パンクフロイドのブログ

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ひつじ探偵団 公式サイト

 

チラシより

イギリスの田舎町で、愛するひつじたちと共に一人で暮らすひつじ飼いのジョージ。彼は毎晩、たくさんのひつじたちに探偵小説を読み聞かせています。彼らが物語を理解し、その時間を楽しみにしていることも知らずに・・・。ある日、そのやさしいジョージが死体で発見されます。これが事故だと信じようとしないひつじたちは、最も賢いリーダーのリリーを筆頭に、老若雄雌!?のひつじたちが結束して捜査を開始!手がかりを追ううちに、ジョージには47億円の巨額な遺産があったことが発覚!みんな、みんな、あやしい!果たしてひつじたちは犯人を見つけ出し、愛するご主人の無念をはらすことができるのか??

 

製作:アメリカ

監督:カイル・バルダ

脚本・原案:クレイグ・メイジン

原作:レオニー・スヴァン

撮影:ジョージ・スティール

美術:スージー・デイヴィーズ

音楽:クリストフ・ベック

出演:ヒュー・ジャックマン ニコラス・ブラウン モリー・ゴードン

             ホン・チャウ エマ・トンプソン

2026年5月8日公開

 

羊が探偵役となって飼い主を殺した犯人を見つけ出すという話からは、キワモノとしか思えませんでした。ところが実際に観てみると、正攻法な作りをしていて、犯人も意外性があり、アメリカ映画にも関わらず、英国の古典的なユーモアミステリーの味わいがありました。勿論、羊が直接犯人を捕らえる訳でなく、のどかな田舎町に一人しか居ない警官にヒントを与えつつ、逮捕まで導く話の流れになっています。

 

また、事件を捜査するデリー巡査が誠に頼りなく、少々間抜けなキャラクターがこの映画ではいい味を醸し出しています。序盤を観る限りでは安易に事故として処理しようとしたり、取材に来た記者のエリオットから現場に指紋がつくことを注意されたり、「この人、大丈夫?」と不安になってきます。それでも、羊たちに助けられながら次第にスキルが上がって行き、彼自身が成長していく過程がボンクラ好きにはツボに嵌ってしまいました。

 

捜査の途中、容疑者を見誤りつつも、最後に犯人からの嘲りを逆手に取って、グウの音も出ないほどの証拠を突きつけ美味しいところを攫うなど、本格ミステリーの王道な展開も小気味よかったです。他にも、CGによる羊たちが、頭脳明晰なリリーを筆頭に、孤高の存在のセバスチャン、記憶力抜群のモップルなど、それぞれ個性があり観ていて飽きませんでした。

 

その一方で、羊たちの思い込みや迷信、冬生まれの羊を排除する価値観など、人間社会を映し出す比喩表現も見られ、そこは些か小賢しい気がしないでもなかったです。それでも、冬生まれの子羊がデリー巡査に重要なヒントを与える手助けをしたり、最後は羊たちの仲間に入れてもらえたり、実に後味の良い終わり方をするので、全体として観れば好印象を残しました。

 

今回は忍者モノについて。現代劇の「忍者部隊 月光」を除けば、初めて時代に即した忍者モノをテレビで見たのは「風のフジ丸」の再放送だったと思います。いつも番組の最後には本間千代子を聞き手にして忍術の解説をしていましたっけ。自宅にテレビがあるにも関わらず、夕方に放映されていたこの番組を、何故か1歳下の友人宅で毎週見ていました。どのような経緯でそのような習慣になっていたのか、今となっては思い出せませんが・・・。

 

その次に興味を引いたのは「仮面の忍者 赤影」でした。横山光輝の原作を読んでいませんでしたが、この当時は怪獣モノの延長で見ていた気がします。また、悪役で鳴らす天津敏を意識したのも「赤影」が最初で、その憎々しい存在感は子供心ながら印象に残りましたよ。

 

青影を演じていた金子吉延は、他にも「河童の三平 妖怪大作戦」などに出演していた子役で、「だいじょ~ぶ」と言いながら独特のポーズをするのが、子供たちにはウケていました。同じ金子姓でも「悪魔くん」「ジャイアントロボ」に出演していた金子光伸は女子ウケする子役でしたが、ボンクラな雰囲気のある金子吉延のほうに親近感がありました。

 

