【作品集】蒼色で桃色の水 -3ページ目

【作品集】蒼色で桃色の水

季節にあった短編集をアップしていきます。

長編小説「黄昏の娘たち」も…

【連載本小説】黄昏の娘たちキラキラ

初の長編小説です。

~あらすじ~

美貌の三姉妹が古の吸血鬼に完全なる不死を手に入れるべく・・・

現代の吸血鬼ハンターが東京を舞台に死闘を繰り広げる(?)


ジャンル:ダークファンタジー星空

1.女神伝説         19.最初の生け贄       37.狩り  

2.プロローグ         20.水曜日            38.出発の時

3.数年後の4月25日   21.逃亡              39.行動開始

4.レハエル          22.逃避行           40.ドラキュラの花嫁    

5.出逢い           23.唯一             41.親子

6.探索             24.行動開始          42.束の間の休息

7.月曜日           25.百合子の部屋       43.金曜日

8.ブラックバード       26.ヴァンパイア・ハンター 44.作戦開始

9.ホスト            27.対峙             45.戦闘開始

10.茉莉子と黎明      28.罠              46.戦闘

11.結花子の憂鬱     29.ヴラドの館          47.神殿

12.火曜日          30.百合子の日記       48.三姉妹

13.ラドゥー          31.仲間            49.それぞれの戦い

14.青山霊園        32.ヴラドの里          50.女神の力

15.茉莉子          33.静かなる戦い        51.終結

16.clubベラルナ      34.教会             52.エピローグ

17.ラドゥーの神殿     35.木曜日

18.カーブ           36.戦いの準備          

 12月のある夜。

空から大きな光が舞い降りた。

それを見ていたのは、サンタクロースがプレゼントを配りにそりに乗ってやってくるのではないかと住宅街の窓から空を見上げていた少女と試験勉強の息抜きにベランダに出ていた青年と公園で寝泊りしていた少年だった。光はゆっくりと天から降りてきて、やがて消えた。

「おじ様。今年はどうするのですか?まだ、何も用意しておりませが…もう、人間たちに贈り物はしないのですか」

「君は、ずっと修行に出ていたから知らないのだろうがもうずうっと前から私の仕事は変わったのですよ。クリスマスの日に出かけていくことはやめたのです。」

「では、もう…人間たちには」

「いいえ、あそこを見て御覧なさい」

年配の男が指を指した先には沢山のクリスマスツリーが並んでいた。色とりどりの飾りが施されている。その中に1本まだ何も装飾されていない木があった。

「今年はあの木です。」

「近くで見てきてもいいですか」

年配の男は頷いた。

若い男の方はすっと姿を消し、ツリーの近くで再び姿を現した。

そこには数え切れないほどのツリーが並んでいた。よく見ると木には西暦が刻まれている。

横に年配の男も現れた

「その木は1945年。希望の光です。あれは、愛の光、夢の光、忘却の光、喜びの光…」

「毎年光を贈っているのですか」

「そう。こちらへ来て見なさい」

二人はまた家の中に戻っていた。そこには大きな水がめが置かれており、年配の男は特別な箱から1粒の丸い石を取り出しそれを水がめに落とした

「さぁ、一番必要としている者に光を…」

そう呟くと石は水がめの中で光りだした。するとあの何もなかった木に3つのオーナメントが現れた。

「では、私たちは特等席であの木がどんなツリーになるのかを眺めることにしましょう」

 あの光をみた翌日、少女は家族や友達に光のことを聞いたが少女の周りでは誰も見ていなかった。そして、誰も少女を信じてくれなかった。少女はあの光のことは自分の胸にだけしまっておくことを覚えた。

