心を打たれること-埼玉西武ライオンズ 栗山選手
野球はシーズンが終わり、来期の契約金額などに話題が移っていますが、そうした時期だからこそ目立ちませんが素晴らしい記録のことを書きたいと思います。昨年、埼玉西武ライオンズの栗山選手が本拠地であるベルーナドーム(旧西武ライオンズ球場)で1000本安打を達成しました。プロ野球史上12人目の偉業です。通算2000本安打はすでに達成していましたが、1つの球場で1000本安打ですからたいへんな数字です。これを達成するには、同一チームでレギュラー出場し続けることが必要です。栗山選手は2004年のライオンズ球場デビューから西武ライオンズ一筋の19年間で達成しました。この記録の過去の達成者は、後楽園球場の川上哲治さん、長嶋茂雄さん、王貞治さん、大阪球場の野村克也さん、広瀬叔功さん、門田博光さん、広島市民球場の衣笠祥雄さん、山本浩二さん、ナゴヤ球場の高木守道さん、西宮球場の福本豊さん、横浜スタジアムの石井琢朗さんです。よく知るレジェンド、偉大な選手しか達成していない素晴らしい記録であることがおわかりいただけるでしょう。ホームラン、ヒット、盗塁、奪三振等、野球の記録には様々なものがあります。最近ではメジャーリーグの大谷選手のように、一人で二桁ホームランと二桁勝利投手などベーブルース以来の素晴らしい記録も出てきています。しかし私はそうした注目度の高い、いわば派手な記録より、同一球場1000本安打のような一筋に、長くやってこなければ達成できないことに心を打たれます。栗山選手は高校時代から練習熱心で知られています。練習が終わってから帰宅するふりをして、いったん学校を出てから戻ってきて終電まで練習を続けたそうです。今でもその習慣は続いているようで、試合後のロッカールームに戻る際、いつもバットを持って戻ります。試合後に室内練習場へ直行してバッティング練習をするためなのです。私は、人間の行動のなかでいちばん難しいことは、長く一途に続けることだと思います。何ごとも一定の成果を出すまでにはかなりの時間がかかります。進歩を自覚できるまでにも相応の時間がかかるのが常です。そうしたなかで、あきらめずに一途に努力を続けることがいかに難しいことか、誰でも実感として理解できるのではないでしょうか。偉大な記録を達成できるのは、才能が抜きんでているからだという人もいるでしょうが、私は、そうは思いません。栗山選手はドラフト時には、他球団が指名しなかったわけですから、才能が抜きんでていたわけではないでしょう。私の素人目ながら、打ち方に硬さがあり、バットのしなりをうまく使えていないように見えます。不器用さを感じるのです。しかし、たゆまぬ鍛錬で、偉大なレジェンドに並ぶ記録を打ち立てた栗山選手の努力に、派手さのない愚直さに私は心を打たれます。試合後の練習は他の選手もすることはあると思います。しかし、毎試合必ずバットをもって引き上げるのは栗山選手だけです。こうした、地味なことをひたすら続けているところに私は心を打たれるのです。