働く意識-副業・兼業から
経済産業省の「『多様で柔軟な働き方』の実態について」(平成29年3月)によると、1,000人以上の大企業の調査結果ですが、7.7%の正社員が副業実施者であり、将来副業の意向がある人は55.7%に上りました。また、同じ経産省の調査の「『雇用関係によらない働き方』に関する研究会報告書」によると、副業・兼業の理由として、収入面と自分がやりたいからの2つにほぼ絞られることが明らかになっています。リンダ・グラットンの「ライフシフト」では、健康で長生きできる時代となったため、仕事からの引退が遅くなり、加えて変化のスピードが速く予測しがたいこともあり、それらに備えるために途中で仕事を中断して学業に戻ったり、様々な仕事に挑戦することで能力の拡張を目指すべきだとして、従来の学業・仕事・引退といった単線型のライフステージではもはや危ないと指摘しています。こうした環境下において企業が副業・兼業を認めることは、従業員の人生を応援するだけでなく、多様な視点を企業内に持ち込む点でも必須と考えられ、企業戦略としても重要であると思いますが、実態はまだまだのようです。デロイトトーマツ・コンサルティングの調査では、副業・兼業を積極的に推進している企業は13.0%という結果がでした。副業・兼業があまり認められていない理由として、「本業がおろそかになる」「機密保持のため」「利益相反を回避するため」等が考えられます。理由としては理解できますが、従業員の人生を豊かにするためには、グラットンの言うように単線型のライフステージからの脱却が必要で、企業はその実現を後押しする人事制度を導入すべきでしょう。一方、労働法制ではどうなっているのでしょうか。厚生労働者の見解では、「労働時間以外の時間をどのように利用するかは基本的には労働者の自由であり、労働者は職業選択の自由を有すること、近年、多様な働き方の一つとして兼業を行う労働者も増加していることに鑑み、労働者の兼業を禁止したり許可制とする就業規則の規定や個別の合意については、やむを得ない事由がある場合を除き、無効とすることが適当である。ここでいうやむを得ない事由としては、兼業が不正な協業にあたる場合、営業秘密の不正な使用・開示を伴う場合、労働者の働きすぎによって人の生命または健康を害するおそれがある場合、兼業の態様が使用者の社会的信用を傷つける場合等が含まれることとすべきである。」としています。副業・兼業を禁止している企業は、この厚労省の見解をもとに規定していると思われますが、やむを得ない事情が生じた場合は禁止もあり得るのであり、初めから副業・兼業の禁止を認めているわけではありません。ある勉強会でメガバンクに勤務している男性と出会い雑談をしていると、その方は千葉県のご出身で実家は稲作をしており、最近になって本格的に手伝うようになったと言われていました。手伝う理由は人手が足りないといったことではなく、自分が農業を兼業として行いたくなったからだそうです。メガバンクはおそらく業務も非常に多忙で兼業はつらいはずですが、それでも兼業することで自分の可能性を広げるし、元気になるといったことを話されていました。この方はお若いですが、本社の企画部門に所属されているので、いわばエリートといってもいいでしょう。日本人の働く意識は確実に変わってきています。