通信販売の返品については誤って理解している事業者が少なくありません~原則返品可能⇒返品特約が優先 | 個人経営者・女性起業家のための法律とWEBの基礎知識(神戸・大阪)

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法律とWEBの専門家、消費者法務コンサルタントの赤松です。消費者センターで11年間で15万件以上の相談を経験した元行政技術職員が、契約や取引の法律対応やWEB情報発信をサポートします。一般社団法人はりまコーチング協会 代表理事。ITコーディネータ。

特定商取引法の通信販売の規制の最後のルールは契約の解除、いわゆる返品のルールになります。
実は、この返品のルールを正しく理解していない事業者が少なくないのです。

例えば、「自己都合による返品なんて不可なのは当たり前だろう」と思いがちなのですが、そうではないのです。
法律の条文をしっかり読んで、原則と例外をしっかり理解して、それにのっとった表示をすることが思わぬ経済的な損失に対するリスク対応になるのです。

これを理解していないと、「30万円の高級家具が売れて、仕入れ10万を引いて、20万円の利益が出た」と喜んでも、返品されて、もうけそこなったばかりか、不良在庫と仕入れ代金の支払いが待っているという状況にもなりかねません。

通信販売はクーリングオフの対象外

特定商取引法には、訪問販売などの不意打ち性のある取り引きやマルチ商法のように複雑な取引については無条件で解約できるクーリングオフ制度がありますが、通信販売は不意打ち性もなく、じっくり自分の意志で商品を選択することができるのでクーリングオフの対象とはなっていません。
ただし、契約の解除(返品)についてのルールが定められています。

原則返品可能だが、返品特約が優先される

簡単に説明すると、原則として「商品を受け取った日から8日以内であれば返品可能」であるが、返品特約を表示していた場合は返品特約が優先される、ということです。ただし、返送料は購入者の負担になります。

つまり、届いた商品を見て、色合いや風合いがイメージと違ったなどの「自己都合」による返品につても、原則として認められることになりますが、「イメージ違いなどの自己都合による返品はできません」と返品特約を表示していれば、返品はできないことになります。

返品した場合は原状回復義務がある

もちろん、返品という契約の解除が成立すれば、クーリングオフと違って、お互いに「原状回復義務」が生じるので、開封済みであったり使用済みであったりのように商品価値が減損してしまえば返品できないことになります。

返品特約を表示する場合は容易に認識できる方法で表示する

この返品特約は顧客にとっては重要な項目であるので、「顧客にとつて見やすい箇所において明瞭に判読できるように表示する方法その他顧客にとつて容易に認識することができるよう表示すること」と定められています。

その具体的な方法については、「通信販売における返品特約の表示についてのガイドライン」に定められており、例えば、「最終確認画面に表示する」「埋没しないように12ポイント以上の文字や色文字・太文字などで表示する」などが示されています。
(参考)消費者庁・特定商取引法・通信販売・ガイドライン

改めて確認ですが「特定商取引法に基づく表示」をしていますか?

この返品特約は、「特定商取引法に基づく表示」として「特定商取引法第11条の通信販売についての広告」で定められていますので、この「特定商取引法に基づく表示」は改めて言いますが必須ということですね。

ライバルから揚げ足を取られないように

何度か書いていますが、法律を知って守ることは消費者からの信頼の証というだけでなく、ライバルから揚げ足を取られないという裏のリスク回避にもつながっています。

先にも書きましたが、返品特約を書いていないために、恐ろしいほどの注文をされたあげく、返品されて、保管場所もなく、資金繰りが行き詰まることも十分にありうる話ですね。

ちなみに、友人から相談されたことがあり、すごい事実を知ったのですが、アマゾンのマーケットプレイスに出店されている事業者は、アマゾンの返品ルールや返品特約をきちんと確認しておいてください。理由はセミナーでは話をしているのですが別の機会があれば書きたいと思います。

特定商取引法 第十五条の三(通信販売における契約の解除等)の条文をそのまま引用しておきます

(通信販売における契約の解除等)
第十五条の三 通信販売をする場合の商品又は特定権利の販売条件について広告をした販売業者が当該商品若しくは当該特定権利の売買契約の申込みを受けた場合におけるその申込みをした者又は売買契約を締結した場合におけるその購入者(次項において単に「購入者」という。)は、その売買契約に係る商品の引渡し又は特定権利の移転を受けた日から起算して八日を経過するまでの間は、その売買契約の申込みの撤回又はその売買契約の解除(以下この条において「申込みの撤回等」という。)を行うことができる。ただし、当該販売業者が申込みの撤回等についての特約を当該広告に表示していた場合(当該売買契約が電子消費者契約及び電子承諾通知に関する民法の特例に関する法律(平成十三年法律第九十五号)第二条第一項に規定する電子消費者契約に該当する場合その他主務省令で定める場合にあつては、当該広告に表示し、かつ、広告に表示する方法以外の方法であつて主務省令で定める方法により表示していた場合)には、この限りでない。
2 申込みの撤回等があつた場合において、その売買契約に係る商品の引渡し又は特定権利の移転が既にされているときは、その引取り又は返還に要する費用は、購入者の負担とする。

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