藤子不二雄原作の「忍者ハットリくん」の実写版も放映されていまして、「忍者ハットリくん+忍者怪獣ジッポウ」では、中学生の松坂慶子がハットリくんの居候先の長女役で出演していました。一時期、ハットリくんの敵役のケムマキけんぞうが杉良太郎ではないかと噂されましたが、別人でしたね。登場人物のネーミングも気が利いていて、教師役の花岡実太(鼻を齧った)、新珠下駄代(あら、魂消たよ)など、可笑しみがありました。

 

マンガの世界で言えば忍者モノには白土三平は欠かせなく、当然アニメ化された代表的な二作があります。ひとつは「サスケ」で、主人公が少年忍者という点では「風のフジ丸」と同じながらも、思い入れがあるのは「サスケ」のほうです。体格にハンデのある子供が忍法を駆使して、敵を倒す点に快感を覚えたと思います。その一方で、己の未熟さから忍者に憧れる子供たちを死なせてしまう苦さや、良かれと思ってしまったことが裏目に出る皮肉な面も描いており、必ずしも勧善懲悪にしていない点が、子供に媚びない日本のアニメの良さであることが感じられました。

 

もうひとつの「忍風カムイ伝」は水原弘の主題歌からしてグッときます。抜け忍として常に狙われる設定が緊張感を持続させ、話を面白くしています。特に「暗鬼」の回では、川近くの小屋で天候の回復を待つ中、誰が追っ手なのか分らぬまま、一人また一人と死んでいき、最後はカムイ一人が残って・・・という話でアガサ・クリスティの「そして誰もいなくなった」を連想させます。追っ手の正体がまさか?という意表を突き、屈指のミステリーとなっています。

 

お時間があればご覧ください

 

他にも小学6年生の頃に「変身忍者 嵐」が放映されていましたが、子役時代の林寛子が出演していたにも関わらず、こちらは何故か全く見ていませんでした。同じ時期に放映されていた「快傑 ライオン丸」で満足しちゃっていたからかなぁ・・・。

SAKAMOTO DAYS 公式サイト

 

映画.comより

かつて「史上最強」と恐れられた殺し屋・坂本太郎は、コンビニで働く女性・葵に一目ぼれして恋に落ち、殺し屋をあっさりと引退する。結婚と娘の誕生を経て個人商店「坂本商店」の店長となった彼は、家族との幸せな日々を送るなかで、かつての面影がないほどに太っていた。そんなある日、坂本に突如として10億円の懸賞金がかけられ、世界中から刺客が襲いかかってくる。坂本はかつての部下であるエスパー能力者シンを相棒に、平和な日常を守るべく立ち上がる。

 

製作:『SAKAMOTO DAYS』製作委員会

監督・脚本:福田雄一

アクション監督:田渕景也

原作:鈴木祐斗

撮影:小島悠介

美術:高橋努

音楽:瀬川英史

出演:目黒蓮 高橋文哉 上戸彩 横田真悠 塩野瑛久 渡邊圭祐 桜井日奈子 安西慎太郎

             戸塚純貴 八木勇征 生見愛瑠 北村匠海 小手伸也 加藤浩次 津田健次郎 吉本実由

2026年4月29日公開

 

漫画原作を読まず、テレビアニメも見ていない状態で、この映画に臨みました。予告編からあらかじめ荒唐無稽なアクション映画であることは承知していました。アクション自体は海外の『ジョン・ウィック』、国内の『ベイビーわるきゅーれ』などで見慣れているので、然程驚きはありません。ただ、さすがにそんな物で飛び道具や刃物に対して防御できないでしょと思わせる描写が目につき、何でもかんでも荒唐無稽で済ませば許されるとは思うなよと言いたくもなりました。

 

また、上戸彩が目黒蓮に殺し屋をやめさせようとする場面で、ある危険な行動を起こすのですが、そこまで危険を冒す必要はないし、寧ろ主人公を欺いた上で命の大切さをアピールしたほうがスマートな演出のように思えましたよ。実際、目黒蓮は上戸彩を助けようとして間に合わなかったですし・・・。他にも笑いを取りに行く場面で、私にはスベっているようにしか思えなく、福田雄一の作品を何本か観ている者としては、そもそも監督とは感性が合わないのかもしれません。

 

それでも、上戸彩は40歳過ぎても若々しい上に愛らしく、本作ではこの点だけは良かったと言ったら、作り手に怒られるかな?今回は殺し屋を殺していく黒幕の正体が分かったところで終わっていて、まだ決着がついていないため続きがありそうですね。

プラダを着た悪魔2 公式サイト

 

