『ローズマリーの赤ちゃん』を観ました。
ニューヨークのアパートに引っ越してきた、ミアとガイの新婚夫婦。
二人の新生活が始まって数日後、ミアと知り合った隣室のテリーがアパートから落下して死亡。これをきっかけにミアとガイはカスタベット夫妻と懇意な間柄になる。
時に節介の度が過ぎるカスタベット夫妻を疎みながら暮らす中、ミアはガイとの子供を欲しがっていた。
ある日、カスタベット夫人からのデザートを食べたミアは目眩を起こした挙げ句、恐ろしい夢を見る。それは十数人の男女に囲まれながら悪魔に犯されるというものだった。そしてミアが目を覚ますと、体中に数条の傷跡が…。
その後、ミアが妊娠した事が発覚。カスタベット夫人が紹介した産婦人科医サパスティンの指示に従うものの、鈍痛がが治まらないミアの精神は不安定気味に。ミアは親のような存在であるハッチに事情を話すが、その直後、突然に意識不明になったハッチは死んでしまう。
ハッチが死ぬ直前に送ろうとしていたという本、『悪魔のしもべたち』を受け取ったミアは……といったお話。
ホラーだかスリラー作品という事で見始めたはいいものの、隣室の節介焼きババアにウンザリしたり、いわゆるマタニティブルーに駆られる若奥様の苦悩とか、いったい何を見せられているんだと思いがちですが、そこに”悪魔”というワードがチラつき始めると話が変わってきます。
日常生活に災いがあったとして、それがまさか悪魔の仕業なんて言い出そうものなら一笑に付されて終了です。
が、人間の信仰や信奉はあながち馬鹿にできたものでもなく、超常現象を引き起こす可能性もゼロではありません。悪魔なんて聞くと、変身ヒーロー作品に登場するクリーチャーのような姿を連想しがちですが、それらは映像上の記号であって、悪魔を宿した人間もいます。『オーメン』のダミアンとかね。
んなアホなの一言で片付けるには生々しい、現実or非現実の境が絶妙なところに恐怖を感じる作品です。
前半のミアは可愛らしい、いかにも無邪気な若奥様って感じですが、後半になって髪型が変わると表情(やメイク)にも緊迫感が備わります。
子供を産むとなれば、男には想像もつかない痛みが伴うんでしょうが、そこで自分の赤ちゃんが狙われていると知り、心身ともに衰弱していくミアが見ていて辛いです。
無意識に生肉(しかもレバー?)を食べ、それにハッとするシーンもゾッとします。
ミアの周りにいる近しい&親しい人たちの裏切りも苦しいですね。
いや、正確には彼らは良かれと思いながらミアに尽くしているんですが…。
そんな状況であっても、どこかしらに仲間や尽力者といった救いはあるはずですが、そういう人たちがミアの周りから徐々にいなくなるのがゾッとしますね。
が、ほぼミアの一人称で進む話だからか、悪魔信奉者とされる人たちの実態が一切映らないので、見ている我々にも真実は分からない。
悪魔の信奉者がどうとかとか、それなりの信憑性があるものの、情報を鵜呑みにしているばかりで、全てはミアの被害妄想の可能性もあるという事です。
そこから始まる人間不信や疑心暗鬼のせいで、ミアはますます情緒不安定に陥ります。果たして自分の赤ちゃんは、本当に自分の赤ちゃん何だろうか?
そして全てが明らかになった時の、これまでのミアの苦労を考えると、ただただ虚しさに駆られます。
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Blu-ray版は映像特典も日本語吹替もない、ド最低限仕様です。
オマケも何もないという意味では配信版と変わらないし、こういうのは1000円未満でいいと思うんだよ。
本作は小説が原作ですが、数十年のスパンを空けての続編=『ローズマリーの息子』なんてのがあったんだよね。
先に『~の赤ちゃん』の原作を読んでからと思っていたんだけど、とっくに入手困難になっていたので、こちらは未読のまま…。わざわざハードカバーの高っけー新書版を買ったのに、このザマよ。
そういえば……『~の息子』を、ブラッド・ピットさん主演で映画化する話、もう完全に消えたのかな…。