誰もが経験していると思いますが、人にお礼を言ったり、感謝したりすると、自分の気持ちも温かく満足した気持ちになります。これは、脳の働きがそうさせているという研究結果があります。人は感謝すればするほど、幸せになれるというのです。
ポジティブ心理学の研究で有名なマーティン・セリグマンの実験がそれを示唆しています。その実験で被験者は、今まできちんとお礼を言ったことがない人にありがとうカードを渡し、その後、自分の幸福度を記録するよう指示されました。その結果、被験者の幸福度が大幅にアップしたのです。
このことは職場でも有効だと考えられます。
感謝の気持ちと幸福は大いに関係があるとすると、職場で感謝の気持ちを表明することで、まず自分の幸福度と満足度が増します。また、感謝を表明された相手の満足度にも少なからず影響し、良い関係が構築できる素地が生まれます。
これにより、生産性へ好影響を及ぼすことが予想できます。もちろん、良い関係だけでは生産性の向上は実現しませんから、その他の生産性に関わる諸事項にも留意しなければならないことは言うまでもありませんが。
ある研究では、幸福な気持ちで作業をすると生産性が12パーセント向上し、不幸せな気持ちだと10パーセント下がるとしています。幸福感により生産性におよそ20%の上下があるという結果ですが、当たらずとも遠からずといった感じでしょうか。
通常は生産性が高いほど成果が高くなりますから、職場ではどうすれば感謝の念や、幸福感を最大化できるかということを真剣に考える必要があるでしょう。離職率を減らし、幸福感を感じながら、能力のある従業員が長く働けるような企業文化を構築し維持すれば、高い成果をもたらす素地が生まれるのです。
逆にいえば、そうした素地に乏しい職場では、高い成果を出したとしても、それを継続することは難しいのではないでしょうか。
緊張感に満ちたギスギスした関係の職場が長続きしないのは理由があるのです。
幸福感を語らずして、企業文化を語るベからずということです。
しかし、感謝の念を抱くことは実際にはそう簡単ではないかもしれません。
職場では日々対立や軋轢を生む事象が多く発生しています。それらを調整したり乗り越えたりすることが仕事であると考える向きもあります。対立や軋轢に忙殺されていたら感謝の念にはなかなか到達できないかもしれません。
どうしたらそうならずにすむのか。
改善や改革にはクリティカルな批判は重要ですが、どんな場合でも周りの人々に対して感謝の気持ちをもって臨む、感謝を先に立てることが、シンプルですが大切なことではないでしょうか。