映画.comより

ニューヨークの一流ファッション誌「ランウェイ」のカリスマ編集長として、ファッション業界の頂点に君臨するミランダ。かつてそのアシスタントに採用され、厳しく完璧主義な彼女のもとで奮闘する日々を過ごしたアンディは、現在は報道記者として活躍していた。そんなある日、ミランダとその右腕ナイジェルが危機に直面していることを知ったアンディは、特集エディターとして「ランウェイ」編集部に舞い戻る。さらに、アシスタント時代の同僚エミリーとも再会するが、彼女はラグジュアリーブランドの幹部として「ランウェイ」存続の鍵を握る存在となっていた。それぞれの夢と野望がぶつかり合うなか、事態は思わぬ方向へと展開していく。

 

製作:アメリカ

監督:デヴィッド・フランケル

脚本:アライン・ブロッシュ・マッケンナ

原作:ローレン・ワイズバーガー

撮影:フロリアン・バルハウス

美術:ジェス・ゴンコール

音楽:セオドア・シャピロ

出演:メリル・ストリープ アン・ハサウェイ エミリー・ブラント スタンリー・トウッチ

2026年5月1日公開

 

アンディは高級ファンション誌「ランウェイ」の仕事を辞めた後、報道畑で働き続けていましたが、栄えある受賞式の会場で人員整理とチームの解体をメールで告げられ失業してしまいます。折しも、カリスマ編集長のミランダも問題のある企業を絶賛する記事を「ランナウェイ」誌に載せたことから、広告主から苦情が殺到し自身の立場が危うくなります。

 

ファッション誌への批判が他部門にも影響が及ぶのを怖れたオーナーは、アンディを特集ページの担当者にすることをエサに直々にスカウトし(これも実は裏にカラクリがあり)、事態の収束を図ろうとします。古巣に戻ったアンディが20年ぶりにミランダとの再会を喜ぶのに対し、ミランダは些か冷ややかな反応。アンディが新たな職に就いたことによって、今までその地位に居た女性が職を失うことをあからさまに示す意地の悪さが20年経っても変わっていません(笑)。

 

アンディはミランダやナイジェルと共に広告主の元に謝罪に赴き、そこでかつて「ランウェイ」で一緒に働いていたエミリーが小売業に転身していたことを知ります。エミリーは広告を出している立場から代償を求め強気の交渉を行なってきます。昔のよしみで・・・といった具合にはならず、あくまでビジネスライクに徹します。尤も、エミリーにも強気に出る理由が終盤になって明らかになるのですが・・・。相手に譲歩し過ぎるミランダに対しアンディは不満をぶつけますが、ミランダはアンディを車に同乗させず地下鉄で帰れと命じるのがちょっと笑えます。

 

アンディの書いた謝罪文によって事態は一旦収束したにも関わらず、ミランダはそのことを素直に認めようとはしません。それでも、なかなかインタビューに応じようとしなかった著名人のインタビューをアンディが取り付けたことによって、ミランダも彼女の実力を認めるようになります。そうこうするうちに、今度は社内のある人物の急変によって、「ランウェイ」自体の存続が危ぶまれることになると言うのが、大まかな話の流れです。

 

前作から20年経っても、主要キャストの4人(アン・ハサウェイ、メリル・ストリープ、エミリー・ブラント、スタンリー・トゥッチ)が引き続き出演したことで、味わいのある作品に仕上がっていました。ミランダの嫌味を含んだ毒舌振りは相変わらずで、コンプラの点から度々アシスタントが口を挟んで注意してくるのが20年前とは違うところでしょうか。ただし、本人もある程度失言だということは自覚しているようで、毒舌にしても前作ほどの辛辣さは影を潜めています。

 

ナイジェルは前作同様、アンディからの不満のはけ口と緩衝材の役割を果たし、アンディとミランダとの潤滑油の存在にもなっています。また、劇中では出版界の不況を裏づけるように買収話も持ち上がり、紙媒体を続けることの難しさも窺えます。尚、本作ではある大物のカメオ出演があり、予告編やチラシなどでも伏せられていただけに、ちょっとした驚きがありした。

 

 

 

私のせいではありません 水生大海

 

新潮社サイトより

美大の同級生だった陽向、瑠璃、未緒、乙羽。四人展を開催するくらい仲が良かったが、卒業後に現れた男の存在が関係を歪ませる。久しぶりの再会の場となった瑠璃の結婚式で明かされた、六年前に大学で起きた事件の真相とその罪とは。ギャラリーストーカー、セクハラ、アカハラなど、美術業界の闇とタブーを炙り出す衝撃作。

 

