TED(講演会の内容をインターネット上で無料動画配信しているサイト)の「順位制をやめよう」という講演のなかでマーガレット・へファーナンが語っています。

ある集団が他の集団よりも明らかに成功し、より生産的な集団に変える要因は何か? これをあるMITのチームが研究課題としました。
彼らはボランティアを数百人集め、複数のチームに分けて非常に難しい課題を与えました。

結果は皆さんの期待どおり、他よりもはるかに好成績を上げるチームが現れました。でもとても興味深いことに、好成績を上げたチームはとびきり高いIQの保持者が1人か2人いるチームではなく、また全員のIQの総和が最高というチームでもありませんでした。そのかわり、好成績だったチームには3つの特徴がありました。
第1に、お互いに高い社会的感受性を示していたことです。「目で相手の心を読む検査(RMET)」でこれを測定することができます。共感性の検査として広く認知されています。そしてこの検査で高得点を出したチームは実験成績も良かったのです。
第2に、好成績チームではメンバーに均等に時間が配分され、全ての人が意見でき、仕事をさぼる人もいませんでした。
そして第3に、好成績なチームほど女性がたくさんいました。これは女性は一般的にRMETで高得点を取るから、共感でポイントを倍稼げるためでしょうか? それとも、女性が多様な視点をもたらしたからでしょうか? 理由はよく分かりませんが、この実験の印象深いところは、私たちの予想通りチームごとの成績に差が出ましたが、その鍵となったのが「社会的なつながり」でした。


「つながり」ですから、双方向のやりとりが必要なことは言うまでもありません。そのやりとりをどのように捉えてどのように行えばよいのかが問われます。
現代の企業や組織では成果を早く出すことに力点が置かれ、そのために何をどうするかを迅速に決定し行動することが求められます。その過程では、メンバーの「つながり」を十分に吟味し、留意することはほとんどないか、あるいは全くないことも多いのではないでしょうか。

我々が健全な「つながり」を取り戻し充実させるためには、「順位制」を忘れて、すなわち部長や課長といった職階による「順位制」に囚われず、人と人の関わり合いを思い出し、そこから何かを生み出すことを心がける必要があるでしょう。
それを大胆にまとめて言えば、「共感することを大切にして壁のない場を作り、お互いを尊重し思ったことを口にする」ことになるのではないでしょうか。
そうすることでそれまでになかった拡がりを感じることができます。様々な価値観や考えが場に流れるのです。
その力の源泉はメンバーそれぞれの存在であり、そこから生まれる「つながり」であることがわかります。考えや思いが新たな考えや思いを生み出し、それが連鎖していくのです。

論理、分析、スピード、効率など現代の企業や組織で重視されていることは、不幸にも人間がもつ本来の力を制限しているように思えます。それらを大切にすることは当然ですが、そこに留まることの限界に気づき、それらと「社会的なつながり」の両方を備えたあり方が問われているのではないでしょうか。