それは青年も同じだった。もうどれくらい人と笑っていないだろうか

公園に住んでいる少年はもっと深刻だった。この寒空で今日食べるものもなかった。あの光は仄かに心を温めてはくれたがお腹は満たしてくれなかった。

少年は空腹を忘れるためほぼ一日中公園の木の陰で眠っていた。寒さで夜目覚めると、ブランコに人影が見えた。

男の人が独りでブランコを漕いでいる。

ギ~ギ~ギ~っという軋む音が物悲しい音楽を奏でていた。少年はダンボールに包まりながら自分も「ギ~ギ~ギ~」と唄っていた。

やがて、音楽は止まった。

少年がブランコの方を見ると男はロープを掛けていた。そして輪を作り、引っ張りほどけないか確認している。

何度も輪に顔を近づけるが、何か躊躇している。少年は男に近づいていった

「ねぇ死ぬの?」

男は驚いて後ろへと転んだ。目が本当に驚いている。

「ねぇ…死ぬんなら、僕に100円ちょうだい」

男は若かった。だが、顔は疲れきっていた。

「なんか面白い話してよ」

少年は、にっこり笑うと男が座ったブランコの隣のブランコに座った。

「面白い話って」

「笑える話だよ」

少年は俯いてから

「いいよ。僕のお母さんは僕を産むときに大変な目にあったんだ。救急車を呼んでもなかなか来なくて、やっときたと思ったら今度は病院が満杯であっちこっちにまわされて、僕が生まれた頃には死んじゃったんだって。父さんはその頃すごく仕事が忙しくてその日も一緒に居て上げられなかった。僕が生まれても父さんの仕事は忙しくて、僕はおじいさんの家に預けられたんだ。でも、そのうちおじいさんも死んでしまって。おばあちゃんは僕を疫病神だって言ってたよ。そのおばあちゃんも入院しちゃって、それでやっと父さんと暮らせるようになったけど、すぐに父さんはリストラされたんだ。しばらくはアパートに住んでいたんだけど、そこも追い出されて…僕は本当に疫病神だって思った。でも、父さんは僕のことを『お前のせいじゃない』って言ってくれたんだ。で、公園生活を始めたんだけど、その父さんも帰ってこなくなったんだ。でも、父さん最後に会ったときに肉まん買ってきてくれる言ってたんだ。だからずっとこの公園で待ってる…笑えるでしょう」

少年のつくり笑いを見て、男も同じような哀しい笑みを浮かべた。

男は、ポケットから手を出すと冷たい少年の手をとった

「あったかい。お兄さんの手ってあったかいね」

男は、少年の手を自分のポケットに入れると歩き出した。

コンビニで肉まんを買いマフラーや手袋も買った。

そして、公園に戻り二人は再びブランコに座った。

少年は買ってもらったばかりのマフラーと手袋をして肉まんをおいしそうに頬張っている。

少年は、肉まんを食べ終わることに男の腕を突っついて空を指差した

「お兄さんに内緒の話を教えてあげる。あの空にこの間大きな光が落ちてきたんだよ。ゆっくりゆっくり温かい光が」

男も少年が指差した方を見てから後ろを振り返った。

「僕も見たよ。あの窓から…本当に、ゆっくりゆっくりだったな」

少年は目を輝かせていた。

「じゃ、僕たち以外にもあの光を見た人いるかなぁ」

「多分ね」

「じゃ、僕たちみたいにその人たちとも会えるかな」

「かもね」

「じゃ、父さんはあの光を見ていたかな」

「きっとね」

男は何日か前のニュースを思い出していた。コンビニで肉まんを買おうとしていたホームレスが万引き犯と間違われ逃げたところ車に轢かれ死亡した。手には100円玉がしっかりと握られていた。ニュースではこの事件のことを不況のせいだとか犯罪が増えたせいで不信感が募っているせいだとか言っていたがそのホームレスが…彼の父かもしれない

「きっと見てたよ」

「そうだね。お兄さんはこれからどうするの?やっぱり、死んじゃうの?」

男は笑って

「死なないよ。せっかく友達ができたんだから、死なないよ」

少年も嬉しそうに笑った。

「おじ様。飾りが増えましたよ」

年配の男も頷いた。

「どんどん増えていきますよ。あそこの木を見て見なさい。先程と違うでしょう。何年経っても一度降りた光は人々の中に連なり、いつまでも変化していく。だから、人間たちはクリスマスを心待ちにし心に光を宿していくのだよ。あの子達に根付いた光はやがて世界中に広がっていく、そして友情の大切さを思い出させる。私たちはそれを見守るのが仕事なんだよ」