この著者は基本的に話の転がし方が巧みです。本書は結婚披露宴前に美術大学在籍中に起きた事件の話題になり、それが導入部となり、美大の同級生である陽向、瑠璃、美緒、乙羽、そして父親を敬愛していた叶恵の話が綴られていきます。セクハラ疑惑の美大教授の身に起きた事件に始まり、死んだはずのストーカー男が玉の輿に乗った女性の挙式に現れ、更にストーカー男の被害を受けていた女性が美大時代の同級生からデザインの盗用と仕事の横取りをされ、おまけにストーカー男の娘が様々な誤解から恨みを抱き、被害者女性に復讐を果たそうとすると言った具合に、思わぬ方向に飛び火するため片時もページから目を離せなくなります。登場人物の回想によって過去と現在進行形のドラマが交錯する臨場感も然ることながら、枕の部分の教授のセクハラ疑惑が裁判を通して後日譚として白日の下に晒される辺りも爽快感があります。また、恥ずかしながらこの小説を読んで、作品の購入をエサに創作者に付き纏うギャラリーストーカーなる者の存在を初めて知りました。作品を評価するのでなく、容姿で判断されるのは、時代を問わず女性にとって厄介ですね。

 

犯人はキミが好きなひと 阿津川辰海

 

ポプラ社サイトより

名探偵にあこがれる女子高校生・瀧花林。彼女の幼馴染である幣原隆一郎には、ある「特異体質」がある。それは、隆一郎が好きになった女性は、必ず何らかの犯罪に関与していることである。悪女にどうしようなく惹かれる隆一郎(花林いわく、「女の趣味が悪い」)の特殊体質をヒントに、花林は数々の事件の謎を解き明かす。そして、恋は衝撃の結末を迎える――!? 

 

本書は幼馴染の好きになった女性が悉く罪を犯すことから、名探偵に憧れる少女が彼の「特異体質」を利用して、事件を解決していく短編集です。幼馴染の好きな女性を特定できれば、後は犯行手段と動機を見つければOKとなる訳で、倒叙ミステリーの変形と言えます。10代の少女が探偵役となるため、自ずとライトなミステリーの作りになっており、ラブコメ要素も意外と濃いです。伏線と回収はしっかりしているため、ミステリーとして問題はないものの、阿津川辰海が何もこの分野に手を出さなくても・・・という思いもあります。まぁ、最終話のオチを読む限りでは、シリーズ化はなさそう(と思いたい)。

 

君のクイズ 小川哲

 

朝日新聞出版サイトより

生放送のTV番組『Q-1グランプリ』決勝戦に出場した三島玲央は、対戦相手・本庄絆が、まだ一文字も問題が読まれぬうちにボタンを押し正解し、優勝を果たすという不可解な事態を訝しむ。いったい彼はなぜ、正答できたのか? 真相を解明しようと彼について調べ、決勝戦を1問ずつ振り返る三島はやがて――。

 

本書は2年前に読んでいますが、近々映画が公開されるので記事にしました。この小説ではクイズ番組内で不正が働いていたのか?もし、働いていなかった場合、どんな方法によってあらかじめ出される問題が想定できたのか?この2点に興味が絞られます。犯罪こそ発生していないものの、一見不可能と思われる犯罪を合理的に解決する、本格ミステリーの面白さが味わえます。クイズには問題の中で答えが確定するポイントがあり、問題が 読まれる前に無限に存在していた選択肢は、問題が読まれるにしたがって選択肢の数を減らしていきます。クイズ番組ではしばしば回答者が問題を読んでいる途中に、ボタンを押して解答することがありますが、最終的にどんな問題なのか確定できたタイミングでボタンを押しており、そのタイミングを見極めるのが重要となっています。しかし、本庄の場合は問題を一言も発しないうちに解答できており、この点が最大の謎となっています。その謎も最後は三島の論理的な推理によって解決されます。しかし、本庄はクイズに関して次のビジネスに繋げるためのステップとしてしか捉えてなく、そのことが三島にとってほろ苦い結末となって返ってきます。本書はクイズの裏側を覗ける楽しみがあり、答えを導き出すためにクイズプレーヤーの思考回路は、このような構造になっているのかが分かる点も興味深かったです。

 

DVDあらすじより

サウス・フロリダに事務所を構える弁護士ネッド・ラシーンは、ある暑い晩、白いドレスの美しい女に出逢う。彼女の名はマティ・ウォーカー。その日以来どうしても彼女を忘れられないネッドはついに彼女を探し出し、互いに激しい欲望をぶつけ合う。誰にも知られることのない情事は、やがてマティの20歳も年上の夫の殺人計画を紡ぎ出していく・・・。

