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 10年前(1998年)、明治神宮崇敬会創立50周年記念大会の講演内容を収録した書籍。
 石川六郎、江藤淳、香山健一、西尾幹二、渡部昇一といった皆さんがお話しをされている。

 

 

【アメリカン・デモクラシー】
 「日本人の自己回復」 と題された 西尾幹二さんの講演内容から。
 アメリカン・デモクラシーはイデオロギーじゃないと思ったら大間違いです。戦前の日本は少しそのことを知っていて、「英米本位の世界秩序を排す」という論文がよく書かれました。こういう議論が出たのは、英米がいかにエゴイスティックな原理主義の国であるかということを、骨身にしみて知っていたからです。
 戦争に負けたらすっかりそれを忘れてしまって、われわれはアメリカの正義、アメリカの歴史観、アメリカ本位の世界秩序の内部に包み込まれてしまった。袋の中に入れられたものには、袋は見えないのです。だから、アメリカという国の底意が見えない。 (p.64)
 「アメリカン・デモクラシーがイデオロギーであるという認識は、袋の中からはみえない」 という指摘のとおり、日本国内に住み続けている人々は、なかなかそのようには実感できないものである。ただ、国内にいてもアメリカ人研究者が諸外国を対象に著した論文なりを読む機会があれば、そのイデオロギーの偏重ぶりを知ることはできる。
 中国・明代の官吏であり、子供や女性のために幾つかの教育的書物を著した呂坤という人物に関するアメリカ人研究者(Tomas H. C. Lee)の論文の一部をたまたま読む機会があった。その中に、デモクラシーという単語が何度記述されていたことか。研究者の主旨は、「呂坤という人物は、当時の中国社会のデモクラシーに貢献した」 という論調で一貫していたのである。
 教育的な書物の著述家である呂坤を、日本人ならば、たんに善良な教育者として認識するだろうけれど、アメリカ人研究者は、デモクラシーの推進者という視点で高く評価しているのである。かように、アメリカによる世界認識は、デモクラシーというイデオロギーに準じて行われてきたという事実は知っておいてもいい。
 独裁よりはデモクラシーの方がましではあるけれど、アメリカン・デモクラシーは、陰の支配者の強欲を覆い隠すイデオロギーとして機能していることは周知のことである。
 かつて、ビル・クリントンという大統領が、金融で恫喝して日本から大いに搾り取ったけれど、今度は、ヒラリー・クリントンという国務長官が軍事・金融の両面から越権的黒幕としてアメリカ本位の世界秩序で日本や世界をかき回すのだろう。最後の悪あがきをするであろうアメリカ本位のイデオロギーには要注意である。
            【トモダチ作戦】

 

 

【明治天皇の御製】
 香山健一さんが、明治天皇の御製3首を紹介している。
 くもりなきこころのそこのしらるるはことばの玉の光なりけり

 さやかなる光をつつむ春の夜に月にもみえて散る櫻かな

 たわむべき時はたわみてくれ竹のしたをれぬこそみさをなりけれ

 一つひとつの短いお歌の中に日本の伝統の心が、文字通り玉のように凝縮しているのです。こういうものを大切にしながら、次の時代に向けて日本の心の再建、失われたものの復権と回復に皆様方とともに努力してまいりたいと思います。 (p.44)
 原宿駅に隣接する明治神宮へ行けば、いつでも、大きな字で書かれた明治天皇の御製を見ることができる。
 例え日本人であっても、余りにも心が曇っていれば、明治天皇の御製とはいえ、ほとんど心に響かない。
 最低限の玉磨きは各自が心がけるべきこと。
 磨かれていれば、御製は強く深く心に響くものであろう。 

 

     《参照》   日本文化講座 ② 【 松竹梅 】
              【松】  昭和天皇の御製
 
<了>