年配の男は楽しそうに笑った。

クリスマスの夜

夜空を見上げてみませんか…きっと、

クリスマスの夜は

大切な人と一緒に…流れ星

あれは1919年のクリスマス。

ある山間の村に一人の女の子が生まれました。

村中が娘の誕生を祝福しました。

その日から毎年、クリスマスの日に神様へ感謝の気持ちを込めて村中飾り付けをするようになりました。

村中がお祝いをしだして七年目のクリスマスの朝、娘の母親は流行り病で亡くなってしまいました。

村は悲しみに沈みました。

村人達は、クリスマスのお祝いをしなくなりました。

それ以来、毎年雪が降るようになりました。

雪の厚さも毎年増えていきます。

いつしか村は雪に閉ざされてしまいました。

娘は雪の村で成長していきました。

娘が十七になった頃、村にある牧師が訪れました。

牧師は娘の家を訪ねると娘にある預言を授けました。

「毎年、クリスマスは明かりを灯し、それを絶やさないようにしなさい。そうすれば、貴女に天使が遣わされるでしょう。娘さんその時は炎のような紅い服をきるのですよ」

牧師は娘にそれだけ言い残すと村から立ち去りました。

娘はそれ以来毎年クリスマスに松明を灯し紅い服を着るようになりました。

村では娘の母の死以来、誰もが黒い服を身に纏っていましたので、娘の紅い服はそれだけで村では浮いていました。

村人の中には娘への不満を露わにする者もいました。

娘の父親はただ黙って見守っていました。


また数年が過ぎた頃娘はある事に気づきました。

娘親子が住んでいる周辺だけ積雪が少なくなっているのです。

作物もよく育ちます。

干ばつに見舞われた夏も娘の畑だけ豊作でした。

村人達は不思議に思いました。

娘の母親が死んでからというもの村は不幸続きでした。

娘は魔女なのではないか、という陰口まで囁かれるようになりました。

誰も、娘たち親子には近づかなくなってしまいました。

娘たち親子は静かな暮らしを続けました。

ただ、クリスマスだけを思い暮らし始めました。


ある年のクリスマス。

その年も、村は不作でした。

娘たち親子はいつものように紅い服を身に纏い、家の前には大きな松明を焚き、年に一度の贅沢な食事を天の使いの為に用意します。

今年こそ訪れるかもしれません。

娘は祈りを捧げ、父親は時折松明へ目をやります。

星が瞬きだした頃玄関で音がしました。

娘はやっと自分のもとに天使がやってきたのだと思いました。

ドアを開けるとそこには、同じ村の少年が倒れていました。

娘は子供を家の中に運ぶと温かいスープを飲ませました。

少年の家では7人の家族が不作の為、食べ物もなく飢えている事を娘は知りました。

娘は自分たちの分のスープを鍋に入れると少年の家に向かいました。

娘は少年の家の前まで来ると鍋を玄関に置きました。

そして、少年の耳元に囁きます。

「わたしからっていうことは内緒よ。そして、松明を燃やしなさい。この布を上げるから、見えないところに結んどきなさい。そうすれば、貴方の家にも天使がやってくるわ」

そう囁くと、静かに少年から離れて行きました。

少年はズボンのポケットに布を隠すと家の中へと入っていきました。

娘は家へ帰る途中に村を見て回りました。

ここ数年、娘は家から離れたことがありませんでした。

自分が魔女と言われていることを知っていたからです。

何処の家も飢えと寒さに耐えていました。

娘は家に帰ると父親に話をしました。

娘たち親子はそれから天使の為に用意していたご馳走と自分たちがこの冬過ごすために蓄えていた食糧をこっそり村の人たちに配り始めました。

静かに、家々を回りました。

先程の少年の家の前に来ると玄関に小さな松明が燃えています。

窓の向こうでは、一家が温かいスープを食べています。

娘は父親を呼び、その光景を見せました。

暗い闇に閉ざされた村の中で、温かい光が灯りました。

親子は久しぶりに微笑み合いました。

娘たち親子はそれからというものもっと働き始めました。

娘は昼間は父親と畑仕事をし、夜になると紅い布を編み続けました。

父親も村の寄り合いにも顔を出さなくなりました。

夜、娘が布を編んでいる傍らで木工細工を作っていました。


よく年のクリスマス。

娘たち親子は朝から大忙しでした。

父親が作った籠に紅い布を包み、パンを焼き、スープを作り、チーズを切り分け、松明を掲げる。

全ての準備を整えると、二人はいつものように感謝の祈りを捧げます。

そして、一軒一軒音を立てないように籠を配って歩くのでした。

一言だけ書いた手紙と共に