 

製作:アメリカ

監督・脚本:ローレンス・カスダン

撮影:リチャード・H・グライン

美術:ビル・ケニー

音楽:ジョン・バリー

出演:ウィリアム・ハート キャスリン・ターナー リチャード・クレンナ ミッキー・ローク

1982年2月27日公開

 

キャスリン・ターナーの裸が見られるのは勿論嬉しいですが、彼女のヌードがなくても十分官能的な犯罪映画です。キャスリンに翻弄されるウィリアム・ハートが女たらしの弁護士役なのも、的を射た適役に思えます。

 

ネッドが最初からマティに手玉に取られていることは、マティが夫殺しの話をネッドから持ちかけるよう仕向けていることからも十分伝わってきます。ネッドに寝取られる富豪がリチャード・クレンナなのも、「ランボー」のトラウトマン大佐役だったことを思うと、味わい深い感じがしてきます。

 

ただ、隠微なムード満点なのに、完全犯罪を目論むにしては、爆弾を使用するのは無粋な気がしないでもありません。尚、この映画では若き日のミッキー・ロークも拝め、主人公の犯罪に加担する爆弾魔の役で出演しています。

 

マティは夫が死ねば、黙っていても半分遺産が貰えるにも関わらず、欲を掻いて全財産を自分の物にすべく、ネッドに相談せずに小細工を弄したために、ネッドと仲の良い刑事や検事から二人とも疑われる羽目になります。殊に遺産相続の権利のある姪が、事件前に二人の情事を目撃しているだけに、ネッドは窮地に立たされます。ここで彼の女たらしの才能の一端が発揮され、少女にも有効なのかとちょっと笑えます。

 

一方、マティは共犯のネッドも亡き者にしようと考えていて、罠を仕掛けてきます。ネッドも彼女の意図に気づき、そのことを知った上で、どのように行動するのかが終盤の見どころとなります。まぁ、キャスリン・ターナーを悪女に配した時点で、自ら殊勝に死んでいくとは思えず、ネッドが彼女の隠し技に気づいた時には後の祭りというオチになっています。

 

本作はビリー・ワイルダーの「深夜の告白」を始めとする、愚かな男が悪女の魅力に取り憑かれ利用された挙句に、悲惨な末路を迎える犯罪映画の系譜にあたります。ただし、男が女たらしのキャラクターのせいか自業自得の感が強く、従来の作品の主人公のように気の毒な感じはあまりしません。それでも、ローレンス・カスダンは最後まで興味を惹きつける演出をしていて、初監督作としては上々の出来だったと思います。

 

DVDあらすじより

若く美しい盲目の主婦スージー・ヘンドリックス。いつものように夫を送り出し、安全で居心地の良い自宅のアパートにいたが、彼女しかいないはずの部屋で人の気配を感じる。「なにかおかしい!」彼女は急に不安を感じはじめる。しかしそれは、これから始まる恐怖の幕開けにすぎなかったのだ!

 

製作:アメリカ

監督:テレンス・ヤング

脚本:ロバート・キャリントン ジェーン・ハワード・キャリントン

原作:フレデリック・ノット

撮影:チャールズ・ラング

音楽:ヘンリー・マンシーニ

出演:オードリー・ヘップバーン アラン・アーキン リチャード・クレンナ

              ジャック・ウェストン エフレム・ジンバリスト Jr.

1968年5月1日公開

 

写真家のサム(エフレム・ジンバリストJr.)は、飛行機で知り合ったリサ(サマンサ・ジョーンズ)から人形を預かります。その人形にはヘロインが仕込まれていましたが、そのことを知らない彼は自宅に持ち帰ってしまいます。

 

犯罪組織のリーダーのロート(アラン・アーキン)はマイク(リチャード・クレンナ)、カーリノ(ジャック・ウェストン)を雇い、サムからヘロインを取り戻そうとします。しかし、留守中のサムの自宅の部屋からは人形が見つからず、やがて彼の盲目の妻スージー(オードリー・ヘップバーン)が3人の存在を知らずに帰宅します。

 

翌日、サムが家を出て行くと、マイクがサムの海兵隊時代の仲間と偽って探りを入れ、そのうちロートが初老の男に化けて現れ、自分の息子の妻がよその男と不貞を働いているとスージーに揺さぶりをかけてきます。また、ロートが警察に電話する振りをして警官を装ったカーリノを呼び寄せ、人形の在処を聞き出そうとします。

 

