他者の失敗を反面教師にすることはできても、自分の失敗を素直に認めることは案外難しいものです。
ましてや、組織においてそれなりの責任を負い地位のある人にとっては余計に難しくなります。安易に失敗を認めると、能力の無さを認めるようで、状況によっては本当に地位を追われることもあるからかもしれません。

発明やイノベーションに関してよく言われるのは、失敗は成功の母、イノベーションには失敗が欠かせない、失敗なくして成功なし、等々の言葉です。これらはおそらく真実で、発明とまではいかないまでも、新たな取り組みはなかなか成功せず、何回かの試行錯誤を経てなんとか軌道に乗せた経験を持つ方は少なくないのではないでしょうか。
このように、組織や集団で行うことには失敗はつきものでそれを糧とする向きは多いと思いますが、自分自身の失敗、とりわけ判断ミスとなると、なかなかそれを認めない、そうなってしまいがちです。

自分の経験から察するに、人は皆自分の弱さを感じたくないなのです。
また、みずからの失敗を最小限に抑えたい。そうした欲求も強いと思います。
弱さを感じたくないことと失敗を抑えたいことの両者が相まって失敗を認めたくない態度となってしまうのです。失敗をするほど自分は弱くない、もっといえば自分は間違っていないという心情、失敗などあり得ないとする強情、これらが失敗を認めない態度を強化してしまうのです。
しかし、失敗は成功の母と言われるように、自分自身の失敗を認めることはきわめて重要です。言うまでもなく、こうした態度は学びを促進しその後の行動の改善に不可欠だからです。

失敗を素直に認めると、他にも好ましい影響があります。
1つは、失敗を率直に認めるリーダーに対しては心を開きやすくなるということです。素直さ率直さは誠実さを伝えるのです。自分もそうありたいと思わせるところがあります。こうした態度は風通しのよい、何でも言いやすい雰囲気を醸成します。
もう1つは、自分の失敗を認めると他者の失敗も容認できるのです。よく陥ってしまうのは、自分の失敗を認めず他者の失敗だけを責める偏狭な態度です。そうした態度では反発され信頼も失いますが、自分の失敗も認めることで、前述と同様に素直さ率直さ、誠実さを伝え、お互いに認め合う前向きな関係に発展していくことができます。

失敗を認めることができなければ、今後の失敗への対処が困難になることも言うまでもありません。
失敗を認めることはこのように良いこと尽くめなのですが、安直な防衛本能によるものか、失敗を認めない態度によりいっそうの窮地を招いてしまうケースが後をたちません。
とりわけ、組織や集団でリーダーにある人たちは要注意であり、失敗を糧とすることを組織のなかで徹底させるためにも、自ら率先して失敗を認めることが重要なのです。