「入り口に光を灯してください」

毎年続けていくうちに、村は明るくなってきました。

松明を灯す家も増えて来ました。

村人の中には、娘が作った布を洋服に縫い付ける者も出てきました。

雪に閉ざされていた村にも、ようやく雪解けがやってきました。

村は徐々に輝きを取り戻しましたがクリスマスの届け物の送り主の事は誰も気にしませんでした。

村人の中で知っているのはあの少年唯一人でした。

親子は、日々働き続けました。

父親は村中に贈り物をするために、余所の町へ行って代々伝わってきた物をいつしか売り歩くようになりました。

娘が生まれた頃は、使用人も大勢おり毎日のように村人が父親の元へと尋ねてきておりましたが今では誰もいません。

村人たちが、魔女の娘を育てているから没落していくのだと噂しているのは知っていました。

それでも、牧師の言葉を信じて天使が来ることを待ち望んでいる娘の為になんでもするつもりでいました。

娘が笑っているのが最高の贈り物でした。


ある日、父親がいつものように町へ物を売りに行ってきたときのことでした。

帰りに一人の青年が倒れていました。

どうやら脱走兵のようでした。

父親は何も聞かずに青年を家へと連れて行きました。

青年は納屋に住みつくようになりました。

青年にとっては、村から阻害されているこの家が丁度いい隠れ家になりました。

そして、またクリスマスがやってきます。

今年は、三人います。

娘はいつも以上に張り切っていました。

朝、いつものように納屋へ青年を起こしに行くとそこには誰もいませんでした。

そして、この日の為に一年かけて用意していたものも全て無くなっていました。

娘は、青年が寝ていた藁を両手いっぱいに抱えると、松明のところへと運び出しました。

黙々と運び続けました。

納屋の片隅から、忘れられていた芋が出てきました。

娘は、再び神に感謝しました。

その芋を松明へと放り込みまた、いつもの笑顔で黙って見ていた父親に

「今年も、まだ贈り物はできますよ」と告げました。

その夜、親子は最後の贈り物を村中に届けました。

もう、親子には何も残っていませんでした。

空っぽの家だけです。

暖を取る蒔きすらもありません。

娘は僅かに燃え盛る松明を見つめながら

「お父さん。天使は私たちのところに来てくれたよね」

と呟きました。

父親も小さな炎を見つめながら

「いつも、天使は来てくれていたよ。」

と互いに皺だらけになった手を擦りあいました。

「お父さん。見て、あそこに天使がいるわ…私たちをようやく迎えに来てくれたのね」

娘は暗闇を指差しました。

そこには、一番最初にスープを届けた少年の成長した姿がありました。

少年も、娘たち親子の方を指差しました。

その姿を見て親子は微笑み合いました。

そして、次の瞬間…少年の後ろから現れた兵隊が引き金を引いたのでした。


大きな銃声で村中の人が家から出てきました。

そして、みな玄関先に置いてある贈り物を見つめました。

今年は二つおいてありました。

しかし、光を灯してくださいのカードは入っていませんでした。

村人たちは、みな光を灯しました。

家中にある蝋燭を持ち出して村中に灯りを灯しました。

娘は、父親の体から噴出す血を両手で一生懸命止めながらも村へと目をやりました。

村からは温かい灯りが次々と灯しだしました。

「お父さん。見て、村に春が来たわよ…天使が舞い降りたのよ…おとうさん、なんて綺麗なんでしょう…」

娘が息を引き取った時、脱走兵の青年がプレゼントを配り終えて村から戻ってきました。

青年は娘と父親へのプレゼントを抱えていました。

娘へは結婚指輪を

そして、父親には新しいパイプを用意していました。

消えかけている松明の傍らで倒れている親子へ歩み寄ると娘の微笑が見えました。

そして、もう一発銃声が響きました。

青年は最後の力で娘へと近寄り、もう冷たくなっている娘の細い指に指輪を嵌めました。

村は次々と光に包まれていきます。広場に村人が続々と贈り物を手に集まってきます。

楽器を持ってくるものもいました。

今日はクリスマスです。

村ではお祝いが始まりました。

そして、長年知っていて知らない振りをしてきたことを後悔していました。

村人たちは楽器を鳴らしながら今までためてきた紅い布で娘の為に縫い合わせた燃えるような紅いドレスを持って娘親子の家への道のりを灯りと共に向かい始めました。

人々からわだかまりの気持ちは消え澄んだ星空のような笑顔で

1919年のクリスマスの夜のように、村はずれの屋敷へと歩いて行くのでした。