最初は動揺していたスージーでしたが、徐々に落ち着きを取り戻し、彼女の前に現れた3人に違和感を覚えていきます。そして、同じアパートに住む少女グローリア(ジュリー・ハロッド)の手を借りて、自分の身に起きている状況を掴もうとするのですが・・・。

 

人形を巡る手の込んだサスペンスの組み立てがまず面白いです。盲人のスージーを騙して人形を手に入れようとする三人組に対して、彼女が盲人の特技を活かして、彼らの怪しさに気づいて行く過程自体がハラハラさせます。終盤の暗闇になってからの展開がまた圧巻の描写で、オードリー・ヘップバーンがアラン・アーキンに足を掴まれる場面では、叫び声をあげそうなほど強烈な演出をしています。

 

この映画ではヒロインがハンディキャップを負うからこそ、危機に瀕した際に知恵と勇気を振り絞って乗り越えていく姿に、常人の主役以上に心を揺さぶられます。特にか弱いイメージのあるオードリー・ヘップバーンだとその効果は絶大。本作は極上のスリラーであり、彼女の後期の代表作の一本でもあります。また、オードリーがヒロインとして最後の輝きを放った作品と言えるでしょう。

7年前に名画座で観た映画ですが、当時は記事にしそびれて、今回蔵出しをしました。

 

シネマヴェーラ渋谷

俳優が監督するとき より

 

製作:日活

監督:菅井一郎

監修:吉村公三郎

脚本:新藤兼人

撮影:峰重義

美術:水谷浩

音楽:伊福部昭

出演:三國連太郎 乙羽信子 高杉早苗 山内明 石黒達也 加東大介

            十朱久雄 殿山泰司 三島雅夫 小杉勇 滝沢修 伊藤雄之助

1954年9月21日公開

 

加地茂樹(三國連太郎)、里村東介(山内明)、奈々子(乙羽信子)の三人は、ドサ廻りの劇団に所属しながら、地方公演を続けていました。しかし、公演は不入り続きで、座長の林(清水元)は客を呼ぶために、とうとう女優にストリップの真似事を要求し出します。そのことに憤慨した3人は劇団を脱退し、茂樹と東介はエキストラ等のアルバイトをして働き、奈々子は父親の経営する飲み屋で手伝いをするようになります。

 

ある日、茂樹は新映のニューフェイスに応募し、宮森宣伝部長(加東大介)と沖山プロデューサー(石黒達也)の目に留まります。彼は映画界に入り、一躍ベラテン女優の京極真弓(高杉早苗)とのコンビで圧倒的な人気を得ました。世間からもてはやされた茂樹は、真弓を始めとする乱脈な愛欲生活を送り、彼を愛する奈々子に冷たい仕打ちをするようになります。

 

茂樹はスターの人気に胡坐をかき、自分の仕事に勝手な注文をつけ、また出演料の増額を要求したことで、次第に会社の幹部からは反発する声が上がり出します。重役の根岸(三島雅夫)は、思い上がった茂樹に見切りをつけ、彼の代りに新人の谷徹郎(黒田剛)を売り出します。慌てた茂樹は東亜映画へ出演を依頼したものの、所長(清水一郎)から真弓とのコンビならば起用すると言われます。彼は真弓を誘いますが、会社に反抗したポッと出の新人を相手にするはずはありませんでした。

 

一方、東介は地道な活動が功を奏し、脇役として演技を認められ、奈々子と結婚をするという順調な道を歩んでいました。誰からも相手にされない落ち目の茂樹は、酒場で谷に会い喧嘩を売りますが、バーテンに殴り倒されます。顔中に包帯を巻いた茂樹は、東介と奈々子の結婚式に駈付け、二人に祝辞を述べますが、居並ぶ人々の好奇な眼差しが耐えられず、逃げる様に会場から去っていきます。

 

映画界の内幕を描いた菅井一郎の初監督作です。初めての監督作品と言っても、演出監修は吉村公三郎があたり、スタッフも脚本に新藤兼人、音楽に伊福部昭と言った凄腕を揃えているので、才気を感じさせなくとも手堅い作りに仕上げています。

 

ポッと出の新人俳優がメキメキ売り出すうちに、調子こいて天狗になった挙句、ぼろ雑巾のように捨てられるのは身から出た錆。重役の愛人である女優に手をつけたのは些かご愛嬌ですが、ギャラを吊り上げるために、撮影をボイコットするのはシャレになりません。

 

