ダークホース ~リア獣エイブの恋~ | 記憶のための映画メモ

記憶のための映画メモ

こんにちは!
大好きな映画も数日で忘れてしまう我が記憶力。
ユルユルの脳味噌に喝を入れるための映画ブログです。

テーマ:

記憶のための映画メモ

ダークホース ~リア獣エイブの恋~


2011年/アメリカ/84分

監督:トッド・ソロンズ
出演:ジョーダン・ゲルバー、セルマ・ブレア、ジャスティン・バーサ、クリストファー・ウォーケン、ミア・ファロー、他
おすすめ度(5点中) → 3.7


――― あらすじ ―――――――
オタクでデブでマザコンのエイブは、両親に甘やかされて育ったせいで、30歳を過ぎてもいずれ大成すると根拠のない自信を持ち続けるカン違い男。そんな彼はパーティで出会った美女ミランダに一目惚れすると、強引にデートに誘って、即プロポーズ。失恋で自暴自棄になっていたミランダからOKの返事をもらうことに成功するのだが…。(allcinemaより)


―――  感想  ―――――――

期待通りの後味の悪さでした。トッド・ソロンズ監督はその点において信頼ブランドですね。

タイトルだけ見ると、軽いコメディ臭がプンプンしていますが……。

エンドロールを観ている頃には、おもーく気分が沈んでしまいます。

トッド・ソロンズ監督が好きな人は、観て損はないと思いますね~。


今作の主人公エイブは、フィギュアオタクで、デブで、マザーコンプレックスで

あげく父親の会社で働いているんだけど、簡単な仕事も成し遂げられない。

それでいて実家暮らし。問題なのは、根拠のない自信に満ちていること。

そんな彼は自分のことを「ダークホース」だと思っている。


今作は、このエイブの“ズレ”感をずっと味わいながら鑑賞することになります。

ただ、ムカツクほどでもなければ、大笑いするほどでもなく、

絶妙の距離感で描かれたエイブは妙にリアルでもありますね。


記憶のための映画メモ

▲そんなエイブは、結婚式であったミランダにひと目ぼれ。

いきなり結婚したいと切り出すのだが、予想に反して彼女からはOKの返事が来てしまう……。


ミランダ演ずるセルマ・ブレアの暗い雰囲気は、「僕には手におえませんw」としか思わないのですが、

エイブにとってはそんな繊細な機微は関係ナシ!

予想通り、ミランダはある秘密があるんだけど…(映画上映前に、貼ってある新聞の切り抜きを読んでたら、ミランダの秘密がネタバレしてました!)。

その秘密がわかってからの後半の展開は面白かったなー。

いろんなことが悪い方に転がって行ってね。急加速っぷりが半端なかった。


記憶のための映画メモ

▲エイブはマザコン(母親もエイブへの接し方が異常だ)。


記憶のための映画メモ

▲エイブは父親の会社で働いている。父親役のウォーケン様はヅラです(笑)。


映画を観た人なら誰もが思うんだけど、エイブの自己中っぷりは本当にすごい。

うまくいかないと人のせいにするし、相手のことは何も考えずに暴走する。


ただ、そんなエイブが育った過程を、この映画はちゃんと描いているんですよ。

この親にしてエイブあり。エイブがなぜにこんな性格になってしまったのか?

この点を意識すると、今作はグッと面白くなりますね~。


よく家の柱に身長を刻むじゃないですか。

“もんそん、●年、●歳”、とかって。

エイブも柱に成長記録が刻まれていたんだけど、エンドロール直前で明らかになるのは

父親がエイブのことを「ダークホース」って刻んでいて、今とは違う期待と愛情を持っていたことがうかがえるんですね。これけっこう切ないんですわ。しかもその記録は家のリフォームで張り替えられた壁紙によって覆い隠されているんです。これはかなり示唆的ですよね。


そして、今作の見所といえるのが現実と非現実の境目の曖昧さ。

序盤でミランダに恋するエイブに向かって、会社の秘書(なのかな?)であるマリーが駆け寄ってきて

「彼女は高嶺の花だよ」と警告してきます。

それで、あ~マリーが突拍子もなく出てくる瞬間は妄想なんだなーと分かるんですが

次第にこの境界線があやふやになっていくんですね。


これは現実なのか、妄想なのか?

そしてホントにエイブの妄想なのか?誰か他の人の妄想なのではないのか?


映画パンフをチラ見した時に書いてあったんですが

「今作のダークホースはエイブだけじゃない」、と。

マリーという隠れダークホースの存在感も大いに注目したいところです。


記憶のための映画メモ

▲このマリー(右)がね~、妙にフェロモンたっぷりなのです。


こっからネタバレ!

最終的に、父親からクビを宣告されたエイブは

怒り心頭で会社から車で飛び出したことで、事故にあい両足を失います。

ミランダとの間には子供ができているんだけど(いつの間に?これも妄想か!?)

エイブはミランダが犯されていたB型肝炎に感染してしまい、結果として彼は命を失います。


僕たちが高みの見物で観ていた“駄目なエイブ”は墓の中。

そんなエイブに愛おしさを感じていると、マリーが妄想のなかでエイブとダンスするシーンが描かれます。

そしてその妄想から我にかえるマリー。彼女から画面が引いていって終幕!

この切ないやりきれなさこそがトッド・ソロンズ!期待通りですなー、満足じゃー★


今作も大いに楽しませていただきました。

帰り道は気持ちが暗くなって、今は酒を飲みながらブログ書いています(笑)。