久しぶりに海外ミステリーを取り上げてみました。
ハウスメイド フリーダ・マクファデン
裏表紙あらすじより
前科持ちのミリーが手にいれた、裕福な家庭でのハウスメイドの仕事。だが、この家は何かがおかしい。不可解な言動を繰り返す妻ニーナと、生意気な娘セシリア。夫のアンドリューはなぜ結婚生活を続けていられるのだろうか?ミリーは屋根裏部屋を与えられ、生活を始める。しかし、この部屋には・・・。そして、家族にまつわる真相が明かされるや、それまでに目にしたものすべてがひっくり返る。恐怖と衝撃のエンタメ小説。
本書は三部構成になっており、第一部では仮釈放中のミリーの視点から、ニーナ・ウィンチェスターの理不尽な仕打ち、彼女の娘セシリアの我儘、ウィンチェスター家に潜む闇の部分が語られて行きます。第二部になるとニーナの視点に移り変わり、今まで謎とされていた部分が明らかになり、彼女の異様な振る舞いも腑に落ちてきます。人物の視点を切り換えることによって得られる効果が素晴らしく、第一部でミリーによって語られた光景が第二部のニーナの視点によって一変し、登場人物の印象も劇的に書き換えられます。そして、第三部ではミリーとニーナがそれぞれ抱えている問題を如何に処理するかが焦点になってきます。騙される快感を得たいミステリー好きには堪らない逸品です。尚、「ハウスメイド」はポール・フェイグ監督、シドニー・スウィーニー主演で映画化されており、昨年の12月にアメリカで既に公開されています。
終止符には早すぎる ジャドスン・フィリップス
裏表紙あらすじより
大都会ニューヨークの夜。いままさにアパートメントビルのテラスから飛び降りようとしている若い娘が一人。警官や近親者の説得にもかかわらず、彼女の決意は固かった。誰もが固唾をのみ見守るなか、殺人事件の容疑をかけられ姿を消していた富豪投資家が現れ、彼女に近づいていく……。“知の巨人”植草甚一が『雨降りだからミステリーでも勉強しよう』で絶賛。NYミステリーの隠れた名作。
最近は海外の埋もれたミステリーを発掘する作業が盛んで、昨年ミステリーランキングを席捲したリチャード・デシングの「私立探偵 マニー・ムーン」もその一例。本書も1962年にアメリカで刊行され、植草甚一が自身のコラム本「雨降りだからミステリーでも勉強しよう」で絶賛していました。裏表紙のあらすじは、クライマックスの一場面を描写しただけで、そこに到るまでには紆余曲折のドラマがあります。発端は弁護士のコーネリアス・ライアンが依頼人の富豪投資家のマシュー・ヒグビーから会わせたい女性が居るからと、意中の女性フランシス・テリルのアパートメントに連れて行かれたところ、部屋が荒らされ、フランシスは顔に傷を負わされ、彼女の娘のドーンは異様に怯えるという事態に遭遇することから始まります。やがて、二人組の犯人の片割れが、ヒグビーが名誉棄損で告訴しようとするリー・フーパー将軍の甥のデニスであることが判明し、彼が殺害されたことにより、ヒグビーは容疑者に疑われ逃亡する羽目に陥ります。この経緯から如何にドーンの自殺騒動まで発展するになるのかは読んでみてのお楽しみですが、テンポ良くメリハリの利いた物語が展開するため、最後まで息つかせず一気に読めました。
夜明けまでに誰かが ホリー・ジャクソン
裏表紙あらすじより
高校生のレッドは友人3人と、お目付け役の大学生2人とキャンピングカーで旅行に出かけていた。だが人里離れた場所で何者かに狙撃され、車に閉じ込まれてしまう。午前零時、狙撃者から連絡が。その人物は6人のうちの誰かが秘密を抱えている、命が惜しければそれを明かせと要求してきた。制限時間は---夜明けまで。
電波の届かぬ場所でキャンピングカーのタイヤと燃料タンクを破壊され、おまけに外からは狙撃者の銃が狙っている状況から、孤立した状況で犯罪が起きるクローズドサークルミステリーの様相を呈しています。ただし、犯人がキャンピングカーの中にいる6人でないことは自明の理ながらも、協力者は居るかもしれないと疑心暗鬼に駆られます。しかも、狙撃者の狙いは6人の中にいるうちの一人の秘密を、夜明けまでに探り出せという特殊なもの。この極限状況から次第に6人の秘密と本性が炙り出されていくのが、本書の読みどころのひとつになっています。特にお目付け役の大学生のオリヴァーのクズっぷりが最低で、この人物が物語を面白くしています。彼の立てた脱出方法が悉く失敗したにも関わらず、自分の非を認めず、自分以外の者に責任転嫁する独善ぶりに、読んでいる最中でもこいつをボコボコにしたくなります(笑)。ホラー映画ならば、真っ先に死亡フラグが立つキャラクターですが、ここでは終盤まで6人の中では犠牲者が出ず、重傷者が出ても結果的に殺害されるのは最小限に留まっています。この物語では語り手のレッドだけでなく、他の5人も秘密や罪悪感を抱えていて、良心と保身のせめぎ合いをしながら、緊急事態に対処しようとします。そこかしこに伏線が巧妙に張られていて、レッドの母親の殺害の真相も、今回の事件を通して白日の下に曝されます。残酷な物語である反面、一筋の光明も窺える終わり方でした。