撮影所の所長が最後通告ともとれる忠告をしたのにも関わらず、タカをくくるに至っては自業自得と言うもの。この傲慢極まりない態度と軽率さ、どこか既視感があると思ったら、「八甲田山」で三國が演じた少佐そのままではないですか(笑)。茂樹は事の重大さに気づいても後の祭り。ライバル会社に売り込みをかけても、京極真弓とセットでなければダメと釘を刺され、前の会社に頭を下げて戻ろうとしても、幹部連中は今更どのツラ下げてと冷ややかな対応。そりゃ、そうだ。

 

友人と元カノの結婚式に出席しても、未だにスターであるかのように見栄を張って、時間がないからと早々に退散する惨めな姿を曝します。この場面、ウィリアム・ワイラーの「黄昏」におけるローレンス・オリヴィエを思い出します。「黄昏」は一文無しになったオリヴィエが、元カノに金を借りようとして、その屈辱に耐えきれず逃げ出してしまいましたが、情けなさでは双璧と言っていいかもしれませんね。

 

傲慢になった男が度の過ぎた結果、惨めな結末を迎える展開は、対象となる人物が二枚目であればあるほど、ボンクラ野郎にとっては大好物。その点、この時期の三國は色男である上に、映画会社の専属俳優でなかったこともあり、ハマリ役だったと言えるでしょう。

こうのすシネマ

午前十時の映画祭 より

 

チラシより

士郎正宗による原作漫画を鬼才・押井守が映画化。2029年、ネット社会で多発するコンピュター犯罪、サイバーテロに対抗するために結成された超法規部隊[公安9課]に属する草薙素子たちは、謎の凄腕ハッカー“人形使い”を追う。

 

製作:講談社 バンダイビジュアル MANGA ENTERTAINMENT

監督:押井守

脚本:伊藤和典

原作:士郎正宗

撮影:白井久男

美術:小倉宏昌

音楽:川井憲次

出演(声):田中敦子 大塚明夫 山寺宏一 仲野裕 大木民夫 玄田哲章 家弓家正

1995年11月18日公開

 

2029年、高度に発達したネット社会において、サイバーテロが多発していました。そうした犯罪に対応するべく、政府は荒巻部長を責任者、サイボーグの草薙素子少佐を隊長とする首相直属の特殊部隊・公安9課、通称“攻殻機動隊”が誕生しました。

 

そんなある日、不特定多数の人間の電脳に侵入して自在に操り犯罪を重ねる、正体不明の国際的ハッカー“人形使い”が現われるという情報が公安9課にもたらされます。人形使いは外務大臣の通訳の電脳に侵入してきたのに対し、公安9課は侵入回線を逆探知し、草薙、バトー、トグサらが犯人逮捕に向かいます。

 

しかし、犯人らしき男も人形使いに操られた傀儡に過ぎませんでした。この事件を機に、サイボーグ化された草薙は“人形使い”を追うと共に、自らの存在意義を思索し始めるのですが・・・。

 

テレビ版はCSで放映された際に、第1シリーズと第2シリーズの途中まで見たことはありますが、映画版は今回が初めて。生命とは何ぞや?という哲学的な深いテーマが隠されているのかもと思いつつ、アクションに目が奪われ、83分の上映時間が思ったより短く感じられました。

 

テレビ版を見ている時には、義体化されていない生身のトグサが、何故公安9課に所属しているのか疑問に思っていた点も、この映画版で草薙素子の口から語られると腑に落ちる感じでした。また、テレビ版ではカワイイ存在だったタチコマは、映画版ではヒロインたちを襲う凶暴な存在になっていて、あれは似て非となる物と思いたい(笑)。

 

序盤には日本人が踏み込めない移民による貧民地区が描写されていて、野放図に移民を受け入れる政策を続ける現在の行く末を暗示しているようにも思えました。

久しぶりに海外ミステリーを取り上げてみました。

 

ハウスメイド フリーダ・マクファデン

 

裏表紙あらすじより

前科持ちのミリーが手にいれた、裕福な家庭でのハウスメイドの仕事。だが、この家は何かがおかしい。不可解な言動を繰り返す妻ニーナと、生意気な娘セシリア。夫のアンドリューはなぜ結婚生活を続けていられるのだろうか?ミリーは屋根裏部屋を与えられ、生活を始める。しかし、この部屋には・・・。そして、家族にまつわる真相が明かされるや、それまでに目にしたものすべてがひっくり返る。恐怖と衝撃のエンタメ小説。

 

