軍師官兵衛ネタバレ38話「追い込まれる軍師」⑤

軍師官兵衛ネタバレ38話「追い込まれる軍師」④からの続き。

軍師官兵衛ネタバレ38話「追い込まれる軍師」⑤

大阪城の廊下。
おねと茶々が互いに侍女を引き連れて逆方向から歩いて来るが、どちらも道を開けない。
茶々はおねと顔を突き合わせると、無言のままで身を交わしそのまま通り過ぎて行く。
口元には勝ち誇ったような微笑み。
おねの次女のマグダレナは「挨拶もせず無礼な！」と怒る。
おねは無言のまま官兵衛が待つ部屋へと到着した。

「暑気払いじゃ。召し上がれ。」
おねは、官兵衛に侍女に持って来させた瓜を勧めた。


おねは瓜が好きだった松寿の事を思い出すと
「松寿…いえ長政は息災ですか？」と尋ねた。
官兵衛＞「はっ。」
おね＞「宇都宮の一件には遠い大坂から気をもんでいました。」
官兵衛＞「ご心配をおかけし申し訳ございませぬ。」

「あの子があんな思い切った事をやり遂げるとは…。」と感じ入り、
「立派な跡取りになってくれれば私もうれしい限り。
あんな小さかった子共たちが皆立派な武将になっていく。」と、ここで溜息をつき一呼吸置くと
「それはよいのじゃが…。」と胸の内に広がる悩みを口にする。

「豊臣家は急に大きくなった。それが不安です。殿下は天下人になられてから少々人が変わった…。」
「お方様もおつらい事が多いのでございます。」とマグダレナが口を挟む。

「茶々様でございます。殿下のご執心ぶりは度が過ぎております。
三成殿などは茶々様に擦り寄る事で権勢を欲しいまま…。」
おねが二度ほど止めて、マグダレナは「言い過ぎました」と詫びた。

「信長様がお亡くなりになって殿下は瞬く間に天下をお取りになった。
家中をまとめるいとまもないほどに…。それゆえその家中が割れやせぬかと気がかりでなりませぬ。
官兵衛殿そなたが頼りなのです。」とおねは縋るような目で官兵衛を見る。


中津には肥後に向かう途中の加藤清正が立ち寄った。
清正の杯に酒を注ぎながら長政が言う。
「２５万石の大出世おめでとうございます！」
清正は
「これからは黒田家と加藤家今まで以上に深くつきおうていきたいものじゃ。」
と言ったが、これには訳があった。
清正は少し声のトーンを落とし
「おね様が肩身の狭い思いをされておる事は知っておろう？」と問うた。
茶々の事である。

清正＞「茶々様は所詮は小娘。元凶は裏で権勢を欲しいままにしておる三成じゃ。
あやつは我らを殿下から遠ざけようと躍起になっておる。
黒田が豊前の一揆で窮地に追いやられたのも三成が裏で手を回していたからじゃ。
長政！お前はわしや正則と同じくおね様に育てられた豊臣の身内じゃ。
これからは我らが共に力を合わせて豊臣の天下を支えていくのじゃ。」
長政＞「無論です。それがしの命はおね様と亡き半兵衛様にお救い頂いたもの。
豊臣家のためこの命捨てる覚悟は出来ております！」
清正＞「よう言うた！」
この二人の会話を又兵衛は、ちょっと難しい顔をして聞いていた。


一方家康はいまだ秀吉に従おうとしない関東の北条に上洛を促していた。
北条は秀吉の再三の催促を無視し上洛を渋り続けていた。

本多忠勝が「書状を出されては…？『これ以上先延ばしにするなら我が娘を返せ』と。」
と提案した。
「北条の嫡男に嫁がれた督姫様をでございますか？聞き入れるとは思えませぬが。」と井伊直政が言うと
榊原康政が「殿が北条を説いている事さえ大坂に伝われば聞き入れずともよいのだ。」と、
事の成り行きよりも、秀吉に忠義の態度を見せる事が肝心である事を教えた。
家康は「うむ…。」と頷く。
忠勝＞「九州が鎮まった今あの秀吉は必ず北条を討ちに出ます。北条と共倒れだけは避けねばなりませぬ。」
「分かっておる。」と言うと家康は、今、上洛の意思がある事を告げた。
正室に迎えた秀吉の妹の朝日が母の大政所の病気見舞いに行きたいとお望みだからとは、
形ばかりの建前で、
家康の腹の中には、秀吉の信頼を得る事と、それにもう一つ、会いたい人物がいたからだ。


京、聚楽第（じゅらくだい）
秀吉は「徳川殿。我が妹の我儘に付き添って下さり、かたじけのうござる。」
と家康を歓待した。
家康＞「もったいなきお言葉。大政所様のご快癒お祈り致しております。」
秀吉＞「かたじけない。…どうじゃ徳川殿。
暫くこちらでゆるりとしてこのわしと共に鷹狩りにでも参らぬか？」と秀吉は上機嫌で言う。
家康＞「是非。楽しみにしております。」

それから立ち上がると秀吉は家康の傍へ歩いてゆき
「ところで北条だ…。いまだ上洛しようとせぬ。舐められたものよ。
このわしを百姓上がりと侮っておるのであろう。」と話し掛けた。

家康＞「北条には我が娘が嫁いでおります。それがしが説き伏せ必ずや上洛させてみせまする。」
秀吉は「近頃わしも年のせいか気が短くなってのう。
わしの堪忍袋の緒が切れぬうちに上洛すればよいがのう…。」と睨みを利かせる。

「わざわざお呼び立てして申し訳ありませぬ。」
官兵衛が利休に呼ばれて茶室へ行くと待っていたのは徳川家康だった。
「お初にお目にかかる。徳川家康でござる。」
「黒田官兵衛にござる。」
家康＞「名高き軍師殿に是非一度お会いしたかった。」
官兵衛＞「それがしもお会いしとうございました。徳川様は戦で唯一殿下を破ったお方。
ご尊顔を拝す事ができ光栄の至りでございまする。」
家康は長久手の戦でござるか？あの戦には官兵衛殿がおらず誠ついておったわ。」と言って笑った。
「わしもお主のような軍師が欲しいものじゃ。」と言う家康。
「そう遠くないうちに戦のない世が訪れます。さすれば軍師など無用の長物。」と牽制する官兵衛。
家康＞「太平の世が来ると思うか？」
官兵衛＞「はっ。豊臣の天下を奪い取ろうとする者が現れぬ限りは…。」
家康＞「そのような大それた野心を抱く者などおらぬであろう。」
互いに笑い合う二人。

家康は黒い茶碗で茶を一服すると「先日こんな噂を耳にした。」と言って、
秀吉の噂話をする。

「ある時殿下がお伽衆に聞いたそうじゃ。
このわしが死んだら次の天下人は誰じゃと思う？ほれ申さぬか！」

ある者は「それは徳川様でござりましょう。」と言い、またある者は
「前田利家様です。」と答え、
もう一名は「いや毛利もおります。いやいや…。それに上杉も侮れませぬ。」と言ったが、
秀吉は笑いながら
「肝心な男を一人忘れてはおらぬか？
その男はこのわしが何日も何日も考えて考え抜いた策を瞬時に思いつく。
１００万の大軍を率い英知と器量を持つ男。」と言うと、
「…官兵衛じゃ。次に天下を取るのは官兵衛に違いない。」と申された――との
官兵衛にとっては血の気の引く話だった。


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