していない。理解できないのならまだしも、現場の意見を十分に聴いたのかさえ疑問です。

協同組合(ここでの正式名称は「指定生乳生産者団体」)は、旧態依然の非効率な組織であり、日本の酪農の発展を妨げているとの先入見があるのでしょうが、ひどすぎますね。おそらく自由競争が絶対善という考えなのでしょう。

農協(ここでは「指定生乳生産者団体」)に対する誤解として、これら団体が販売等を独占し、生産者による自由な販売を阻害しているというものがありますが、実際には販売等は自由です。(農協等による排他的な扱いが全くないとまでは言いませんが)

記事からの抜粋です。
さて、酪農家は指定団体に販売を委託するわけだが、規制改革推進会議の答申を見ると、指定団体が酪農家の自由なビジネスを阻害しているというように読める。しかし、実際にはそんなことはない。酪農家が自分の搾った生乳を指定団体に販売委託をする場合でも、全量を委託するか、または一部を販売委託しつつ一部を自由にするということができるようになっている。
だから酪農家は特色のある生乳、たとえば牧草だけで育てたものだったり、乳脂肪の多いジャージー種の生乳であったりと、付加価値のついたものを通常より高い価格で販売委託をすることが可能だ。その際、もちろん乳業メーカーと直接の価格交渉をしてもかまわない。その代わりに、その生乳が売れないかもしれないというリスクを負うわけだ。


小泉議員によるJA全農批判に関しては、次のようなものもありました。
「日本農業法人協会」の韓国での市場調査を引用し、9月6日の会合では、国内の肥料や農薬の値段が高いことを指摘しています。
http://www.j-cast.com/2016/09/17277944.html?p=all

また、9月29日の会合では、JA全農の組合員から得ている手数料収入が高いと批判しています。
http://www.jiji.com/jc/article?k=2016092900763&g=eco

無茶苦茶な批判だと考えます。
そもそも農家はJAに加入する義務などありません。加入することによって、益するところがあるから、手数料を払ってでも加入しているのです。そりゃ、組合員からすれば、安い方がよいのでしょうが、それはJAの事務費用や職員への給与支給等活動存続に必要な適正水準があるわけで、一部高いとの農家の声を根拠に、農業の実態も知らない、かつおそらくは財務諸表の詳細も見ていない段階で言うべきことではないでしょう。

JAは、肥料や農薬、生産機材の販売だけではなく、組合員のために、国内市場のみならずグローバル市場への販路拡大にも努めているのです。もちろん、農業のノウハウや技術等を無料で提供しています。

韓国との肥料やトラクターの販売価格比較についても笑止千万です。まずは、統計的に有意な十分なデータ数を集めたのでしょうか。韓国市場を調査した「日本農業法人協会」は、大規模農業を展開する農業法人が加盟する非JA団体なので、恣意的な統計となった可能性も否めないと考えます。

また、「韓国の肥料の平均的な価格は日本の半分、農薬は3分の1、トラクターなどの農機具は性能が違うので比較が難しいが、基本的に韓国で売られているものの方が安かった」とあります。
これも無茶な論理です。ジャーナリストの東谷暁氏によると、そもそも円換算で物価水準が日本の7割、給与水準においては2分の1の韓国と批判すること自体無理があるとの指摘であり、本来なら購買力平価で比較するべきなのです。


10月17日には、TPPに関する国会特別委員会において、小泉議員と安倍総理との議論が行われました。

TPP交渉過程に関する資料開示要求はいいとして、気になったのは次の発言です。
「一方で、大変興味深かったのは、昨日一昨日、名古屋と富山で各ブロックの農業関係者のみなさんにお集まりいただいた場で、2時間以上にわたる意見交換をやりました。その場で、TPPに対する質問は、名古屋ではゼロ、富山でもゼロ、全くありませんでした。そして、昨日の富山で私と同世代の若い農家が、非常に前向きな意見を述べてくれて、それがすごく印象的でしたから、今日この質問の前に電話をして、これからの日本の農業の不安は何か、どんなことに不安を持っているかを聞いてみました」

TPPに対する質問がゼロだとか、私と同世代の若い農家が非常に前向きとの意見とあります。この後には、誰に買ってもらっているかが分からない農家が不安に陥っているとの発言が続くのですが、本当にそうなのでしょうか。先のバター不足に関する記事から判断すると、非常に怪しいと思います。意見聴取についてはおそらく、農協改革やTPP推進に好意的な農家や農業団体を中心に行ったのでしょう。多くの農家や農業関係者の意見ではないと思います。

小泉議員は客寄せパンダとも言われるように、父親譲りのその改革に前向きな姿勢と歯に衣着せぬ発言で、国民的人気も高い。この調子でJA全農批判を続けられたら、JA全農は持ちこたえられないでしょう。父親が郵便局及び郵政族と言われた国会議員を攻撃し、郵政民営化を推進した手法と同じです。

健康ゴールド免許で自己負担分軽減の提言やJA加入手数料批判なぞを鑑みると、相互扶助精神が全く理解できないようですね。近代的な経済合理主義精神に蝕まれているのでしょう。それが支持されている一つの要因ではあるのですが……

現状のままでは、農業衰退が免れないのは事実でしょう。しかしながら、小泉議員等安倍政権が進めているJA全農叩きやTPPを契機とする輸出振興等の農業改革は、大規模農業法人や独自にビジネスを展開する一部若手農家、さらには規制改革会議の農業の門外漢によって主導されているため、多くの農家を益するとは到底考えられません。

現在の農業衰退は、主には関税撤廃と欧米諸国で行われているような所得補償等の分厚い国家保護がなかったことが原因です。JA全農や各農家の努力不足に求めるのは、お門違いでしょう。

参考までに、三橋貴明氏のブログに農業保護に関する詳しい説明がありましたので、リンクを貼っておきます。
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12055296987.html
下の表も当ブログから転載させていただきました。



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