本書は三部構成になっており、第一部では仮釈放中のミリーの視点から、ニーナ・ウィンチェスターの理不尽な仕打ち、彼女の娘セシリアの我儘、ウィンチェスター家に潜む闇の部分が語られて行きます。第二部になるとニーナの視点に移り変わり、今まで謎とされていた部分が明らかになり、彼女の異様な振る舞いも腑に落ちてきます。人物の視点を切り換えることによって得られる効果が素晴らしく、第一部でミリーによって語られた光景が第二部のニーナの視点によって一変し、登場人物の印象も劇的に書き換えられます。そして、第三部ではミリーとニーナがそれぞれ抱えている問題を如何に処理するかが焦点になってきます。騙される快感を得たいミステリー好きには堪らない逸品です。尚、「ハウスメイド」はポール・フェイグ監督、シドニー・スウィーニー主演で映画化されており、昨年の12月にアメリカで既に公開されています。

 

終止符には早すぎる ジャドスン・フィリップス

 

裏表紙あらすじより

大都会ニューヨークの夜。いままさにアパートメントビルのテラスから飛び降りようとしている若い娘が一人。警官や近親者の説得にもかかわらず、彼女の決意は固かった。誰もが固唾をのみ見守るなか、殺人事件の容疑をかけられ姿を消していた富豪投資家が現れ、彼女に近づいていく……。“知の巨人”植草甚一が『雨降りだからミステリーでも勉強しよう』で絶賛。NYミステリーの隠れた名作。

 

最近は海外の埋もれたミステリーを発掘する作業が盛んで、昨年ミステリーランキングを席捲したリチャード・デシングの「私立探偵 マニー・ムーン」もその一例。本書も1962年にアメリカで刊行され、植草甚一が自身のコラム本「雨降りだからミステリーでも勉強しよう」で絶賛していました。裏表紙のあらすじは、クライマックスの一場面を描写しただけで、そこに到るまでには紆余曲折のドラマがあります。発端は弁護士のコーネリアス・ライアンが依頼人の富豪投資家のマシュー・ヒグビーから会わせたい女性が居るからと、意中の女性フランシス・テリルのアパートメントに連れて行かれたところ、部屋が荒らされ、フランシスは顔に傷を負わされ、彼女の娘のドーンは異様に怯えるという事態に遭遇することから始まります。やがて、二人組の犯人の片割れが、ヒグビーが名誉棄損で告訴しようとするリー・フーパー将軍の甥のデニスであることが判明し、彼が殺害されたことにより、ヒグビーは容疑者に疑われ逃亡する羽目に陥ります。この経緯から如何にドーンの自殺騒動まで発展するになるのかは読んでみてのお楽しみですが、テンポ良くメリハリの利いた物語が展開するため、最後まで息つかせず一気に読めました。

 

夜明けまでに誰かが ホリー・ジャクソン

 

裏表紙あらすじより

高校生のレッドは友人3人と、お目付け役の大学生2人とキャンピングカーで旅行に出かけていた。だが人里離れた場所で何者かに狙撃され、車に閉じ込まれてしまう。午前零時、狙撃者から連絡が。その人物は6人のうちの誰かが秘密を抱えている、命が惜しければそれを明かせと要求してきた。制限時間は---夜明けまで。

 

電波の届かぬ場所でキャンピングカーのタイヤと燃料タンクを破壊され、おまけに外からは狙撃者の銃が狙っている状況から、孤立した状況で犯罪が起きるクローズドサークルミステリーの様相を呈しています。ただし、犯人がキャンピングカーの中にいる6人でないことは自明の理ながらも、協力者は居るかもしれないと疑心暗鬼に駆られます。しかも、狙撃者の狙いは6人の中にいるうちの一人の秘密を、夜明けまでに探り出せという特殊なもの。この極限状況から次第に6人の秘密と本性が炙り出されていくのが、本書の読みどころのひとつになっています。特にお目付け役の大学生のオリヴァーのクズっぷりが最低で、この人物が物語を面白くしています。彼の立てた脱出方法が悉く失敗したにも関わらず、自分の非を認めず、自分以外の者に責任転嫁する独善ぶりに、読んでいる最中でもこいつをボコボコにしたくなります(笑)。ホラー映画ならば、真っ先に死亡フラグが立つキャラクターですが、ここでは終盤まで6人の中では犠牲者が出ず、重傷者が出ても結果的に殺害されるのは最小限に留まっています。この物語では語り手のレッドだけでなく、他の5人も秘密や罪悪感を抱えていて、良心と保身のせめぎ合いをしながら、緊急事態に対処しようとします。そこかしこに伏線が巧妙に張られていて、レッドの母親の殺害の真相も、今回の事件を通して白日の下に曝されます。残酷な物語である反面、一筋の光明も窺える終わり方でした。