私は日頃から仕事を管理するうえで大切なことは目標であり、かつその進捗管理こそが人の成長を促すと説いているのですが、成果を出してはじめて人は成長すると考える方が多いように思います。
目標は達成しなければならず、達成して初めて成果といえるし、組織へ貢献している実感も得られます。つまり、目標が達成されておらず途中段階では得られるものがないと考えるのでしょうか。

組織への貢献を成果や業績の有無で考えると確かにそういう考え方も成り立ちますが、人の成長の観点からは、たとえ目標の途中段階にあっても得られるものはあるのではないでしょうか。
そのためには進捗を管理して達成度を自分なりに把握する必要があります。これは意外に難しくて、達成度を測る基準をもっていないと、何となくの感覚で測ってしまい、お手盛り評価になってしまう危険性があります。
そうならないためには、どこまで出来たら半分で、そのまた半分くらいまでの基準を、つまり4分の1きざみくらいまでの基準を考えておく必要があります。
また、繰り返しの仕事の場合は(事務系仕事はこれが結構多い。)、頻度や回数で進捗を測り達成度を把握します。こうすることで進捗管理は容易になります。

問題はここからなのですが、進捗管理をするなかで、何を得られたのか自分なりの内省を行うのはもちろん、それに加えて、要所要所で上司や先輩に、つまり先達でありかつその仕事に関係する人たちにフィードバックをもらうのです。これはアドバイスの要素もありますが、別の視点、客観的な視点を得るために行います。お手盛り感覚で行わないために必要なプロセスです。
また、この時に上司や先輩は必要な支援を行うことを忘れてはいけません。通常は、後輩や部下が困っていれば手を指しのべるはずですから心配いりませんが、個人への成果主義が過ぎる組織の場合には、後輩や部下の成果につながる支援を行わなくなる可能性があり注意が必要です(これらの実例は少なくありません)。
つまり、進捗管理とは達成度を測るだけでは不十分で、自分が何を得て今後どうしていけばさらに良くなるのか、自分の成長の観点からの考察が大切になるのです。これは仕事のやらされ感を払拭するためでもあり、仕事を自分ごとにするため必要なプロセスです。仕事を楽しくするためには不可欠のプロセスといってもいいかもしれません。

「マネジャーの最も大切な仕事」のなかで、著者のテレサ・アマビール氏とスティーブン・クレイマー氏は、「個人が内面で感じる仕事体験の満足度(インナーワークライフ)を決めるのは、①やりがいのある仕事における進捗、②自分の仕事を支援してもらう『触媒ファクター』、③やる気を増発される人間関係という『栄養ファクター』である。」と言っています。
これは669人のマネジャーに日誌をつけてもらい、それらを分析した実証結果ですから参考になります。

仕事は成果を出すことだけに力点が置かれがちですが、途中の進捗を把握すること、つまり自分はどこにいるのか、自分のいる場所を知ることは自分の成長を図るうえでは何よりも大切です。
1人ひとりの成長がなければ組織の成果は得られません。そんなことは観念的にはわかっているのですが、成長を自律的にとらえて実践できている人はどれだけいるでしょうか。

1人でやろうとすると忙しさにかまけて忘れてしまいがちですから、組織の決めごととして行うのが適切でしょう。目標管理でもよし、評価制度でもよし、組織的に行うことが大切です。