先日、定年退職後の再雇用における基本給などの大幅減額は違法として、名古屋自動車学校(名古屋市)の元社員2名が同社に定年前との差額分の支払いを求めた訴訟の最高裁の上告審判決がありました。
この判決では、定年前の6割を下回るのは違法とした2審の名古屋高裁判決を破棄し、審理を差し戻しました。
差し戻した理由として、正社員との不合理な労働条件格差を禁じた労働契約法(パートタイム労働法)に違反するかは、「基本給の性質や支給目的を踏まえて検討すべきだ」との判断でした。
正社員の基本給は勤続年数に応じた勤続給だけでなく、仕事内容や業績を反映した職務給、功績給の性質もあると指摘したうえで、再雇用の嘱託職員は役職への就任は想定されず、勤続年数に応じた増額もないことなどから、「正社員とは性質や支給目的が異なる」と述べ、こうした点について2審は適切に考慮していないとして、審理をやり直すよう命じました。
具体的な金額ですが、2審判決によると、自動車教習所の教習指導員として30年以上勤務し、13年と14年にそれぞれ60歳で定年退職した後、嘱託職員として5年間働き、再雇用後の業務内容は定年前と変わりませんでしたが、基本給は定年退職時の4~5割に当たる月額約7万~8万円に減額され、入社1~5年未満社員の金額を約11万円を下回っていました。
1審では2人の賃金は「労働者の生活保障の観点から看過しがたい水準に達している」と指摘。同じ業務内容で基本給が定年退職時の6割を下回ることは、当時の労働契約法20条(現パートタイム・有期雇用労働法)が禁じる不合理な待遇格差に当たると判断し、2審判決も1審を支持しています。
これに対し、自動車学校側は上告審で、2人は定年後の賃金減少分の一部について国が補助する「高年齢者雇用継続基本給付金」を受給していると指摘し、不合理な待遇格差に当たるかは基本給だけでなく他の収入も含めて検討されるべきだと主張し、請求を棄却するよう求めていました。
最高裁は1審2審とは異なり賃金水準についての判断は留保しています。給与水準よりも、基本給の減額についてもっと審理をつくすべきと言っているのですが、木で鼻をくくるような不誠実な判決です。
ところで定年後再雇用の処遇の実態はどのようになっているのでしょうか。
日経ビジネスが2021年に実施したアンケート調査「定年後の就労に関する調査」によると、再雇用後の給与は現職時の4割減から6割減になっているのが実態のようです。
仕事内容の変更ありなしは明らかになっていませんのでなんともいえませんが、ずいぶんと減額幅が大きいと思います。
今回の最高裁判決は、基本給について十分な審理を尽くしていないとの判断ですが、社員にとっては理不尽な処遇であるにもかかわらず、1審2審のように生活給としての水準を考慮しない、門前払いのような判断となっています。訴えに対して誠実に応えていない論点すり替えのような態度ともいえます。裏を返せば、基本給の在り方にはいろいろあり、同じ仕事をしている者でも基本給は変わる可能性を容認しているようにも思えます。
定年という時間的区切りのみで処遇が大幅に変わる現状が多くあるようですが、どうにも根拠に乏しい愚策(会社側からすれば経費節減になり愚策ではないかもしれませんが)に思えるのですが、私の考えは少数派なのでしょうか。